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2008年12月18日 (木) | Edit |
HALTANさんのところでも取り上げられていたこれなんですが、
文藝春秋 2009年 01月号 [雑誌]文藝春秋 2009年 01月号 [雑誌]
(2008/12/10)
不明

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権丈先生が文藝春秋の宮崎哲弥編による特集に寄稿されて、

今回この仕事を引き受けたのは、彼が編者だったのは大きい。他のほとんどのテーマでも論じることができますので、機会があればどうぞ。なかには今回の担当者の論と真逆の「日本興国論」――今の論者から見れば「日本亡国論?」――になるのがあるでしょうけど。。。
仕事のページ(12月11日)」(Kenjoh Seminar  Home Page
※強調は引用者による。


とおっしゃるのでおそるおそる見てみました。
うーむ、「日本興国論」はむしろ一部で「日本亡国論」がほとんどという印象。というか、権丈先生が本田宏氏と並ぶことにも違和感ありまくりだし、竹中平蔵氏とか湯浅誠氏というラインナップは、宮崎哲弥氏よりも編集部の意向ではないかと勘ぐってしまいます。老婆心ながら、今回のメンツに並ぶと権丈先生の主張はかえって変な誤解を生むような気もしないではありません。

ざっとレビューしてしまいますが、冒頭の原田泰氏は、HALTANさんのところでもたびたび取り上げられている「地方の官民賃金格差」論をここでもご披露されています。

本気で財政赤字を減らすのであれば、景気を拡大させ、政府支出を削減するしかない。そのときに大事なのは、単に支出をカットすることではなく、税金のより有効な使い道は何か、と考えることだ。
(中略)
官民の賃金格差に関しては興味深いデータがある。民間に比べ公務員の賃金が高い都道府県ほど、都道府県民の平均所得が低い傾向がある。県民所得が最も低い沖縄では六〇%以上、ワースト三位の青森では七〇%近くも公務員の給料が高いのに対し、平均所得上位の大阪では二〇%弱、愛知はおよそ二五%。最も平均所得の高い東京では官民にほとんど差がない。
こうした現象は、これまで「所得の低い県には働き先が乏しく、公務員くらいしか仕事がない」と説明されてきたが、本当だろうか。私はむしろ逆だと考える。公務員の給料が高すぎるから、他のビジネスに人材が集まらず、経済発展が進まないのではないだろうか。
原田泰(大和総研チーフエコノミスト)「消費税アップは15年後でよい」(文藝春秋 2009年 01月号)


まあ上のリンク先と同じことの繰り返しですが、原田泰氏は経企庁に入庁して官庁エコノミストとしてご活躍後、現在は民間のエコノミストへ華麗に転身されているわけで、「公務員の給料が高すぎるから、他のビジネスに人材が集まらず」とおっしゃるなら、その官民給与格差のない東京のご出身でありながら、なぜ初めから民間に就職されなかったのか不思議なところですね。

二番手が権丈先生で、そのすぐ後の本田宏氏はいつものとおり

その一方で、道路建設を含めた公共事業には特別会計から五〇兆円もの巨費を投じている。不急の「道路」と緊急の「命」、どちらが大事かは言うまでもない。公共事業のムダを即刻見直して、その財源を医療費に回すのが、正しい国のあり方だろう。
本田宏(済生会栗橋病院副院長)「給付金より2兆円で医療再建を」(同上)

という「公共事業=ムダ=悪」論でご自身の主張する所得再分配を自己否定しています。
その次の小宮一義氏は、

無闇な投資に向かわせるうえ損をもたらしかねない低金利政策ではなく、貯蓄へのモチベーションを上げる政策が待たれる。
(中略)
アメリカ発の金融危機はカネがカネを生むシステムの崩壊を世界に晒したが、日本はこれを奇貨とすべきだ。コツコツ働きコツコツ貯める、この現実的かつ理に適った日本人の経済感覚こそ見直されるべきだ。「まず貯蓄ありき」。そして「守るお金」を確保した上で、自分で見極めを持って投資する。これが、激動の時代において、よりよい老後を送るための確実な方法だし、日本経済の安定的な発展につながる。
小宮一義(小宮コンサルタンツ代表)「「投資より貯蓄」が老後を救う」(同上)

という「持てる者の論理」全開で、資産を持っている世代にカネを使うなと指南する始末。「文藝春秋」の読者のような世代からすれば、自分が退職までしのげれば失業者がいくら増えたって関係ないとはいえ、あからさまですなあ。

