2008年09月23日 (火) | Edit |
実は前回エントリで、前々回エントリの「NPOとの協働」に絡めて「自治基本条例」についても取り上げようかと思ったんですが、話には聞くものの実際に制定した自治体が近くにないもので、エントリも長いしスルーしてしまってました。gruza03さんからコメントがあったので、改めていろいろサルベージしてみたところ、自治基本条例(Wikipedia)経由で、「キャリア官僚の出身大学に比べれば一段下がる大学の法学部卒が大多数を占める事務系地方公務員は、政策法務の考え方をとることで「キャリアに独占されていた法律策定が俺たちにもできる!」とはしゃいでいるわけです」にかなり近いモデルを発見。

自治体法務(ホーム)パーク

正直なところ、俺自身が政策法務とかにはあまり興味がないこともあってこのサイトに書いてあることの是非とか軽重を判断することはできませんし、その意味では、地方公務員としてキャリアを積んで現在は大学で教員をされている方の専門分野には何も言えません。しかし、多少なりとも俺が比較優位を持つ経済学に関していえば、参考文献として「1-0 自治体法務関係文献紹介コーナー・ポータル」に挙げられている経済学・財政学関連書のコメントを見て、上記のような法学部卒地方公務員の特性について妙に納得することしきりです。

まあ、財政学と経済学を別個のものとして取り上げている時点でアウトですが、土居『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社、2007)のコメントにはビックリです。

4.土井(ママ)丈朗『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社、2007年(2007年8月22日掲示)
日本の地方債制度について、経済学的に分析する研究書(経済学といっても、新古典派経済学・計量経済学の知識が求められるもの)。地方債が膨張する現状の説明と背景分析(三位一体改革で取り残された地方債制度)、地方債が自治体にもたらしたもの(財政投融資との関係と地方債の膨張)、地方債の構造が借り手意識を持たないものとなっていること(地方交付税措置や国による「暗黙の保証」)、自治体破綻の可能性、外国の地方債との比較制度分析(アメリカとフランス)、今の日本の地方債改革の動きと政策提言から成る。改革における市場原理の必要性を基本にすえた提言であり、実際の制度改革を純粋理想形で追えば、このようなものになるのではないか。上記意味の経済学の知識がないときちんと本書を理解できるとは言えないだろうが、自治体関係者も地方債制度改革について避けて通れない事柄なので、その経済理論的な政策提言については、知っておかなければならない。『アメリカの州・地方債』とともに、ご活用いただきたい
8-4 政策財務法&財務・財政学系(自治体法務にかかわるもの)」(自治体法務(ホーム)パーク

ええ!? 「(経済学といっても、新古典派経済学・計量経済学の知識が求められるもの)」なんて括弧書きでサラッと書いてますが、新古典派経済学・計量経済学が必要でない経済学ってあるの? それなんてマルクス経済学?

今時のマクロは新古典派と呼ばれるミクロの手法を用いないことには議論できませんし、従来は財政学と呼ばれていた政府の財政活動に関する研究分野も、新古典派のミクロの手法を用いた公共経済学が中心になっているわけで、「財政社会学」とかを標榜している神野一派だけを財政学と考えてしまうと大勢を見誤ることになりますけど。

土居先生の本は確かに計量経済学ゴリゴリで一般の方は読みにくいでしょうから、まずは有斐閣の「つかむシリーズ」(神戸・寶田・濱田『ミクロ経済学をつかむ』(2006)竹田・小巻『マクロ経済学をつかむ』(2006)畑農・林・吉田『財政学をつかむ』(2008))とかで経済学と政府の財政活動についての基礎的な部分を大まかにでも理解して、鳥居『はじめての統計学』(日本経済新聞出版社、1994)山本『計量経済学』(新世社、1995)あたりを手元に置きながら地道に読み進めるしかないでしょう。

それにしても、「改革における市場原理の必要性を基本にすえた提言であり、実際の制度改革を純粋理想形で追えば、このようなものになるのではないか」という「経済学=数学を使ったモデル=理想形」なステレオタイプ理解もどうかと。確かに、ミクロ・マクロの学部レベルの教科書では単純なモデルで説明しますが、それはあくまで入門段階の教科書だからですね。

その入門レベルの次に学習する応用経済学の代表がたとえば公共経済学なので、公共経済学者である土居先生の本も入門レベルの経済学だけでは理解できません(上述の文献では畑農ほか(2008)がこのレベルへの橋渡しになっています)。入門レベルの経済学が単純な理想形のようなモデルで説明されていたからといって、応用経済学のレベルもそうだということはもちろんないわけです。特に、現在の経済学におけるゲーム理論の貢献をしっかり理解しておかないと制度設計はできない状況になっています。

ただ、土居先生の主張の要点は地方債制度が総務省と財務省の操作変数になっていて規律が保たれていないという点にあるので、そこを読み取ることができれば、市場原理が必要という文脈も規律を働かせるための経済学の観点からの提言として理解できると思います。その意味では上記のような経済学の知識は必ずしも必要十分ではないんですが、政策云々を語るならこれくらいのレベルの経済学は理解しておくべきですね。

あと、自治基本条例について書いておくと、制定した首長とか議員とか職員は、単に憲法とか他の法律に書いてあることを「市民」とかの言葉に言い換えて文章化しただけという程度の認識かもしれませんが、その「市民」一つとっても「国民」とかと微妙にぶつかる概念になっていて、どうやって整合性を取るのかよくわからないというのが個人的な感想です。そもそも治外法権的な地方分権を主張する方々も多いのでそんなこと知ったこっちゃないのかもしれませんけど、そうなると政策法務とかいう以前の問題ですな。
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コメント
この記事へのコメント
マシナリさんありがとうございます。
自分の頭で考えるためにも今後ともお世話なります。
よろしくお願いします。
2008/09/23(火) 19:30:22 | URL | gruza03 #V76W3knM[ 編集]
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