2009年05月17日 (日) | Edit |
すなふきさん経由韓リフ先生のところのネタですが、

通りすがり 2009/05/16 03:44
横から失礼させていただきますが、このブログの意見が、参考になる気がしたので、リンク先を貼らせていただきます。
http://plaza.rakuten.co.jp/kingofartscentre/diary/200904010000/
http://plaza.rakuten.co.jp/kingofartscentre/diary/200904010001/


money-school 2009/05/16 18:18
田中先生の庭先で失礼します。通りすがりさん、ありがとうございます。参考になりました。少なくとも志の高い先生方が、あえて距離をおいているわけではないということが確認できてよかったです。ただ、「人事権」の問題だけではなく、「情報管理」の問題まで言及できないところを考えると、「改革」の道のりは通そうですね。このブログでも指摘されていた「年金改正」の流れも、改正の前提となる「情報」は厚生労働省の「官僚」しか持っていないわけですから、方向が示されると、「御用」でなくても従わざるをえないみたいなところもあるのでしょうね。当時、改正法案通してから、出生率発表みたいな荒業でしたから。


ここで参考にされているのがかみぽこ氏の一連のエントリなわけですが、イギリスで政策過程を研究されたかみぽこさんには「英国型議会制民主主義」はなじみがあるとしても、それとの対比として「日本型議会制民主主義」がおっしゃるような「官僚支配」であるかどうかの論証が、まずもって必要だろうと思います。

この点については、大田弘子先生が
経済財政諮問会議の戦い経済財政諮問会議の戦い
(2006/05)
大田 弘子

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で書いていることをベースとして、かみぽこ氏は次のように指摘します。

つまり、抜本的改革が
実現しなかったのは、
それを望まない厚労省
たたき台に載せなかったので、
諮問会議で議論のしようが
なかったからである。
(略)
このように小泉構造改革では、
「道路公団改革」などでも
そうなのだが、
官僚が都合の悪い改革案を
官邸に上げない
ために、
改革を進めようとしても
議論すらできなかったことが
多かったのだ。
官僚支配をなくすには(前編):「官邸主導」と「政治任用制」 (2009年04月01日)」(かみぽこちゃんの日記
※ 強調は引用者による。


官僚が作ったんだから官僚の思うがままだったと断じていらっしゃるようですが、ちょっと乱暴な議論のように思いますね。特に、「それを望まない厚労省」とか「官僚が都合の悪い改革案」っていうのは具体的に官僚にとってどう都合が悪いから望まないのかがよく分かりません。

例えば、マスコミや論壇で持ち出されるリクツですが、抜本的改革をすると厚労省の仕事がなくなって失業してしまうから? とはいっても、厚労省は残業時間が霞が関で最も多い(bewaadさんのエントリ参照)ので、仕事が減って喜ぶ官僚はいるでしょうが、少なくとも当面は仕事が減って困ることはないんではないかと。

あるいは、2004年に導入された物価スライド方式では天下り先が温存されてしまうから? これはまあテキトーに見繕ったリクツなので、あからさまにこういうワケのわからないことは言わないと思いますが、何かと言えば「天下り」に結びつけて官僚を叩いておこうというのも芸のない話ではあります。

私は、政策立案過程の
「官僚支配」を排するには、
政治家がこの議題設定の権限を
審議会のところで
抑えることが重要だと思う。
(略)
しかし、現実的には
政治家は官僚バッシングを
いろいろやっているけど
なぜかここには
全く手をつけようとしない

同上
※ 強調は引用者による。


ご本人も「なぜかここには全く手をつけようとしない」とおっしゃるその点こそが「官僚支配」なるものが実態のあるものかどうかを分ける問題であって、それを措いといていくら「官僚支配」なるものを批判されても説得力があるようには思いませんね。

課題設定の権限を持っているといっても、そりゃもちろん形式上は審議会なりを設置して報告書をとりまとめるのは官僚ですが、その審議会を作らせたり議論させようとする圧力は普通は政治家からかけられるものですよ。さらにいえば、かみぽこ氏が批判される「官邸主導」によって、安倍内閣時には「教育再生会議」だの「地方分権改革推進委員会」だのが林立したわけで、形式だけに注目して「官僚支配だ」といっても実態を捉えていないのではないかと。

もともと、政治家や圧力団体が自ら表立って圧力をかける文化が日本にはありませんので、必然的にそのような動きは政府の公式な活動を通じてしか現れません。ということは、目に見える圧力を批判しようとすれば、必然的に政府の公式な活動を批判するしかなくなってしまいます。当事者である官僚も政治家もその点は熟知しているわけで、むしろ、そのようなシステムを利用して政治家が自らの潔白や正義を強調するために、官僚はその批判を甘んじて受けざるを得なかったというのが実態でしょう*1

そして、なぜそような一方的な政治家の優位性が実現するかというと、まさに「政治主導」だからです。「官僚支配」とかいって批判している方は恐らく、戦中戦後の混乱期に軍部に支配されたり、財閥解体やレッドパージなどによって政治家の人材不足が深刻だった時期が念頭にあるのではないかと思いますが、そのような時期であればある程度通用した概念だからといって、現在もそのままあてはまるわけではないと思います。この点は牧原先生のサントリー学芸賞受賞作が参考になるかと。
内閣政治と「大蔵省支配」―政治主導の条件 (中公叢書)内閣政治と「大蔵省支配」―政治主導の条件 (中公叢書)
(2003/07)
牧原 出