「霞ヶ関がメシの種」でおなじみの竹中氏はといえば、霞ヶ関・官僚叩きをしないと気が済まないので、

官僚の権限拡大は何としても防がねばならない。では、なぜ官僚制度が悪いのか。その根本的な原因は、官僚の身体に染み込んだ「利害性」と「無謬性」という点にある。
(中略)
企業にとって利益最大化が目的であるならば、官僚にとっては影響力最大化が目的である。規制緩和に反対するのは、まさに官僚の本能なのだ。
竹中平蔵(慶應義塾大学教授)「霞ヶ関の権益を排せば成長する」(同上)

だそうで、何のヒネリもなくて飽きてきました。
お次は経営学者の伊丹氏ですが、

その一例が労働分配率である。労働分配率とは、人件費を企業の生む付加価値で割ったもので、この数値が高いほど人件費の負担が大きいことを示している。日本の株価が史上最高値をつけた八九年、労働分配率は六七.六%だった。ところが、それがバブル崩壊後も上昇し続け、九九年には七五.五%に達して、経営を大きく圧迫した。現在、労働分配率の低下が雇用条件の悪化として問題視されているが、〇六年は六九.三%、〇七年には六九.四%。これはバブル期の水準より高い。バブル以降が高すぎたのだ。
伊丹敬之(東京理科大学教授)「「ヒト重視」日本型経営が勝つ」(同上)

って、労働経済学の教科書を開いてみていただければ、不況期に付加価値が圧縮される場合は賃金の下方硬直性によって労働分配率が高くなって、好況期には逆になるというのは実証された理論なんですが、経営学ではそれとはまた違う理論があるのでしょうか。少なくとも経済学による実証分析によれば、不況まっただ中の1999年に労働分配率が高くなって、その後2007年までの景気の拡大期に労働分配率が低下したことに何も不思議なことはありませんので、それに対する批判は因果関係を取り違えているんではないかと。

なんてことばっかり書いてあるのでそろそろこの特集にうんざりしてきたところで、バーナンキ現FRB議長をして「中原氏以外はジャンク」と言わしめた中原伸之氏がトリ前で登場。

「利下げは負け、利上げは勝ち」という部外者には理解しがたい価値観に、日銀は支配されている。したがって、バブル崩壊時も今回の危機でも、利上げは常に「トゥー・リトル、トゥー・レイト(too little, too late)」。一方で利上げは敏速だ。
(中略)
日銀内の金融引き締め派は「タカ派」と言われている。経済の悪化に対してタカをくくる人たちだ。私が審議委員を務めていた時は、日銀生え抜きの副総裁だった山口泰氏が、その筆頭だった。白川方明現総裁は、その山口氏の懐刀だったから、本質はタカ派中のタカ派であろう。
(中略)
白川総裁には、〇.二%の利下げ、当座預金〇.一%の付利といった小手先の手段ではなく、ただちにゼロ金利、量的緩和の復活、さらには大幅な国債の買い増しなど、出来ることはすべてやる覚悟が求められる。
中原伸之(元日本銀行審議委員 元東亜燃料工業社長)「白川総裁よ、金利をゼロにせよ」(同上)


さすがですねえ。
が、上記の小宮氏のような「とにかく貯めてまくってカネを守れ」とかの指南を真に受けているだろうおっさん方にこの言葉が届くとは到底思えない・・・

というわけで、最後は大佛次郎論壇賞を受賞された湯浅誠氏が大トリ。レビューもここでやめてもいいんだけど・・・と思ってみたら、

ところがあらゆる社会保障が削られてきた結果、日本はこうした費用を個人の収入に大きく依存する超コスト高社会になってしまった。賃下げ圧力によって賃金上昇が抑えつけられてしまうと、正規雇用で働くホワイトカラーはこうした支出の増加に対応できない。将来への不安が増大するなかで余ったお金は貯蓄に回され、内需の拡大、景気回復など到底無理だろう。
となると、なすべき対策は明らかである。社会保障の拡充こそ、最大の景気対策なのだ。
湯浅誠(自立生活サポートセンターもやい事務局長)「最大の景気対策は貧困退治だ」(同上)

うおぉ!「景気対策」とかすごくまともなことおっしゃってますけど。
湯浅氏ご自身がやっていることの評価はよくわかりませんが、こういうことをおっしゃるなら、明日の日銀政策決定会合でゼロ金利とか国債の買いオペとかが採択されるべきだというような主張もしていただくと、マスコミの注目も集まって大変助かりますね。
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