2009年02月19日 (木) | Edit |
先月のエントリの最後に書いた「こんなことをクドクド書いたのも、うちでもワケのわからない「雇用対策」をやってるのをみて脱力したからですが、マスコミを含む一般受けはいいようで、ますます「失業対策」が遠のいたように思われるのが気のせいならいいんですけど・・・」というのが、例えばこういうことだったりします。

「企業支援:17自治体「地元」購入 自動車、TVやOA機器」(毎日新聞 2009年2月16日 東京朝刊)

 世界的な不況の波を受け企業城下町の自治体を中心に、地元に事業所や工場がある企業の製品を購入したり、住民に購入を勧める動きが広がっている。毎日新聞が全国調査したところ、15日現在で少なくとも17自治体に上った。工場閉鎖や人員削減が、地域に波及するのを懸念して支援を決めた自治体が多く、自動車や家電の工場などがある自治体では積極購入キャンペーンを行うところも。一方で、こうした動きには「税金の無駄遣い」との批判的な声も出ている。【まとめ・井出晋平】

 マツダのおひざ元、広島では県が約2億7000万円、広島市が1億3296万円、呉市約3000万円でマツダ車を購入する。

 岩手県では、県立施設などで東芝製テレビを買うほか、達増拓也知事もポケットマネーで購入。東芝は不況のため県内で半導体工場の着工延期を発表しており、早期着工を促す狙いもあるようだ。

 購入を推奨する動きも広がる。日産自動車九州工場、トヨタ自動車九州の苅田(かんだ)・小倉工場が立地する福岡県苅田町は、吉広啓子町長が町職員に両社の車の購入を呼びかけ7人が購入した。

 しかし自治体の支援に、批判的な声も。パナソニックに買収される三洋電機の子会社を抱える鳥取市。買収で子会社の整理も懸念されており、電動自転車などの製品購入は「地元の熱い思いを伝える一つのメッセージ」(竹内功市長)。だが、平井伸治・鳥取県知事は「400万、500万円を使って買ったからといって、事業継続に直結しない」と市を批判。市民からも「特定の企業だけを支援するのはどうか」といった批判が寄せられているという。


バイ・アメリカン条項は「保護主義だ」と批判する一方で、こんな「地域保護主義」が堂々とまかり通る地方自治ってのは相変わらずワケがわかりません。というより「地産地消」とか「食糧自給率向上」だって立派な保護主義なんですけど。

ところが、さらにワケがわからなくなるのが上記記事と同じ新聞社の地方版でのこんな記事。

ショートメール:バイ・アメリカン /静岡」(毎日新聞 2009年2月18日 地方版)

 不況が深刻化して、改めて日本がこれほど米国頼みだったかと思い知らされた。米国の住宅ローンの焦げ付きが、世界を巡り巡ってトヨタとソニーをつまずかせ、「派遣切り」につながった。

 なら、回復のためには元を断つしかない。米国民にカネを渡し、彼らが住宅や自動車を再び買い始めれば、ビッグ3もトヨタも立ち直る。世界的に「バイ・アメリカン」運動をしても効果はあるだろう。
(略)
 公共工事は後世に残るインフラ整備ができるのならいいが、緊急のカネつなぎ目的なら効果は一瞬。定額給付金は納めた税金を「私たちの能力ではうまく使えません」と政治家が返してくれるわけで、もらっても「大丈夫?」と心配になる。

 しかもそれを審議する国会は、郵政民営化に反対だったとかいう首相とろれつの回らぬ元大臣、「かんぽの宿」で立ち往生気味。やっぱりバイ・アメリカンの方がすんなりいくんじゃないの、と思うのは私だけ?【小林理】


こういうことを脳天気に公共のメディアに書いてしまう署名子は、そういった無責任なまでに悲観的で自虐的な観測が、回り回って消費者のデフレ期待や消費性向の減退を招いてしまうことを全く自覚できていないようです。それがご自分の首をしめることすらも自覚していないのでしょう。

こういうのって、報道による個人への名誉毀損や人権侵害よりもマクロな影響力があるだけにさらに悪質だと思うんですが、これを取り締まる法律もなければ、保護されるべき権益すら立証できないというのが歯がゆいところですね。
スポンサーサイト


コメント
この記事へのコメント
 地域保護主義を強化するとは、やっぱり「江戸時代」への回帰でしょうか?
 幕藩体制下の例として、徳島藩(約25万石)の「藍」が支えたに習うなら、「倹約と殖産振興と地域保護主義こそ、経済活性化の王道なり!!」と田中優子氏なら喜々として講義して頂けるでしょう。ありがたいことです。orz

>岩手県では、県立施設などで東芝製テレビを買うほか、達増拓也知事もポケットマネーで購入。東芝は不況のため県内で半導体工場の着工延期を発表しており、早期着工を促す狙いもあるようだ。
 地元が出たので、下記に参考を。他県でも似たような事はやっています。

http://www.pref.iwate.jp/view.rbz?of=1&ik=0&pnp=14&cd=2857
(農林水産部・県土整備部所管)岩手県営建設工事請負契約書附属条件の統一について2007年11月08日

