2008年10月26日 (日) | Edit |
拙ブログ始まって以来の更新ラッシュにわいた先週でしたが、そのメイントピックスだった「不正経理」騒動について、民間の側の方からの貴重なご意見を発見したので引用しておきます。

(これまでの関連エントリ)
無理を通せば(2008/10/22(水))
フライペーパーもあるよ(2008/10/21(火))
ファンジビリティ(2008/10/21(火))
「不正」な制度(2008/10/19(日))

 それはさておき、私の勤務先は官公庁との取引も多々ありまして、支払いに不安のない優良顧客である一方、事務手続きの面では細かい注文の多い、五月蠅い客でもあったりします。役所は融通が利かない~、というのが一般のイメージでしょうね。私もそんな風に思っていたわけです。しかるに今回の不正経理問題を見ていると、役所側にも相応の事情があったのであろうことがわかります

 例えば、請求書に「保守契約料」などと印字されているとしましょう。この点をどうこう言ってくる民間企業には幸か不幸か出会ったことがありませんが、これが役所ともなりますと、本当にどうでも良さそうな理由で請求書が突き返されるのです。曰く「保守契約料、とあるが契約では支払いが出来ない、業務委託料(あるいは点検整備料とか)に書き換えてくれ」等々。

 何じゃそりゃ、と思いつつも、「支払いに回せない」ままでは話になりませんから、課長に承諾をもらって請求書を改竄するわけです。いかにもお役所仕事、融通の利かないイメージそのままではありますが、こうでもしないと不正経理になってしまうのでしょうね、きっと。外部の業者に業務を委託する、その料金を払うための予算で「保守契約料」を支払うと不正経理になりますから、そこで杓子定規にルールに従う役所の場合、制度に合わせて請求書の項目も書き換える必要があったようです。
だから役所は難しい(2008-10-25 22:48:02)」(非国民通信
※ 強調は引用者による。


具体的にどんなご職業で役所と取引されているのかわかりません(「保守契約料」ということはシステム関係でしょうか)が、こうやって現場をご理解いただけると大変ありがたいです。

現場をご存じない地方分権教の皆さんには特に知っていただきたいのですが、こういうことを書類上で処理するのが末端チホーコームインの仕事なんですよ。だからこそ、地方分権が本格的になり始めてから慌てて「政策法務」とか騒いでいるわけですし、その意味では今も昔も、優秀なチホーコームインというのはこういう書類上の辻褄合わせに長けた人を指します。「地域のことは、国家公務員よりも地元に住んでいる地方公務員のほうがよく知っている」なんてことはありませんのであしからず。

「チホーコームインが現場を見ないでそんなことしてるばっかりなんてけしからん!」とおっしゃる方。だーかーらー、会計検査院とか地方自治体の監査委員っていうのは、書類上の辻褄合わせしかチェックしてないんですよ。それが原因で懲戒処分とかされたらたまらないので、書類上の辻褄合わせに血眼になるんです。もしそういう「杓子定規なお役所仕事」なんて批判されないようになんて思って、書類上の辻褄合わせをしつつなんとか融通を利かせようとしたとしても、それが一度でも会計検査院とか監査委員に問題があると指摘されたら、世間の皆様から「不正経理をした奴は犯罪者だ!」と血祭りに上げられるわけですよね。チホーコームインとしてはやっぱり、「杓子定規なお役所仕事」に今後より一層邁進していく所存です。

というか、俺なんぞのプアなリソースしか持ち合わせてない凡人はもちろんですが、「杓子定規なお役所仕事」と「地元密着で柔軟な発想」みたいな二律背反を整合的に処理するキャパを持った「スーパーチホーコームイン」なんているんでしょうかね。まあ原理的に無理でしょうし、大多数の普通のチホーコームインは懲戒処分されないような選択肢を選ぶでしょうけど。

