2018年06月17日 (日) | Edit |
気がつけば今年も半分が過ぎようとしておりまして、霞ヶ関方面はいわゆる「骨太の方針」策定を中心とする次年度向けの方針が次々と決まる季節となっております。念のため、2000年の省庁再編以来、少なくとも建前上は、内閣府の中でもいわゆる旧経済企画庁である経済財政運営担当、経済社会システム担当、経済財政分析担当が経済財政政策を所管しておりまして、そのうち経済財政運営担当がロジを担当する経済財政諮問会議が司令塔となります。この経済財政諮問会議が毎年6月中旬〜下旬に策定するのがいわゆる「骨太の方針」でして、霞ヶ関における次年度の政策はここで決まります。

このため、各府省庁では(国会で当年度(3月までは次年度ですが)予算案が可決されるまではそちらの対応に追われることとなりますが)当年度予算が動き出した4月からは、いわゆる「骨太の方針」にいかに施策を盛り込むかに注力しなければなりません。予算作業などと並行して審議会などを開催し、だいたい前年度夏くらいから当年度4〜5月くらいまでに各分野の計画や方針を策定し、それ以降、その計画や方針を根拠としていわゆる「骨太の方針」に盛り込むために内閣府と協議を重ねるという作業に追われるわけです。

ということで、チホーソーセーのかけ声で始まった「まち・ひと・しごと創生基本方針」が今年も策定されたわけですが、

若者の地方移住を後押し 地方創生基本方針を閣議決定(日本経済新聞 2018/6/15 18:40)

 政府は15日の臨時閣議で、地方創生の具体策を盛った「まち・ひと・しごと創生基本方針」を閣議決定した。東京圏から地方への若者の移住を促すため、転職や起業をした人向けの支援金を新設する。東京一極集中に歯止めをかけ、地方での就労人口を増やす狙いだ。

 職に就いていない女性や高齢者が新たに働き始める際に助成金を支給する制度もつくる。女性や高齢者と、地方移住に伴う転職者を合わせて、2019年度から24年度までに、地方での就労者を計30万人増やす目標を掲げた。

 外国人材が地方で幅広く活躍できる制度も整える。地方自治体で働く語学教員の外国人が訪日客誘致などの業務を兼ねられるよう、在留資格の特例を設ける。地方の中小企業に就職する留学生の在留資格の変更手続きを大企業と同様に簡素にする方針も盛り込んだ。

※ 以下、下線太字の強調は引用者による。

強調した部分を読んで頭の中がはてなマークでいっぱいになりました。というのも、「地方自治体で働く語学教員の外国人」というのは、いわゆるALTの方々でして、10年ほど前にはALTを本来従事する学校以外で従事させることは本来の業務で派内としてトラブルになっていたわけです。そうした事態に対して、その当時の文科省は派遣法を適用するという弥縫策で乗り切っていました。

 さて、標記の件について、「語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)」においては、各地方公共団体が特別職の地方公務員として外国語指導助手(ALT)を任用(民法上の「雇用」に相当)しているところですが、JETプログラム以外で独自に外国語指導助手(いわゆる「NON-JET」)を活用する地方公共団体の中には、民間業者(請負業者等)に対する業務委託という契約形態(民法上の「請負」又は「準委任」等に相当)を採っている事例も見受けられるところです。

 こういった事例においては、その契約の形態(種類、名称)に関わらず、派遣元の事業主が雇用する者を派遣元の事業主との雇用関係の下に、かつ、派遣先の学校の指揮命令を受けて当該学校のために仕事に従事させる場合は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」という。)に基づく契約とすることが必要となります。

 ついては、労働者派遣事業の概要等は、別紙のとおりですので、御参照の上、労働者派遣について不明な点等があれば、適宜、都道府県労働局に相談するなどして、現在締結している契約及び今後締結する契約について、適切な対応をとられるようお願いします。あわせて、優れたALTについては、正規教員としての採用を図るなど外国語の指導体制の充実に努めるようお願いします。