(3) 第4条関係
 建設資材調書は、県営建設工事の品質確保を図るとともに、県産品及び県内企業不採用の理由を確認し、課題改善に向けた県内企業の経営努力を促すことにより、県産品及び県内企業の活用の促進を図るためのものであり、主たる建設資材すべてを記入すること。
 なお、県産木材を調達する場合は、この調書(竣工時)に県産材認証管理表を添付すること。
 また、建設資材納入契約の相手方が岩手県内に主たる営業所を有する者または岩手県産材の建設資材以外の場合については、その理由を記載させ内容を確認するものであり、是正を求めるものではないこと。
※県産材とは
 県産材とは、県内で伐採された原木を、原則として県内で加工した丸太、製材品、集成材及び合板等とした。

注)あくまで原則で、他の都道府県の原木等や輸入外材については、県内における製材業者が加工したものも県産材として取り扱うわけです。

>バイ・アメリカン条項は「保護主義だ」と批判する一方で、こんな「地域保護主義」が堂々とまかり通る地方自治ってのは相変わらずワケがわかりません。というより「地産地消」とか「食糧自給率向上」だって立派な保護主義なんですけど。

 バイ・アメリンカン条項にしても、「完成品」は規制するが、部品等を持ち込み米国内で「完成品」を生産すれば良いということでしょう。
 EUのRoHS指令とISOは、立派に保護主義でしょう。EUの排他の論理や排除の正当化の仕方は、「ルール」とは何かをいつも考えさせられます。単純な北欧礼讃の怖さとは、「排除のルール」の受け入れがどの様に日本国内において変質されるのか見極めきれないことなのだと思うのです。
2009/02/21(土) 13:54:10 | URL | gruza03 #DgdRcaA.[ 編集]
> gruza03さん

私は知らなかったんですが、徳島藩が藍の生産で全国の市場を独占していた(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%B3%E5%B3%B6%E8%97%A9)そうで、このこと自体が江戸時代には立派な市場経済が成立していたことの証でもあるわけですが、戦中戦後の左派思想によって市場経済に対する警戒感というのが日本人に刷り込まれてしまっているのかもしれませんね。

>  EUのRoHS指令とISOは、立派に保護主義でしょう。EUの排他の論理や排除の正当化の仕方は、「ルール」とは何かをいつも考えさせられます。単純な北欧礼讃の怖さとは、「排除のルール」の受け入れがどの様に日本国内において変質されるのか見極めきれないことなのだと思うのです。

岩手県のようなあからさまなレントの割り当てですら、「地元で作ったものだから」という理由で正当化されてしまうのも、「ものづくり」幻想がその裏にあるように思います。どこの材料を使っても地元で加工しさえすればレントが保証されるというのであれば、原材料の生産よりも加工のプレミアムを高めることになるわけですから、産業構造に無用なゆがみを生じさせる可能性も考えられます。それが「排除のルール」であるなら、市場全体の効率性が大きく損なわれるリスクは十分に考慮すべきでしょう。

ただし、「地域活性化」に燃えるチホーコームインがそういうマイナス面を考慮するとは到底思えません。始めに引用した記事にあるとおり、「地元の熱い思いを伝える一つのメッセージ」(竹内功市長)のほうが政治的には意味があるんでしょうね。誰に対するメッセージなのか理解できませんけど。
2009/02/22(日) 23:06:26 | URL | マシナリ #-[ 編集]
HALTANさんに言及いただきました。
http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20090221/p1

> ただ「振興」「活性化」といっても打つ手がないのが現実である以上、苦し紛れに色んなことを自治体が行わざるを得ない面もあるわけでして、むしろ地方「自治」の限界を示すエピソードだと自分は読みました。

おっしゃるとおり、「雇用情勢が厳しいのに地元の自治体は何もしてくれない」とかの「民意」という名の突き上げに対しては、選挙が死活問題となる首長や議員は特に敏感に反応しますから、「地方ががんばれば解決できる!」という主張を繰り返すことになりますね。

国でなければ失業を減らすための経済政策はできないのに、地方が「なんとかします」といわざるを得ない状況に追い込まれてしまって、結果的に国が景気対策をしない猶予を与えてしまうという「善良なサマリア人のジレンマ」の状態なわけですから、この点ではチホーブンケンが景気対策を遅らせているともいえるのではないかと(当エントリの冒頭で引用したエントリhttp://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-269.htmlの繰り返しになってしまいましたが)。

実はだいぶ前にその辺のことは指摘しておりましたが(http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-41.html)、2年以上経っても大事なことは予想どおり置いてきぼりですね。
2009/02/22(日) 23:54:37 | URL | マシナリ #-[ 編集]
いつもご丁寧にありがとうございます。
2009/02/23(月) 12:53:04 | URL | gruza03 #DgdRcaA.[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック