2009年07月19日 (日) | Edit |
HALTANさんのメディア関連のエントリは深い洞察に支えられているので、その関連のエントリにはいつも勉強させていただいている立場なんですが、先日のエントリはチホーブンケンなどの流れと近い話ではないかなと思いました。

・・・肝心要は「シロウトくさい」という点だ→ここが大事! 古い監督は「人情ものをやるなら徹底しなきゃ」と同じベタでもプロの技術で大マジメにやったり(往年のマキノ雅弘や加藤泰を見よ)、あるいは周到に伏線を練って・・・など面倒くさいことをついつい考えてしまう。もし森崎東や山田洋次が三丁目映画を撮れば作品としての完成度は数段上がっただろうが、しかしヒットはしなかっただろう。今の日本で三丁目映画を観るような観客はTVCMで想像可能な範囲内のものしか観たくないのであって、それ以上のマジメな映画や練りに練った人情劇など別に観たいとは思っていないからだ
(略)
こんな国で「技術」を持ってしまった監督たちの不幸をいつも考えてしまうんだよ。2009-07-16■[映画人消息]荒井晴彦や柏原寛司(シナリオ作家協会会長)がいよいよ食い詰めるような時代になれば! ・・・日本の脚本家の地位も少しは上がるのかもしれない。id:HALTAN:20090716:p1 に書いたこととも重なるが、なまじ「巧い」よりも「下手な」方が興行的(視聴率的)・批評的に評価されるなら(!?)誰も真っ当な「努力」なんかしないですよね。
■「情報(メモ)]「神」の最新作キターー(゚∀゚)ーーッ!!CommentsAdd Star(2009-07-18)」(HALTANの日記
※ 強調は引用者による。


長々と引用させていただきましたが、長年行政の現場で仕事をしてきた官僚やチホーコームインを「無駄遣いの元凶」、「既得権益の固まり」と批判して一切信用せず、現場の実務を知らないお笑い芸人やタレント弁護士が威勢のいいことを叫ぶ姿が一般の方の受けがいいというのも、もしかすると同じような現象ととらえることができるのかもしれません。

反霞ヶ関とかおっしゃる方にはピンとこないかもしれませんが、法律や経済学を勉強して制度設計に当たる官僚と、それを実地で執行する現場の公務員が、それぞれの役割分担の中で専門性を駆使しながら支えている制度というものは確実に存在します。

もちろん、そういったハードな制度だけではなく、市場原理やボランティアなどの利他的行為によって支えられるソフトな制度もありますが、それらはあくまで需給関係や利他的行為に対する選好の度合いに依存するものであって、必然的にもろい制度となってしまいます。特に社会保障や再分配政策が市場や民間によっては担われないのは、そういった制度がもろいのでは、うまくいかなくなったときの損害が大き過ぎるからですね。

逆に言えば、社会保障などの再分配政策さえしっかりしていれば、資源配分に関係する部分は市場や民間が担った方が効率的になる部分は多いかもしれません。しかし、それもあくまで再分配政策が適切な規模で適切に運営されているという前提を要するものであって、その再分配政策と資源配分の境界線は、「民間にできることは民間に、地方にできることは地方に」という単純な線引きで仕分けできるはずがないんですよね。

本来は資源配分政策であった公共事業を例にとってみれば、都市部の税収や貯蓄を原資としてインフラの乏しい地方のインフラ整備に充てたことによって、結果として都市部から地方への再分配政策的に機能していたことなどはその典型です。結局のところ、どこからが再分配でどこからが資源配分と簡単に仕分けることができない以上、それらは中央集権的な政策と地方分権的な政策の組み合わせでしか運営することはできないわけです。

ところが現状は、「二重行政の排除」とか「地域主権」とか「ニアイズベター」とかよくわからないスローガンで、「地域が地域のことを決めれば無駄はなくなる」という究極の自己責任論がもてはやされています。しかし、その無駄ってのが誰にとっての無駄で誰にとっての既得権益なのかということを突き詰めていけば、それは千差万別だという結論にしかならないでしょう。そのような結論を正面から認めた上で、その千差万別に錯綜した利害関係を「地域の住民」というようなしがらみでがんじがらめになっている方々が適正に調整できるとは、個人的には到底思われないんですよね。

「素人にはしがらみがない」とか「地域にはしがらみがない」という言葉を虚心坦懐にみてみれば、俺なんかは「ありえなくね?」と思うわけですが、なぜかしがらみとか既得権益を批判する方々には素人や地域のしがらみが見えなくなっていくというのが不思議なところです。政治がドロドロした利害調整を放棄し、その利害調整の現場を卓越したリテラシーによって支えてきた官僚組織(特に再分配政策を担う霞ヶ関)を破壊したとき、その任を負うだけの胆力を持った素人や地域の方々がどれだけいるのか、大いに疑問ではあります。

まあ、そういった政治状況を生み出したのも、そういう政治家を選んだのも地域の方々なわけですから、チホーコームインなんぞが心配することはないのでしょう。もちろん、ドロドロの利害調整が手に負えない状況に陥っても、「役所が何とかしろ」とは決していわない覚悟があってのことでしょうからね(はぁと)。
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2009/07/20(月) 09:19:58 | すなふきんの雑感日記