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2009年07月14日 (火) | Edit |
こういう仕事をしていると、所定労働時間の1割くらいはクレーム対応でつぶされてしまうんですが、まあそれがコームインの仕事と割り切って丁寧に対応するほかはありません。ここで正論を吐いたところで、クレームされている方の心証をいたずらに硬化させるだけで、事態はさらに悪化してしまうからですね。

先日も広報誌に書いてある電話番号ががわかりにくいというお叱りのお電話をいただきましたが、その広報誌ってよその自治体が作成して発行しているんだよなと思いつつも、「住民が真っ先に見るのは広報誌なんだから、ほかの役所だからってそれを放っておくというのは住民のことを考えていないからだ!」と言われれば、「おっしゃるとおりですね」と答えないとその場が収まりません。

まあ、広報誌を全部回収して新しいレイアウトにして配り直せというのが民意だというならそれはそれで仰せのとおりにするまでですが、そのコストはいったい誰が負担するんでしょうね。ある住民がたまたま見た広報誌のレイアウトが見にくかったからという理由で、ほかの住民のために使わなければならない財源をそれに回すというのは、かなりの理由が必要になるはずです。

こんな愚痴をぐだぐだと書いたのは、毎度のhamachan先生経由で、

これは、どんなにセーフティネットを張り巡らせようが、それとは別の話です。ブラック会社自体がコストを払うメカニズムが必要です。これに対して、社会的セーフティネットは、ブラック会社とかホワイト会社とかといったミクロ社会的な問題ではなく、労働市場における需給のアンバランスをマクロ的に支えようという仕組みであって、そこを個別企業に押しつけすぎるとかえってマイナスになるという点は、最近指摘されているとおりです。しかし、そもそも中小零細になればなるほど解雇回避の余地など限りなく少なくなるわけで、整理解雇法理なるものがそれほど効果を発揮できるわけでもありません。
解雇規制とブラック会社の因果関係(2009年7月13日 (月) )」(EU労働法政策雑記帳


解雇規制で会社にセイフティネットを押しつけるなという主張をする方がいらっしゃったのを拝見して、解雇規制を撤廃したことによって生じるコストやそのセイフティネットを維持して運営していくコストは、いったい誰が負担すると想定しているんだろうなと不思議に思ったからです。

いやもちろん、セイフティネットの拡充は喫緊の課題ではありますが、しかしセイフティネットと呼ばれる制度を策定すればそれで万事オッケーということにはなりません。セイフティネットを実効性あるものにするための給付の財源はもちろんですが、その制度がモラルハザードを生じないようアクティベーションを促進しつつ運営するには、膨大なマンパワーが必要となります。具体的には、それらの負担割合を決めるのが政治であって、その負担による財源を調達し、かつ給付するマンパワーと権限を有するのが行政なわけです。

解雇規制とセイフティネットの話になぞらえていえば、会社の経営が思わしくなくなったときのリスク配分を決めるのが解雇規制であって、不幸にもそのリスクが実現した場合に、リスク負担に耐えきれなくなった方*1を救済するのがセイフティネットとなります。後者については、リスクの発生と負担は事前には一定に分布すると推測されることから、リスク中立な行政が雇用保険によって保険機能を提供しています。

問題は解雇規制の方で、労使の当事者にとって最適なリスク配分は、業種ごとの業界の事情や個別の企業の経営状態によって大きく異なります。このために、まずはリスク配分について企業内の労使が交渉することが必要になるわけですが、自主的な交渉に任せていては必ずしも最適なリスク配分が達成されるとは限りません。したがって、法によって最低限の解雇規制を規定することが必要になります。

解雇規制やセイフティネットだけを議論しても、このような「自主交渉-解雇規制-セイフティネット」という三層構造はとらえきれないだろうと思われます。特に、「自主交渉-解雇規制」という前の二段階が不十分だという認識がなければ、だからこそブラック会社が簡単に人を使い捨てできてしまうという帰結はなかなか理解できないのではないかと思います。

ここで冒頭の話に戻りますが、広報誌のレイアウトにクレームをつけてきた方はこの不景気が理由で長年勤めてきた会社をリストラされた方でした。その会社はブラック会社ではなかったかもしれませんが、この方が一見理不尽なクレームをつけてきたのもそういう切羽詰まった事情があったからで、憤懣やるかたない思いをどこかにぶつけずにはいられなかったのでしょう。もし、解雇規制と金銭解決がセットになってそれなりの金額を得ていたら、生活が幾分かは安定してスムーズに次の職探しに取りかかることができて、クレームの電話なんかする気も起きなかったかもしれません。

もっといえば、クレームをつけてきた方の本心はリストラした会社に対する恨み辛みだったのに、労働局のあっせんや労働審判で解決金を得ようとしてもかなりの時間と労力を要する上に、実入りも少ないので、手っ取り早く気の済む方法として、電話でのクレームで気を紛らわせたのかもしれません。その電話に対応するわれわれコームインの給料も税金でまかなわれているわけで、会社が解雇規制やセイフティネットの負担を拒否すれば、それだけこういった憤懣やるかたない思いをされる方が増えて役所の負担(クレーム対応だけではなく直接・間接の給付など)が大きくなり、その財源は結局のところ健全経営でそういった問題を起こさない会社や従業員が負担することになるわけです。

本当のブラック会社ってのはおそらくこういう構図をわかっていて、従業員を酷使して使い捨てしようと、その従業員は泣き寝入りするか役所のお世話になってしまうと踏んで、自分の懐は痛まないと高をくくっているような会社をいうのではないかと思います。しかし、そう思っていないホワイト会社(?)であっても中小零細企業では同じようなことが起きてしまいます。こっちはブラックだから金銭解決して、こっちはホワイトだから免除するというようなことが実行できるわけもなく、それよりも一律に解雇規制と金銭解決を適用する方が労使双方にとってメリットは大きいのではないかと思うんですが、こういう「中間をとる」的な発想は理解されにくいんでしょうかねえ。




*1 扶養されている主婦や学生であれば、職を失ったからといって必ずしもリスク負担ができないわけでないことに注意が必要です。
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