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というより、政治学ってのはそういう権力関係を研究するものだと思っておりましたが、その点を「なぜかそうじゃないんだよねえ」といってスルーするということは、この点を政治学の研究に求めるのはお門違いということになるんでしょうか。う~ん、それでは政治学の存在意義ってなんなの?という新たな疑問も生まれてくるところですが、まあ実益のある議論になりそうもないのでこちらもスルーします。

それはそうとして、かみぽこ氏の事実誤認かよく分かりませんが、

具体的には、官僚の設定する「議題」に
「お墨付き」を与える役割を果たしている

「御用学者」

を審議会から一掃することだ。

そして、政治学・経済学などの
最先端の研究に携わる、
海外の大学での
PhD(博士号)取得者などを
審議会に送り込む
ことである。
同上
※ 強調は引用者による。

とかいいながら、

民主党は、既に昨年の
日銀正副総裁人事において、
小泉改革にかかわった
「御用学者」の
副総裁への起用案に
不同意している

同上
※ 強調は引用者による。

だそうですが、民主党が不同意した伊藤隆敏先生はハーバード大でPh.Dを取得されていますよ(Wikipedia:伊藤隆敏)。それとも、一回でも政府の審議会などに参加してしまったら「御用学者」と呼ばれるというのであれば、定義により審議会には「御用学者」しかいなくなってしまいますけどね(5/18追記:ついでに、伊藤先生は小泉内閣での諮問会議議員ではなく安倍内閣になってから任命されたので、「小泉改革にかかわった」というのも厳密には間違いですね)。

まあかみぽこ氏ご自身がPh.Dを取得されているからこそのご発言であるように思いますが、そのような「圧力」は「政治主導」の下では肯定されるのでしょうかねえ。




*1 だいぶ前に似たようなことを書きましたが、今読むと論理構成が妙に浮ついていて読むに耐えません。
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コメント
この記事へのコメント
はてブでkumakuma1967さんからコメントいただいていました。

> 当時すでに破綻が見えていた「小泉厚生大臣の年金抜本改革」を、「小泉首相」がどう扱うかは相当注目されていて、議題整理の時点で「しょせん臭いものには(政治主導で)蓋なのね」と言われていたと思うが?

実は、「当時すでに破綻が見えていた「小泉厚生大臣の年金抜本改革」を、「小泉首相」がどう扱うかは相当注目されて」いた状況をあまり覚えていないので、政治主導で蓋と言われていたかどうかもよく分からないというのが正直なところです。

以下はkumakuma1967さんのコメントと関係するか分かりませんが、かみぽこ氏が引用する大田先生の著書で、「抜本的改革が実現しなかったのは、それを望まない厚労省がたたき台に載せなかったので、諮問会議で議論のしようがなかったから」というのは、具体的にはこういうことです。

> さて、今回の年金改革を振り返ると、保険料固定方式やマクロ経済スライドという新しい枠組みが導入されたことは評価できるものの、そもそも二〇〇二年一二月に厚生労働省から改革のたたき台が出された時点で、制度の抜本改革が却下されている点を忘れてはならない。

>すなわち、(1)基礎年金を税方式とする体系、(2)定額の公的年金とその上乗せの私的年金の組み合わせ、(3)所得比例年金と補足的給付の組合せ(スウェーデン型)、の三つの選択肢については、議論がまだ不十分として却下し、「社会保険方式に基づく現行の制度体系を基本として改革を進めていく」と決めつけている
大田弘子『経済財政諮問会議の戦い』p.149

拙ブログでも、細野真宏氏の『未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った? ~世界一わかりやすい経済の本~ (扶桑社新書)』を取り上げておりますが、大田先生が挙げている(1)から(3)はそもそも年金制度の改革にはつながらないわけで、「議論がまだ不十分として却下し」た厚労相の判断はまっとうなものですね。
http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-296.html

ご自身の考えに合わないからといって、「抜本的改革が実現しなかったのは、それを望まない厚労省がたたき台に載せなかったので、諮問会議で議論のしようがなかったから」というのは、やはりちょっと筋違いではないかと思います。

というより、「それを望まない厚労省」という言い方をするとあたかも、「(厚労省の役人が自分の利権のために)それを望まない厚労省」というニュアンスが含まれてしまいそうが、実は「(年金システムを維持するために)それを望ま(しいとは考え)ない厚労省」という趣旨に理解すべきという可能性については、それを望まない経済財政諮問会議はたたき台に乗せてくれないんでしょうか。
2009/05/24(日) 00:59:56 | URL | マシナリ #-[ 編集]
ペースト忘れしてしまいましたが、kumakuma1967さんのはてブコメントはこちらです。

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-301.html
2009/05/24(日) 01:02:56 | URL | マシナリ #-[ 編集]
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2009/05/24(日) 05:27:07 | くまくまことkumakuma1967の出来損ない日記