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2008年10月16日 (木) | Edit |
今日の日経新聞は、規制改革と構造改革の大特集でした。hamachan先生と被ってしまいましたが、この時期にこういう記事を掲載するのが日経病なんですね。

まずは、竹中元経済財政担当大臣の経済教室。

九月末、問題資産買い取りのための公的資金に関する金融安定化法案が、米下院で否決された。今後政府の役割が一段と重要になることが予想される中で、政治は拒否反応を示した。
(略)
マネー・マーケット危機は、銀行危機に比べ社会全体への直接の損害は小さい一方、金融当局の事態把握が難しい側面がある。現実に明確な情報開示などがないままに複雑な金融商品取引が拡大し、これが被害を拡大させていった。
だからこそ、政府の対応が極めて重要だった。にもかかわらず、法案否決で政策不振が一気に高まった。つまり「市場の失敗」に「政府の失敗」が重なったことこそが、今回の危機の本質だといえる。

竹中平蔵「信認の危機 克服へ正念場 許されぬ「政治の失敗」日本、バラマキでしのぐな」日経新聞2008/10/16付け 経済教室「金融危機と世界 行方を探る>>3」
※ 強調は引用者による。

官僚大嫌いな竹中氏は政府の規制も大嫌いなはずなんですが、実は政治は大好きなんですよね。「政府」、「政治」、「金融当局」という言葉を使い分けているところが絶妙です。

日本の教訓としては以下の三点を指摘できる。
(略)
第三の教訓は、経済金融に理解のない政治が、常に政策の足を引っ張ることだ、そもそも日本のバブル崩壊後、不良債権問題の認識自体が大きく遅れたのは、選挙制度改革の中で政治が経済問題を無視してきたことが原因だった。またさきの金融再生プログラムでも、政治は決定に強く反対した。それは与野党問わず幅広く、当時自民党政調会長だった麻生太郎・現首相もこれに反対した一人だった。
金融問題は常に専門性が高く、一般の理解を得られにくい。だからこそ選挙を意識した政治家もまたメディアも、公的資金を伴う措置に反対しがちだ。日本で最終的に不良債権処理が成功したのは、政治の幅広い反対を封じ込めた小泉元首相の強い指導力があったからである

竹中「同」
※ 強調は引用者による。

小泉純一郎と竹中平蔵という希代の「政治家」二人がタッグを組んだんだから、そりゃ最強です。確かに利益誘導な方々も「抵抗勢力」だったでしょうけど、当時は理論に基づいた正論で反論しても「政治の幅広い反対」扱いだったんですよねえ。このことの功罪は慎重に判断する必要があると思います。

同じ紙面には、日経新聞社主催のシンポジウムの特集もありました。

日経新聞社は九月二十九日、東京・大手町の日経ホールで「ルールを創る 企業家精神と法」と題するシンポジウムを開いた。基調講演で、自民党の中川秀直衆院議員は「ルールは実情を知らない官僚に任せず、民間が自主的に作るべきだ」と指摘。米グーグル社のケント・ウォーカー氏やオリックスの宮内義彦会長は規制に縛られない活動が社会を発展させると訴えた。パネル討論では、弁護士や実業家、研究者などが企業家精神を疎外する法規制や慣行の背景、司法判断の問題点を指摘した。

日経新聞2008/10/16付け「ルールを創る 企業家精神と法」

という代物で、講演者もさることながらパネル討論のメンツがすごい。

高橋洋一・東洋大学経済学部教授
福井秀夫・政策研究大学院大学教授
岩倉正和・西村あさひ法律事務所弁護士
岩瀬大輔・ライフネット生命保険取締役副社長
大森泰人・金融庁総務企画局企画課長
(司会は三宅伸吾・日本経済新聞社編集委員)

日経新聞2008/10/16付け「同」

せっかくの規制改革・構造改革オールスターキャストなんで、一人一人の発言を拾ってみます(強調はすべて引用者によります)。

○中川秀直・衆院議員

最近では霞ヶ関も公務員倫理法で民間人と情報交換できず、困っている。そうならば民間人が政治任用制度で国家戦略スタッフとして霞ヶ関や官邸に入り、ルールを作ればいい。霞ヶ関が「公益性がない」と民間を格下に見ているのは、全体として日本に富める者の使命、役割としての寄付、社会貢献が少ないからだ。故渋沢栄一氏は、「公共事業は富者の義務」と言った。寄付による社会貢献こそが民間人が公益性に立ってルール作りを行う基盤になる

霞ヶ関を批判しながら、返す刀で民間も社会貢献が足りないとバッサリ斬る快刀乱麻ぶり。で結局、民間人がルールを創ることと寄付による社会貢献を強調されているのは、役所から支払われる給料が民間にいるときよりもガクッと下がってもいいから、役所の民間登用に応じなさいというエールなんですよね。男前です。

○ケント・ウォーカー・米グーグル社バイスプレジデント

最近、地図サービスの新機能として始めた「ストリートビュー」も、プライバシー関連法に違反してはいない。ただ、新しいサービスなので、不安が生じることも理解している。消費者や政府に対しては、我々のプライバシーに関する方針をしっかり説明している

ふむふむ、説明すればいいと。説明しただけだと「納得のいく説明がない」とか叩かれる役所とはやはり違うようです。

○宮内義彦・オリックス会長

日本は統制経済や官営経済の部分が大きい。その経済効率は市場経済を上回ることは考えにくく、日本全体のパフォーマンスは極めて低い。構造改革を進め、経済活動をできるだけ市場に委ねれば、もっと成長できるはずだ

「もっと成長できるはずだ」って、できなかったらどうするんでしょう。というか答えはもう出てると思うんですが、「いや、まだまだ構造改革が足りない!」ってことかな? 自己目的化って怖いですね。

○高橋洋一・東洋大学経済学部教授

今、政治は麻生対小沢という対立構造になっているが、ともに古き一九九〇年代の復活というイメージだ。政治主導や官僚たたきの変化もあったが、新政権下では、再び役所が規制をしたがるような状況に戻るのではと心配する

「官僚たたきの変化」って、ご自身と福井氏が脱藩官僚として古巣を叩いていることのPRなのでしょう。

○福井秀夫・政策研究大学院大学教授

経済や社会が安定軌道に乗っていくための最大原則は、国家が権利を明確に定めること。そしてそれを担保する司法制度を確立し、運用することが重要。ところが最近はそうした部分に黄色信号がともってきていると懸念している。特に官民の分担関係のゆがみに最近注目している

なんか最近おとなしくなったような気がすると思ったら、違うことを考えているみたいです。何を言い出すかわかりませんけど。

○岩倉正和・西村あさひ法律事務所弁護士

行政は、市場が本当に機能していない時に介入して市場機能を回復させる機能と、監督者として事後規制する機能にとどめるべきだ。不必要な行政の介入はあってはならず、法治主義の下では最終的に司法がすべてを判断する。司法権が行政に対して適正に行使されることも重要だ。

今回の一番のヒットはこの発言。司法試験合格者ってのは「俺が言うことは全部正しい。俺が法律だ!」的な思想を持っているようですが、「不必要な行政の介入」ってのをどう判断するかが問題なんであって、それが解決できれば規制改革なんか簡単な話なんですけどね。それも全部司法で解決してくれるんでしょうか。今の法曹界にそんなリソースもないはずですし、リソースを増やそうとした司法試験改革は早くも頓挫してますけど。

○岩瀬大輔・ライフネット生命保険取締役副社長

プリンシプル(原則)に従って判断した結果、(行政から)呼び出しがかかったらどうするのかと考えると、やはり萎縮せざるを得ないところもある。裁判所にも頼ることができない。特に金融業界でそうした姿勢を示すのは、すぐには難しいと考える。
(略)
いざとなったら裁判所に行けば助けてもらえるという感覚は今は到底ない。司法権の確立もあるが、まずは我々企業家が成熟性をもって何が正しいのか自分で判断することが必要だと思う。そのためのプリンシプルはもっと分かりやすくすべきだ。

同じ司法試験合格者でも、ご自身で事業をやっている方というのはさすがにバランス感覚がいいですね(在学中に合格するぐらいだし)。

○大森泰人・金融庁総務企画局企画課長

一般論として企業が自らに有利なルール作りにロビー活動するのは当然だ。大事なのは政府が負けないことだが、既得権を主張する業界と激突するのはつらいので、往々にして業界の主張を自分の主張だと思い込む。その方が楽だという心境は、行政一般に見られる現象だ。

この発言が読めただけでこのシンポジウムが開かれた意義があったんじゃないかと思えるほどの重要な発言です。規制改革とか構造改革とか地方分権とか叫んでいる方は、この発言の意味をしみじみと味わっていただきたいもので。

それにしても、このメンツとこの発言だと議論がかみ合いそうにないんですけど、日経新聞の編集担当の方乙。
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コメント
この記事へのコメント
インターネットでも簡単に募金できるんですね

びっくり…私が遅れてるだけかな
2008/10/16(木) 21:18:18 | URL | カフェざる∞ #-[ 編集]
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