2009年09月07日 (月) | Edit |
前回エントリをアップしてから気がついた記事ですが、

東京新聞「夫人も宇宙人 『太陽ちぎって食べた』鳩山幸さん」(2009年9月5日 夕刊)

 【ワシントン=岩田仲弘】米メディアで日本の民主党による政権交代が話題となる中、近く「ファーストレディー」となる鳩山由紀夫代表の妻・幸さんの「奇人ぶり」にも関心が集まっている。

 CNNテレビは四日、幸さんが出演したトーク番組を引用しつつ、幸さんの「超常現象発言」を特集。幸さんが、人気俳優トム・クルーズさんを主役に起用したハリウッド映画を製作する夢を語った後、その理由として「彼は前世は日本人で、私は会ったことがある」と述べたことを紹介。同じ番組で、夫とともに太陽をちぎって食べていることを身ぶりを交えて説明している様子も放映した。

 また、幸さんが昨年出版した「私が出あった世にも不思議な出来事」(共著)がすでに売り切れ続発で入手困難な状況を説明。「眠っている間、私の魂が三角形のUFOに乗り、金星に行った。とても美しく、緑でいっぱいだった」といった趣旨の内容が書かれていると報じた。

※ 以下強調は引用者による。


前回のエントリで最初に引用した部分がありますが、そこで略した部分を引用します。

 第一は、ある特定の妄想に囚われてしまい、だがその妄想を除けば他の能力は温存され、したがって認知症とか統合失調症とは考えにくいタイプである(男性に多い)。脳のCTやMRIを撮っても、ことさら萎縮や梗塞などの所見はない。
 ではどんな妄想に囚われているかというと、オリンピックの年に宇宙人が空飛ぶ円盤で攻めてくるとか、眠っている間に自分の「こめかみ」にICチップを埋め込まれて思考を読み取られているとか、近頃の少年による凶悪犯罪はすべてCIAによるマインドコントロールの結果であり敵国を自滅させるための実験をしているのだとか、そういった荒唐無稽な内容では「ない」。もっとうんざりするような下世話な話――妻(60歳過ぎである)が巧妙に浮気を繰り返しているとか、町内会の某は私利私欲のために俺の悪口を言いふらしているとか、自分が会社に勤めていたときに部長になれずじまいだったのは信頼していたつもりの「あいつ」の裏切りが原因だったことに突如思い当たったとか、そういった邪推や逆恨みに近い話なのである。

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(2008/02/15)
春日 武彦

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pp.44-45

 
・・・ああ、よかった。少なくとも日本のファーストレディが躁状態という事態は避けられそうです。

ただ、その後をさらに引用すると、

 ただし妻は夕食の買い物ついでに間男と「素早く」セックスをしたり暗号を使って密会の予定をやりとりしているとか、町内会ではグルになって盗聴器を仕掛けているとか、会社時代に俺を裏切った「あいつ」を自殺に追い込めるような秘密を握っているのでそれを自費出版の形で公にして破滅させてやるつもりだとか、いささか現実離れした話が混じっているために周囲は困惑せざるを得ない
 こうしたケースは精神疾患とは言い切れないし、抗幻覚妄想薬とか安定剤を服用させても改善は望めない。老化にともなう脳機能の脆弱化と、長年わだかまってきた不満、そして人生の黄昏における「取り返しのつかない気分」などが一体化したものであろうが、何だかひどく「大人げない」のである。アンチエイジングとか「若さこそが善」といった風潮が関係しているだけでなく、妙な具合に老人もまた幼稚化している印象を拭えない。

春日『同』pp.45-46


躁状態ではないとしても、あまり楽観できる状態ではないのかもしれませんね。

まあ、党首のご婦人に限らず、個人的に民主党に対して抱いている違和感というのが、躁状態のような場当たり感とか堪え性のなさだったりします。彼らの出自を見れば、自民党にいたのに既存派閥の跡目争いに敗れそうになって党を飛び出したり、既存政党の中で経験を積むより新しい政党で手っ取り早く自分の主張を実現させようとしたり、霞ヶ関のキャリア官僚でありながら既存の官僚組織を自らの手で変えることなく政界に進出して古巣を攻撃したり、世間との接点を一般の会社勤めのような地道な社会経験ではなく××政経塾とかNPOなどでの活動に求めたり、という方が多いように思います。それはおそらく、「既存」というエスタブリッシュなものに対する嫌悪感の発露なんでしょうけれども、世の中の大多数の人々は既存の組織の中で生活しているわけであって、そんな既存組織に生活する者の一員である俺としては、彼らこそが庶民目線とか市民感覚から最も遠い世界の住人のように思われてなりません。

もし、そうした「既存」のものへの嫌悪感があったとしても、多くの人間がそれに従って生きているという現実を直視しなければ現実的な政策が生まれてくるはずはありません。そうすることもなく、自らの嫌悪感に忠実に「既存」の世界を飛び出した彼らの心情は、多分に躁状態だったのではないかと思います。一時的な躁状態が世の中を変革する原動力となることは否定しませんが、中には恒常的な躁状態の方もいるように思われるわけで、そんな彼らはいつまでたっても「まずは政権交代」といって変革ばかりを追い求めていくのでしょう。