「外国語指導助手の契約形態について(通知)(平成17年2月17日付け16初国教第121号 文部科学省初等中等教育局国際教育課長)」


こうした業務形態はニーズがあるから成立するわけでして、地方自治体にとっては、せっかく片田舎にまで来た外国人を使い倒さない手はないとして、本来の業務場所以外に従事させようとするのは当然の成り行きですね。ところが、ジョブ型雇用の世界からいらっしゃった外国人にとって職務記述書に記載のない業務に従事するなんて契約違反でしかないわけで、日本の実定法においても直接の雇用関係にない職場で指揮命令が行われていたことを問題として派遣法を該当させるという荒技を使ったわけです。

そういう問題を抱えたJETプログラムの説明を見てみると、

JETプログラムは、「語学指導等を行う外国青年招致事業」(The Japan Exchange and Teaching Programme)の略称で、地方自治体が総務省、外務省、文部科学省及び一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR)の協力の下に実施しています。

JETプログラムは主に海外の青年を招致し、地方自治体、教育委員会及び全国の小・中学校や高等学校で、国際交流の業務と外国語教育に携わることにより、地域レベルでの草の根の国際化を推進することを目的としています。国内はもとより、世界各国から大規模な国際的人的交流として高く評価されており、このプログラムに係わる日本の各地域の人々と参加者が国際的なネットワークをつくり、国際社会において豊かな成果を実らせることが期待されています。

「JETとは」(一般財団法人自治体国際化協会 (CLAIR))


JETプログラム参加者は、「外国語指導助手(ALT)」、「国際交流員(CIR)」、「スポーツ国際交流員(SEA)」の3つの職種で来日します。
職種に関わらず、JET参加者が果たす役割は、地域の外国語教育の普及と、国際化の推進です

外国語指導助手(ALT:Assistant Language Teacher)は主に学校、または教育委員会に配属されます。日本人外国語担当教員の助手として外国語授業に携わり、教育教材の準備や英語研究会のような課外活動などに従事します。JET参加者の90%以上がALTです。

国際交流員(CIR:Coordinator for International Relations)は、主に地方公共団体の国際交流担当部局等に配属され、国際交流活動に従事します。その職務内容から、応募者には高い日本語能力が求められます。

SEA(Sports Exchange Advisor)は、主に地方公共団体に配属され、スポーツ指導等を行います。特定種目のスポーツ専門家として、スポーツトレーニング方法やスポーツ関連事業の立案の補助などを通じて、国際交流活動に従事します。

「JETプログラムの3つの職種」(一般財団法人自治体国際化協会 (CLAIR))


というわけで、太字強調したように「職種に関わらず、JET参加者が果たす役割は、地域の外国語教育の普及と、国際化の推進です」と明記することで、職務を限定しないような配慮が見えるわけですが、そもそも日本以外のジョブ型雇用の世界でそんな小細工が通用するわけもなく、あくまで個々の労働者の職務は個々の労働者ごとに明記されるのがジョブディスクリプション(職務記述書)の原則です。

もし新たな業務が生まれたらば、ジョブ型雇用の世界ではそれを担う雇用が生まれなければなりません。ところが、職務無限定で残業してでも言われたことをこなすことが正規労働者の役割としてたたき込まれた日本型雇用慣行においては、新しい職務が生まれたなら、それを既存の労働者に押しつけるのが正しい作法となるわけです。

というわけで、「まち・ひと・しごと創生基本方針」の本文を確認しておきますと、

Ⅲ.各分野の施策の推進
1.わくわく地方生活実現政策パッケージ
(3)地方における外国人材の活用
<概要>

地方創生の取組によるインバウンドや地元産品輸出の拡大の活発化、在留外国人の更なる増加に伴う、多文化共生等の充実等により、地方公共団体においては、外国人材の活用ニーズが高まることが見込まれる。これに対応すべく、これまでの取組に加え、アジアや中南米をはじめとした在外の親日外国人材を掘り起こし、外国人材と地方公共団体のそれぞれのニーズをマッチングさせるための仕組みを構築する。また、地方公共団体等における外国人材が多様な活動ができるようにするため、複数の在留資格にまたがる活動に従事することが可能となるよう包括的な資格外活動許可を新たに付与する。さらに、日本の大学等を卒業した外国人留学生がその専門能力を十分に発揮できるよう高度人材ポイント制の拡充や在留資格変更手続きの簡素化等を行う。
また、外国人材の地域での更なる活躍を図るとともに、地域における多文化共生施策を一層推進する。


【具体的取組】
◎外国人材による地方創生支援制度の創設
外国人材を要望する地方公共団体のニーズに応えるべく、在外公館において、国際交流基金及び国際協力機構(JICA)と連携し、日本語学習者や日系人、元国費外国人留学生等の在外親日外国人材の掘り起こしを図るため、地方公共団体において活躍したいと望む外国人材への広報(大使館 HP等)を行う。これらの取組を通じて得られた情報を基に、地方公共団体において活躍したいと望む外国人材と地方公共団体のニーズ(地方創生業務)を円滑にマッチングさせるための仕組みを構築する。
・地方公共団体等において、外国人材が安定的に雇用され、柔軟かつ効率的に活動できるように外国人材の活用による海外展開、多文化共生、災害対応や教育等、幅広く活動することが可能となる包括的な資格外活動許可を新たに付与する。
(略)
◎外国人材の地域での更なる活躍等
・JET プログラム国際交流員(CIR)が、地域の経済団体等と連携して業務を行うことを促進するなど、インバウンドや海外販路開拓等に従事するCIR の一層の拡大を行う。
・外国人材の地域への定着に向け、地方公共団体等との連携により、JET プログラム終了者や留学生等が地域産業の担い手や地域おこし協力隊員等として活躍できるよう、マッチングの機会の拡大等を行う。
・また、地域におけるベストプラクティスの共有・展開や、多文化共生施策の担い手の育成を進めるなど、地域における多文化共生施策を一層推進する。

「まち・ひと・しごと創生基本方針2018(案)(pdf)」(まち・ひと・しごと創生本部)

ということで「CIR の一層の拡大」という文言はかろうじて確認できますが、そのほかでは新たな雇用を生み出すことなく、「包括的」という言葉でもって「外国人材が安定的に雇用され、柔軟かつ効率的に活動できるように外国人材の活用による海外展開、多文化共生、災害対応や教育等、幅広く活動する」という、まさに日本型雇用における正規労働者のごとく、安定した雇用の引き換えに職務無限定でどんなことでもこなす労働者として外国人を取り込んでいこうということが閣議決定されたわけです。

さて、ではこうした各分野の計画はどのように「骨太の方針」に盛り込まれたかというと、同日付けとなりますが、

4.新たな外国人材の受入れ
 中小・小規模事業者をはじめとした人手不足は深刻化しており、我が国の経済・社会基盤の持続可能性を阻害する可能性が出てきている。このため、設備投資、技術革新、働き方改革などによる生産性向上や国内人材の確保を引き続き強力に推進するとともに、従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを構築する必要がある。
 このため、真に必要な分野に着目し、移民政策とは異なるものとして、外国人材の受入れを拡大するため、新たな在留資格を創設する。また、外国人留学生の国内での就職を更に円滑化するなど、従来の専門的・技術的分野における外国人材受入れの取組を更に進めるほか、外国人が円滑に共生できるような社会の実現に向けて取り組む。

(1)一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れる新たな在留資格の創設
 現行の専門的・技術的な外国人材の受入れ制度を拡充し、以下の方向で、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材に関し、就労を目的とした新たな在留資格を創設する。

(略)

(2)従来の外国人材受入れの更なる促進
 留学生の国内での就職を促進するため、在留資格に定める活動内容の明確化や、手続負担の軽減などにより在留資格変更の円滑化を行い、留学生の卒業後の活躍の場を広げる。また、「高度人材ポイント制」について、特別加算の対象大学の拡大等の見直しを行う。これらの前提として、日本語教育機関において充実した日本語教育が行われ、留学生が適正に在留できるような環境整備を行っていく。さらに、留学生と企業とのマッチングの機会を設けるため、ハローワークの外国人雇用サービスセンター等を増設する。

「経済財政運営と改革の基本方針2018~少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現~(平成30年6月15日閣議決定)」


いやまあかくも堅牢な日本型雇用慣行に外国人まで取り込まれていくわけでして特にラストシーンで外国人労働者が親指を立てながら溶鉱炉に沈んでいくシーンは涙無しには見られなかったこうですかよくわかりません。
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