2009年05月28日 (木) | Edit |
厚労省の分割がにわかに本格化しているわけですが、

NIKKEI NET:政治: 厚労省分割問題、政府・与党で足並みに乱れ(2009/05/27付け)
 政府・与党内で26日、厚生労働省の分割問題を巡る足並みの乱れが浮き彫りになった。麻生太郎首相の構想への慎重論が強く、29日の経済財政諮問会議では基本方針案だけを決める方向で調整している。

 河村建夫官房長官は26日の6閣僚協議で、「社会保障省」と「国民生活省」に2分割する首相構想は示さなかった。厚労省所管の保育園と文部科学省所管の幼稚園を一体にした再編を警戒する塩谷立文科相は「一緒にやればいいという問題ではない」と力説。舛添要一厚労相は「拙速な議論はよくない」と同調した。参院予算委員会では「分割するなら2つではなく3つ」と述べた。

 自民、公明両党が同日それぞれ開いた会合でも「議論が唐突」「なぜ国土交通省などを放置して厚労省だけを分割するのか」との反論が出た。(07:00)

※ 強調は引用者による。


まあ、政治家の皆さんにはそれぞれ思惑はあるんでしょうけど、これも結局のところおなじみの「自前の組織をいじっておいてカイカクしたアリバイを作っておく」というカイカクオリエンテッドな姿勢についてのリスクヘッジ効果を狙っているわけです。

霞ヶ関だとピンとこないという方でも、身近な地方自治体でコロコロ組織の名前が変わったりくっついたり離れたりするのはよく目にしているのではないかと。特に、「カイカク派」を掲げて当選した首長なんかだと、まず間違いなく「役人を変えなければいけない」とか「お役所仕事の一掃」とか言ってガラガラと変えてしまいます。

俺自身も、異動が早めなのもあるけど同じ名刺が3年と使えた試しがありません。「不断的な見直し」とかなんだで組織が変わるので、住民の方に「すみませんがまた組織が変わって担当も変わったんですよ」と毎年名刺を配る羽目になるわけで、「コロコロ変わりすぎてわけわかんねーな」といわれるたびに何が住民サービスかよくわからなくなりますね。

厚労省の話に戻って、そもそもの話からすれば、社会保障と労働というのが表裏一体の関係にある以上、社会保障を担う厚生省と労働政策を担う労働省をくっつけるのはそれなりの理由があると思うんで、「大臣が忙しいから」という属人的なリソースの問題を組織の編成問題に帰着させる必要はないんではないかと。

それより、個人的に気になったのは、ちょくちょく取り上げさせていただいている麻生総理の主席首相補佐官である岡本全勝氏こそが、現在にいたる省庁再編を担当していたということ*1

明治時代に内閣制度ができて以来、初めての本格的省庁改革でした。また、単に数を減らすだけでなく、政治主導、政策評価、独立行政法人など、行政システムの改革でもありました。戦後いくつかの行政改革がありましたが、もっとも成功した例でしょう
本書では、今回の改革の概要と、またなぜ改革が成功したかを解説してあります
省庁改革の現場から」(岡本全勝のページ
※ 強調は引用者による。


ううむ、今度はなぜ失敗したかを解説していただかなければならないんでしょうか。

もちろん、今回の話が岡本氏の発案によるものかは分かりませんし、もしかしたら忸怩たる思いで今回の話を聞いているのかもしれませんが、以前はあんなに自信満々だった主張を改めなければならないというのは辛いことに変わりありません。自戒を込めて心中お察しします。

それにしても中谷巌先生とか、西尾勝先生とか、時流に乗って改革の先頭に立っていた方が、この不景気にあたってその主張が間違っていたと懺悔したり、その実効性に迷ったりしているお姿というのは、不景気の威力をまざまざと見せつけられる思いです。いやまあ、いろいろ書いてはみましたが、労務屋さんのこの言葉がすべてを語っているわけですけどね。

いや別に「毛嫌い」しているわけではないんですけどね。繰り返し申し上げているように『大失業』の印象が悪すぎるというか、山田氏は1999年の『大失業-雇用崩壊の衝撃』の米国型から、2007年の『ワーク・フェア-雇用劣化・階層社会からの脱却』の欧州型へと華麗なる「大転換」を遂げられましたが、これについてなんのご説明もないなあ、と思っているわけです。ということは、また情勢が変わって、世間の関心や論調が変われば、またしても米国型に大転換されるのではないか、と思わざるを得ないわけで、一言で言えば信用できないわけですね
2009-05-27 hamachan先生」(吐息の日々~労働日誌~
※ 強調は引用者による。






*1 ついでに、江田けんじもかんでますね。
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コメント
この記事へのコメント
 今回の厚生労働省の分割は、年金特別会計を本格的に見直すためでは無いでしょうか? この時点でさすがに財務省でも労働保険特別会計にまでは、手を付けれないでしょうし国土交通省も大不況でムリでしょうからね。財布を一つにすることで地方の一部への予算集中を抑制してきたのに認めるわけがない。
 3年後の○○とも連動する話ではないでしょうか。
 定額給付金の実施で、ベーシックインカム的な現場実験や自治体財源による減税実験の総括も含め10月以降の回復基調しだい。
 ただ8~9月頃の情勢で、地獄の炎に焼かれるのかな。
2009/05/28(木) 07:39:15 | URL | gruza03 #DgdRcaA.[ 編集]
> gruza03さん
レスが遅くなりまして申し訳ありません。

>  今回の厚生労働省の分割は、年金特別会計を本格的に見直すためでは無いでしょうか?

正直なところ、その辺の思惑はよく分かりませんね。いわゆる埋蔵金については、この不況下でリスクが増大すれば吹き飛んでしまうということが明らかになったわけですから、この時期にそれを言い出すメリットはあまりないのではないかと。

>  3年後の○○とも連動する話ではないでしょうか。
> 定額給付金の実施で、ベーシックインカム的な現場実験や自治体財源による減税実験の総括も含め10月以降の回復基調しだい。

3年後というのは消費税率アップのことでしょうか? 定額給付金については規模が小さすぎると思いますので、それがベーシック・インカム的な機能を果たしたり、直接的な景気の回復につながるかはちょっと難しいような気がします。あくまで印象論に過ぎませんが。

まあ、いずれにしても厚労省分割案はなかったことになったみたいですので、当面は様子見ですね。
2009/05/31(日) 00:22:13 | URL | マシナリ #-[ 編集]
すなふきんさんからトラバいただきました。レスが遅れて申し訳ありません。
http://d.hatena.ne.jp/sunafukin99/20090529/1243547592

> そのことが意味があるかどうかよりもまずは世論対策最優先で、「後で叩かれないように予防線を張っておく」というやり方が横行しているようにも思う。つまり責任をかぶるのが嫌なだけなんだろう。

実をいえば、「責任を被るのが嫌」というのは役所的には最も重要な行動原理の一つでもあって、そこにカイカク派がつけ込む隙があるんですね。「カイカクしなければまた叩かれる」とか「ここで何でもいいからアリバイを作っておけば万全だ」ということをきちんと察知できる能力が、「優秀な」コームインの必要十分条件であることは厳然たる事実です。

この点においては、いわゆる「無能な働き者」たる政治家首長や議員さんと「無能な働き者」たるコームインの思惑が一致するわけで、特にその傾向の強い地方から「改革バカ」に汚染されていくということかと。

その意味で、今回厚労省分割案が頓挫したというのは、「有能な働き者」たる霞ヶ関官僚の皆さんの踏ん張りのおかげだった・・・、というのは穿ちすぎかもしれませんが、これが大統領制である地方自治体の話だったなら、首長の鶴の一声で一気にカイカクされてしまっていたでしょうね。

> いったいいつになったらカイカクは成就するんだろう。で、そのカイカクとやらが成就した暁にはどんな理想社会が実現しているのか。そのへんがさっぱりわからないのだ。

うちのところでは最近、何かにつけて「あなたの仕事の『夢』を住民に語りなさい」てなことを強要されてるんですけど、周りのコームインの方々が語る「夢」を聞いていると、カイカクと理想社会がセットになった「夢」ほど怖いものはないなあと思うことしきりです。
2009/05/31(日) 00:44:19 | URL | マシナリ #-[ 編集]
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2009/05/29(金) 12:31:46 | すなふきんの雑感日記