「既存」の世界に生きている方が多いのは、まさに幾多の歴史的経緯をくぐり抜けてきた制度が安定しているということの証左であって、「既存」であるということはそれだけ洗練されているということでもあります。その洗練された制度に欠陥が見つかったり時代の変化に合わない部分が出てきたというのであれば、その部分を中心にさらに洗練させることが先決です。場合によっては、その部分から制度全体に改革が波及することもあるでしょうが、それはあくまで順次進められるものであって、それが漸進的な改革の意味するところでもあるはずです。

自民党もたしかにまともなマニフェストも出せませんでしたし、選挙戦の終盤には労働組合に政権を取らせるなキャンペーン(注:リンク先はpdfファイルです)を張ったりとロクでもない政党ではありますが、少なくとも麻生総理には社会保障国民会議の最終報告で社会保障の充実と財源確保の筋道をとりまとめ、安心社会実現会議で雇用を中心とした社会参加型の国家像をとりまとめるだけの胆力がありました。そういった地道な改革を進めるだけの胆力のある政治家を養成してきたという点では、自民党の組織運営に対してもう少し正当な評価が与えられてもいいのではないかと思います。

この点は政権運営をしたことのない民主党にとってはまさに未知数ではありますが、上記のような党結成の経緯や所属の政治家の出自を鑑みるに、躁状態特有の浮ついた議論しかできそうにないわけで、それだけの胆力のある政治家を養成できるとは到底思えないんですよねえ。

そういえば、飯田泰之先生が出演していた今朝の日曜討論でも、上ずった声で「天下りをなくすことがポイントだ」とか「それで失職する公務員のことなんか考える必要はない!」として、「民主党に期待する」と息巻いていた経済評論家がいましたが、あの人の口調もうちの職場の躁の人に似てるなあ。
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コメント
この記事へのコメント
HALTANさんに言及いただきました。
http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20090908/p1

> 一般的にはまあどう生きようがそんなの個々人の勝手だと思うし(笑)、そんなところに延々と居るよりも辞めた(去った)方がマシな場所など世間には沢山ある

その点は否定しませんが、だからといって延々といなければならない方々の境遇が厳しいものであっていいということにはならないのではないかと。延々といるからこそ、その制度のどこに問題があってどこを見直すべきかが分かってくる面もあって、それがハーシュマンのいうVoice & Exitが機能する場面でもあると思います。


> 「でもそれだけ」の人たちの烏合の衆に政権を与えてしまったのが「政権交代」の真実

自民党が政治家を育てたというよりも、そういった「既存」の体制のしがらみの中で、もがきながらのし上がった経験を通じて政権運営の現実を学ぶ経路があったということなのでしょう。逆に言えば、その「既存」の体制の外側に自らの立ち位置を確保して「既得権益の打破」とか叫んでいた方々に、果たしてそれができるのかが問われることになるのだろうと思います。
2009/09/08(火) 08:31:06 | URL | マシナリ #-[ 編集]
HALTANさんに再び言及いただきました。
http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20090909/p1

こちらも少し意固地な書き方になってしまったように思います。申し訳ございません。

> 「政治家」を志すような人・実際に政治家になれた人というのは「高偏差値」「高学歴」の人が多い。

そうですね。そういった方々には声の大きい方も多いので影響力が増幅していき、それらが共鳴し合って「カイカク!」とい大合唱につながっていくように思います。その結果として、「既存」の組織で黙々と生活する層がサイレント・マジョリティとなっていくのではないかと。

>> その「既存」の体制の外側に自らの立ち位置を確保して「既得権益の打破」とか叫んでいた方々
>
> という箇所については自分は、政界の「中小零細」を渡り歩くのも大変でしたね~、と同情半分皮肉半分に捉えている面がありますね。

今回の政権交代が、大企業の非正規労働者や会社そのものが非正規労働者並の待遇しかできない中小零細の正規労働者という層に対して訴求するものであったろうとは思いますが、彼らを分断するのではなく共通の集団的労使紛争の土俵に乗せていくことが必要だというのが拙ブログの主張の一つです。したがって、彼らに同情はしますが、彼らの側も「既存」の組織というものと正面から向かい合っていかなければならないだろうと愚考する次第です。
2009/09/10(木) 08:31:38 | URL | マシナリ #-[ 編集]
レスが遅くなりましたが、再度HALTANさんに言及いただきました。
http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20090911/p1

まずは前回コメントの訂正ですが、「集団的労使紛争の土俵」にあげてはいけませんね。紛争に至らせないように「集団的労使関係の土俵」にあげなければならないという趣旨でした。

> そこで「大企業の非正規労働者や会社そのものが非正規労働者並の待遇しかできない中小零細の正規労働者という層」を「共通の集団的労使紛争の土俵に乗せていく」とした場合にも、今の政治家にそんな地道な努力を行う余裕と能力があるのか、甚だ疑問です。

いやまあ確かに、我ながら普段は現実を見ない理想論を批判しておきながら、この部分ではある種の理想論をぶっております。ただ、それは2025年までに温室効果ガス排出25%縮減などという実現可能性の乏しい理想論ではなく、世界の一部の国では現実の制度として機能している点で、「手の届く理想論」だと考えております。

そうはいっても所詮は理想論ですから、日本での実現可能性は未知数ではあります。それが「既存」の組織内のサイレント・マジョリティの行動を必要とするものであればなおさら難しいわけでして、悩みは尽きませんね・・・
2009/09/12(土) 17:14:16 | URL | マシナリ #-[ 編集]
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