2019年09月23日 (月) | Edit |
前回前々回で取り上げていたストライキの事案について、その後の続報がありましたがちょっと気になる記述がありました。

栃木県の労働局に斡旋を申し立て

 組合と会社側はこれまで幾度の労使交渉を重ねてきたが折り合わず、9月3日の弁護士間の下交渉も決裂に終わった。

「今の状況で言えるのは、平行線のまま1カ月が経過したということです。9月3日以来、交渉は一度も行われていない。私たちの要求は『安心・安全な職場に戻りたい』という、ただそれだけです。経営陣の退陣もおのずとその中に含まれます。私の解雇は撤回されていますが、戻るなと言われている状況です。

 会社側の主張は『あなたたちの行為はストライキとして認めていない』というもので、さらに『(ストライキによる)損害賠償を請求する』という。まったく折り合える内容ではない。先日、私は栃木県の労働局に斡旋の申し立てをしました。今後は公的機関が仲裁に入ってくれる予定です」(同前)

《ストライキはどうなった?》佐野SA”解雇部長“が悲壮告白「知らない人たちが働いている」騒動から1カ月(9/15(日) 20:12配信 文春オンライン)

あっせんを申し立てた先が栃木労働局ということは、個別労働関係紛争として処理しようとしているようでして、労働組合が主体となって行うストライキ事案でありながら、栃木県労働委員会に対する労働紛争の調整(あっせん、調定、仲裁のいずれか)の申請でもなく、不当労働行為の救済申立てでもないというのが、集団的労使関係の現状を物語っているというところでしょうか。

まあ10年ほど前にも取り上げたことではありますが、「労働委員会が個別労働関係紛争処理にうつつを抜かしているうちに、本来の使命である円滑な集団的労使関係構築支援の機能が崩壊してしまっているように思われる」としていたところ、ついに現状は、労働組合による集団的労使関係における紛争処理が、労働組合法により強制力を持った命令で救済することができる労働委員会ではなく、民法の特則としての労働契約法により労使双方の同意がなければあっせんの場の設定すら行われない個別労働関係の紛争処理機関である労働局に委ねられる段階に達したということですね。

まあもちろん、今回のストライキ事案は総務部長の解雇問題が直接の契機となっているようですので、ストライキではなく総務部長がみずからの解雇について個別労働紛争としてあっせん申請することは制度上まっとうな運用です。しかし、ストライキが長引いて集団的労使関係の紛争処理が喫緊の課題となっているこの段階においては、集団的労使関係の構築を通じた労使関係の正常化が求められているというべきであり、まさにそこが労働委員会に求められる役割だと思うのですが、そういう話が当事者からもほとんど聞こえてこないところが、事態の深刻さを表していると思われます。

かくいう拙ブログもことの推移を傍目から拝見している立場ではありますが、改めて労使紛争というのはコストがかかってリスクと隣り合わせであると認識されられます。だからこそ憲法で労働三権が保障され、労組法や労調法で具体的に保護されているにも関わらず、組織率が低下の一途を辿る中で、労働組合が集団的労使関係において自ら労働条件を向上することなく、官主導でしか働き方改革が進まないこの国の現状を如実に表しているのでしょう。

(追記)
本エントリをアップして数時間後ですが、総務部長のTwitterにストライキ終結宣言が掲載されました。

Facebookも拝見しましたが、詳細と言うほどの詳細は記載されていないようでして、

<佐野SA ストライキ終了宣言>
 
私たち佐野サービスエリア労働組合は、2019年9月22日午前6時、職場に復帰しました!
 
大変急な話だったので、口頭による合意のみによる復帰です。
 
両者の認識が合致しているかどうか、最終的な合意内容のすり合わせは、これからということになります。

https://www.facebook.com/kato24/posts/2477026842381068

既に昨日から職場に復帰しているものの、最終的な合意内容のすり合わせはこれからとのことですので、まだ予断は許さない状況のようです。団体交渉というのは「妥結」するものですから、100%労働組合側が要求を貫くものではなく、使用者側と一定の折り合いがついたものと思われますが、上記のFacebookの肩書きが「総務部長」ではなく労働組合の広報担当となっているところが気にかかるところです。争議行為を伴う労使交渉がどのような帰結を迎えるのか、これからどのような集団的労使関係が構築されるのか続報を待ちたいと思います。

(再追記)
急展開すぎて追いつけませんが、文春オンラインに詳細が掲載されていますね。

ストライキ終結の経緯について、加藤氏が説明する。

「ストライキ開始後、佐野SAの現場を取り仕切っていたのは、預託オーナー商法で社会問題となった企業の関係業者でした。その業者がサービスエリアのスタッフを募集していた。社会問題になった業者に、私たちの職場を“占拠”されたのです。彼らの豊富な資金力で持久戦に持ち込まれ、勝ち目はなくなりかけました。

 そこまで追い込まれましたが、最後まで訴え続けたのが、サービスエリアを監督するネクセリア東日本とケイセイ・フーズが取り交わした契約にある、『再委託禁止』という項目についてです。『今回の募集はこの項目に抵触する』と、私は訴えてきました。(※ネクセリア東日本は東北道を管理・運営するNEXCO東日本のグループ会社でケイセイ・フーズに対して店舗を貸与している)

 すると、関係者を通じて経営側から『岸社長ら現経営陣が退陣し、新たな社長となる。9月22日に戻ってきてほしい』という連絡を9月17日に受けました。にわかには信じられませんでしたが、実際に戻ることができた。これがおおよその経緯です」

【佐野SAスト終結!】39日目の逆転劇で全従業員が復帰、社長は退陣、”解雇部長”は……(9/23(月) 18:21配信 文春オンライン)


つまり、使用者側が「スト破り」で頼っていた企業が社会的に問題になった業者であり、しかも再委託禁止という契約に違反しているとのことで委託元であるネクセリア東日本が動いた結果、経営陣が交代して、労働組合員が職場復帰できたという経緯のようです。

ついでに、同記事では、

 しかし、ケイセイ・フーズ側は、全従業員の復帰に、ある条件を提示していた。それは、加藤氏の辞職である。

 加藤氏は自身の処遇と今後の展望について、記者に胸の内を明かした。

「業務の引き継ぎや消費税対応などもあり、まずは従業員の皆さんと一緒に戻り、最低限営業ができる状態に戻したいと考えています。その先のことはわかりませんが、会社の財務状況に問題がないことを確認し、現在取引停止中の取引先の皆さんに再開をお願いしたい。できるだけはやく、営業を正常化させたいです。
(略)

「【佐野SAスト終結!】39日目の逆転劇で全従業員が復帰、社長は退陣、”解雇部長”は……(9/23(月) 18:21配信 文春オンライン)」


とのことでしたが、ご本人のTwitterで

とのことですので、私の懸念は杞憂に終わり、ほぼ労働組合の要求が通ったといえそうです。まずはご同慶の至りです。
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