 予算が年度で区切られているために、これまた請求書を改竄することになったこともありました。3月末に修理をして、その代金を4月頭に請求したわけですが、例によって役所から電話が掛かってきまして「昨年度の修理に対して、今年度の予算からお支払いすることは出来ません。修理日を4月以降に書き換えてください」と。「保守契約料」を「整備委託料」と書き換えるくらいなら解釈の違いで済まされそうなものですが、さすがに架空の修理日を記載するのは会社としても問題になりますので、断らざるを得ません。そうなると向こうも多少は譲歩して「では修理日を記入しないでいただけますか」となりましたけれど。こうでもしないと「(2)年度内に支出した分を翌年度に納品させる」ことになってしまうのでしょう
(略)
 もちろん、融通の利かない役所ばかりじゃありません。請求書を送れば、特別なことはせずとも黙って支払う、融通の利く役所もたくさんあります。ただ、そうした融通を利かせてきた役所が、今こうして糾弾されているのだと思うと、まったくいい気はしませんね。
だから役所は難しい(2008-10-25 22:48:02)」(非国民通信
※ 強調は引用者による。


おっしゃるとおりです。役所が杓子定規だと民間の方々にもいろいろとご迷惑をおかけすることになりますが、それもチホーブンケンだから許されるということだったらありがたいですね。まあ、住民の皆様が「杓子定規」の方がいいのか「融通を利かせる」方がいいのかはっきりしてくれない以上、下手な処理をすると「犯罪者だ!」とか糾弾されるんだったら「融通を利かせる」柔軟な処理には手を出せませんな。

あと、「私的流用はない」という説明に対しても批判が集中してますが、

 会計検査院が任意に十二道府県を選び、国の補助金の使い方を調べた。その結果、いずれでも不正経理が見つかった。この中には本県もあった。県土整備部と農林水産部合わせて、約二千五百万円を指摘された。県は当初、見解の相違もあるとして額を公表していなかった。それが、よその動きを見てか一転して頭を下げた。

 臨時職員の賃金や研修の旅費、物品購入などで、本来の使途にそぐわぬ補助金を支出したという。私的流用、裏金、カラ出張などはなかったとは県の説明だ。とはいえ厳しいヒモが付いている補助金の性質を、役人が知らぬはずはあるまい。認識不足と言うが、納税者からすればずさんな公金管理だろう。
Web東奥・天地人(2008年10月22日(水))
※ 強調は引用者による。


「私的流用じゃない」ということは組織として意志決定していたことの裏返しであって、それと「法令に基づいて支出」することの差異ってのはかなり微妙な問題です。法令を運用するためには法令の解釈ってのが不可欠で、実は自治事務に関しては地方自治体に解釈権が与えられている以上、会計検査院なんぞに指摘されるいわれはないんですよね。「預け」とか「差し替え」以外の補助金の流用が「不正経理」だったかどうかというのは、結局のところ、法令の文言上の解釈について会計検査院と地方自治体のどちらが優位性を持つかという問題に帰着するわけで、だから「解釈の違い」という話にもなるわけです。

地方分権教の方々は応援する相手をお間違えでは?



# これだけ粘着気味に「不正経理」騒動の矛盾を指摘してしまったので反論とかバッシングが大変なことになるかと思いましたが、長い文章を読んで批判するほどの堪え性をお持ちの方はいらっしゃらないようでとりあえずホッとしております。威勢のいいことをおっしゃる方ってあまり本気で手間暇かけてお考えになるつもりはないようで。
スポンサーサイト


コメント
この記事へのコメント
ご苦労様です。前後編を読んでへたってました。
なんでも「コームインイクナイ」は、減ってもらいたいところです。
コンプライアンスが呪術的に漂う、息苦しさや不自由さを官民共に共有する社会が「チホーブンケン」へ至るんですか?感謝感激雨霰で窒息死しそうです。orz
2008/10/27(月) 00:31:29 | URL | gruza03 #DgdRcaA.[ 編集]
> gruza03さん

なにぶん「杓子定規w」なものでご迷惑おかけして申し訳ございません。

> コンプライアンスが呪術的に漂う、息苦しさや不自由さを官民共に共有する社会が「チホーブンケン」へ至るんですか?

地方分権というのは制度的なコミットメント(「法律で決まっているから」とか「国がこういってるから」という外部的な制約)を弱めることにほかなりませんから、それをどこで代替するかというと現場の職員の杓子定規な運用しかないでしょう。そうなればおそらく、gruza03さんがおっしゃるような社会になりますね。

現場での裁量とコミットメントが背反するのが「ストリートレベルの官僚」問題なんですが、西尾先生の『行政学』にもその問題点はちゃんと書いてあるんですよね。やっぱり西尾先生はわかっててやってるとしか・・・
2008/10/27(月) 01:10:14 | URL | マシナリ #-[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック