2016年04月21日 (木) | Edit |
前回エントリに引き続き、地方公務員法の改正内容からメンバーシップ型雇用の堅牢さを確認しておきますが、改めて復習しておきますと、メンバーシップ型の日本型雇用慣行を支えているのは、労働者の「能力」を基準とした職能資格給制度です。労働者の1次分配である賃金がこの賃金体系によって決まることになるため、2次分配、つまり所得の再分配政策である社会保障制度もこれを前提として規定されることになります。巷の(特に経済学方面の方に顕著ですが)社会保障をめぐる議論では、この点についての議論がすっぽり抜けいてるために、空疎な机上論と守旧的な現状維持の不毛な応報が繰り広げられることになるんですよね。

といっても、じゃあ何をもって「能力」というのかというのは永遠の問題でして、日本では労使が現場で試行錯誤しながら交渉して、1960年代までには「経験によって積み重ねられる「資格」を能力として、その「資格」を基準にして給料を決定することにするか」ととりあえず合意したわけです。これが「職能資格給制度」、つまり、「職務遂行能力」で「資格」を決定し、その「資格」に応じて「給料」が支払われる仕組みです(まあ、略さずにつなげていえば「能力・資格・給料支払い制」というところでしょうか)。

この仕組みを労働者側から見ると、「資格」は経験によって積み重ねられるのであり、経験を積めばある程度の「資格」を得て、それに対応した給料をもらえるわけですから、働き続ければ「資格」と給料がセットで上がり続け、それにより生活保障を得ることができます。

一方で使用者側からすると、従業員の年齢構成さえ管理しておけば、賃金原資の見通しを立てることができます。そしてその年齢構成については、新卒一括採用と定年制で入りと出を管理する日本的な手法が確立されており、賃金原資の見通しが悪化すれば、入りと出を調整する(日本的な手法としての中高年のリストラと新採用の抑制)ことが可能になるわけです。ここで注意が必要なのは、使用者側が入りと出を管理するということは、その中間のポストへの「異動」も使用者の裁量に委ねることになるということです。つまり、労働者が得る「資格」は、あくまで働き続けるという条件が満たされる限りにおいて上がっていくものであり、労働者は生活保障のために働き続けなければならず、与えられた「資格」に見合うように職務無限定の異動を受け入れなければならないということになります。

hamachan先生が指摘されているメンバーシップ型の日本型雇用慣行の問題点は、具体的にはこのような制度的裏付けによってもたらされます。職務無限定で異動させることすらできる使用者が、時間を限定する理由などありませんし、賃金原資の管理が面倒になりますから、仕事が増えたときには、労働者を新たに雇用するより、現在雇用している労働者に超過勤務を命じるほうが簡便です。そして労働者にとっても、その対価としての超過勤務手当より、「次の昇任」によってより上の「資格」で報いる方が長期的なメリットがありますし、使用者も賃金原資の管理がしやすくなります。こうして、職務無限定、時間無限定、勤務地無限定の処遇が、むしろ「資格」を得るためのエリートコースとなり、正規労働者が生活保障を万全にしていくわけです。

正規労働者が職務無限定の働き方と引き換えで生活保障を万全にする一方で、上述の通り賃金原資の見通しが悪化すると「資格」が高すぎる中高年はリストラされ、「資格」がまだない新卒者の採用が抑制されますが、もうひとつ大きな問題がありますね。それが非正規労働者の存在です。非正規労働者は、賃金原資の見通しが悪化するだけではなく、賃金原資の見通しが不透明になると、上述のリストラと採用抑制だけでは臨機応変に対応できないため、そのバッファとするための採用区分です。つまり、正規労働者の生活保障は、正規労働者が男性であることを前提として、その家族である主婦パートや学生アルバイトによって主に担われていた非正規労働者のバッファ機能と表裏一体だったわけですね。

いくら賃金原資の管理をするためとはいえ、入りと出のバランスが崩れると組織としての機能が低下するリスクもありますし、労働者の「資格」の前提が働き続けることである以上、その「資格」を使用者側が一方的に破棄することができません(法定の解雇規制ではありません。為念)。そのために、「資格」を与えない非正規労働者をバッファとして確保しておく必要があり、非正規労働者の拡大は、バブル崩壊以降の景気低迷をきっかけとして賃金原資の見通しが不透明となっていることがその理由となるわけです。ここまではいつもの議論ですね。

いったんまとめると、「資格」を基準とする賃金体系である「職能資格給制度」によって、労働者は働き続けなければ生活保障が得られず、職務も時間も勤務地も無限定で働くことになります。そして使用者は一方的に「資格」を奪うことができないために、景気が低迷して賃金原資の見通しが悪化すれば、中高年を高すぎる「資格」を理由としてリストラし、「資格」のない新卒者の採用を抑制し、賃金原資の見通しが不透明になれば「資格」のない非正規労働者を拡大することになります。

ここで「日本型雇用はけしからん! 職務給を導入するべきだ!」という方は、ほとんどいないでしょう。むしろ、職務無限定でもなんでもいいから正規労働者となって生活保障を確保するべきというのが、左右を問わず根強い意見ではないかと思います。だからこそ、税金によって生活保障を確保するのでなく、賃金の範囲での可処分所得を死守するべきという議論が根強くあるわけですし。ところが、その賃金は各社の賃金原資の見通しに左右されるものであって、景気が悪くなれば真っ先にカットされるものである以上、安定性が著しく低いために生活保障としての機能は本来は低いんですよね。

当然、1次配分としての賃金の適正化は必要であって、その機能は労働組合が労使交渉で発揮するものですが、これも実は「職能資格給制度」によって分断されています。つまり、職務給の社会では、交渉する賃金は「職」についての適正な水準ですが、「職能資格給制度」の社会では、会社ごとに様々な「資格」に分断された労働者が労働組合を組織しますので、個々の「職」についての賃金水準ではなく、賃金原資全体の分配が交渉事項になります。これが「ベア」ですね。その影響力を拡大する手法が「春闘方式」だったものの、労使交渉でベアが確保されると、あとは「資格」に応じて個々の労働者に配分されるので、ベアそのものについての個々の労働者の関心は低くなりがちで、組織率は下がっていきます。日本の労働組合法では労働組合の並立が認められていることもあり、労働組合の交渉力は低下する一方です。

そして、社会保障制度はこうした1次配分としての賃金体系を前提として構築されています。この前提に立つ限り、正規労働者が働き続ければ生活保障を確保できるなら、社会保障を拡充する必要はありませんし、可処分所得を減らす増税なんぞ狂気の沙汰でしょう。ただしそれは、日本型雇用慣行における長時間労働やサービス残業、正規と非正規の二極化を容認する議論でもありますので、増税論を執拗に攻撃される方は、日本型雇用慣行の維持を同時に主張していただかないと自家撞着を起こしてしまいますので、くれぐれもご注意ください。いやまあ、所得再分配とか社会保障に関心がない方は構いませんが。

という労働問題の動向にビビッドに「民間準拠」することを旨とする地方公務員法では、今回の改正で「採用」以外の任用方法が定義されることとなりました。この規定がどちらの方向に向いたものなのか、その改正が行われたのは誰の意向を反映したものなのか、ぜひご条文をご確認いただきなら思いを馳せていただければと思います。
(4/24 論旨を明確にするため一部加筆修正しました)
改正後改正前
   第三章 職員に適用される基準

    第二節 任用

 (任用の根本基準)
   第三章 職員に適用される基準

    第二節 任用

 (任用の根本基準)
第十五条 職員の任用は、この法律の定めるところにより、受験成績、人事評価その他の能力の実証に基づいて行わなければならない。
第十五条 職員の任用は、この法律の定めるところにより、受験成績、勤務成績その他の能力の実証に基いて行わなければならない。
 (定義)
第十五条の二 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 (新設)
一 採用 職員以外の者を職員の職に任命すること(臨時的任用を除く。)をいう。
 
二 昇任 職員をその職員が現に任命されている職より上位の職制上の段階に属する職員の職に任命することをいう。
 
三 降任 職員をその職員が現に任命されている職より下位の職制上の段階に属する職員の職に任命することをいう。
 
四 転任 職員をその職員が現に任命されている職以外の職員の職に任命することであつて前二号に定めるものに該当しないものをいう。
 
五 標準職務遂行能力 職制上の段階の標準的な職(職員の職に限る。以下同じ。)の職務を遂行する上で発揮することが求められる能力として任命権者が定めるものをいう。
 
2 前項第五号の標準的な職は、職制上の段階及び職務の種類に応じ、任命権者が定める。
 
3 地方公共団体の長及び議会の議長以外の任命権者は、標準職務遂行能力及び第一項第五号の標準的な職を定めようとするときは、あらかじめ、地方公共団体の長に協議しなければならない。
 

 (任命の方法)
第十七条 職員の職に欠員を生じた場合においては、任命権者は、採用、昇任、降任又は転任のいずれかの方法により、職員を任命することができる。

 (任命の方法)
第十七条 職員の職に欠員を生じた場合においては、任命権者は、採用、昇任、降任又は転任のいずれか一の方法により、職員を任命することができる。
2 人事委員会(競争試験等を行う公平委員会を含む。以下この節において同じ。)を置く地方公共団体においては、人事委員会は、前項の任命の方法のうちのいずれによるべきかについての一般的基準を定めることができる。
2 人事委員会(競争試験等を行う公平委員会を含む。以下この条から第十九条まで、第二十一条及び第二十二条において同じ。)を置く地方公共団体においては、人事委員会は、前項の任命の方法のうちのいずれによるべきかについての一般的基準を定めることができる。
(削る)
3 人事委員会を置く地方公共団体においては、職員の採用及び昇任は、競争試験によるものとする。但し、人事委員会の定める職について人事委員会の承認があつた場合は、選考によることを妨げない。
(削る)
4 人事委員会を置かない地方公共団体においては、職員の採用及び昇任は、競争試験又は選考によるものとする。
(削る)
5 人事委員会(人事委員会を置かない地方公共団体においては、任命権者とする。以下第十八条、第十九条 及び第二十二条第一項において同じ。)は、正式任用になつてある職についていた職員が、職制若しくは定数の改廃又は予算の減少に基く廃職又は過員によりそ の職を離れた後において、再びその職に復する場合における資格要件、任用手続及び任用の際における身分 関し必要な事項を定めることができる。

 (採用の方法)
第十七条の二 人事委員会を置く地方公共団体においては、職員の採用は、競争試験によるものとする。ただし、人事委員会規則(競争試験等を行う公平委員会を 置く地方公共団体においては、公平委員会規則。以下 この節において同じ。)で定める場合には、選考(競 争試験以外の能力の実証に基づく試験をいう。以下同じ。)によることを妨げない。


 (新設)
2 人事委員会を置かない地方公共団体においては、職員の採用は、競争試験又は選考によるものとする。
 
3 人事委員会(人事委員会を置かない地方公共団体においては、任命権者とする。以下この節において「人事委員会等」という。)は、正式任用になつてある職に就いていた職員が、職制若しくは定数の改廃又は予算の減少に基づく廃職又は過員によりその職を離れた 後において、再びその職に復する場合における資格要件、採用手続及び採用の際における身分に関し必要な 事項を定めることができる。
 

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2016年04月21日 (木) | Edit |
熊本から大分に広がった地震関連のエントリを挟みましたが、前々回エントリに関連して議論を広げておきます。

前々回エントリで取り上げた職階制の廃止と並んで、任用方法の改正も今回の国家公務員法改正に連なる地方公務員法改正の大きなポイントとなります。これまでは、地方公務員法に任用方法の規定がなく、解説書に採用、昇任、降任、転任それぞれの任用方法について説明がある程度でしたが、改正後の地方公務員法ではそれぞれに定義規定が置かれることになりました。というと、年中行事として3月に従業員の少なくない割合が異動or昇任し、定年を迎えた従業員が退職or再雇用され、4月になると入れ替わりに新卒の新入社員が入社してくるという日本の勤め人には、「その方法の規定が無いとは何事だ」と思う方も多いかもしれません。

この話の前提として、ジョブ型雇用のアメリカ占領下で制定された地方公務員法が任用の種類について規定を置かなかったのは、ジョブ型ではすべての雇用が採用に包含されることがその理由であるということに注意が必要です。これもまた日本型雇用慣行では認識されない点ではあるのですが、雇用の基準が「職」にあるジョブ型においては、ある「職」に労働者を配置するのは、すべて「採用」なんですね。

たとえば、ジョブ型の会社がニューヨーク支店の法人営業課長という「職」に労働者を配置する場合は、その人材が会社内部の従業員か外部の応募者からであるか(もちろん応募者が無業者であるか)は問いません。つまり、ジョブ型である以上、その候補者の適性はあくまで「ジョブ」を基準として判断されるため、内部労働市場と外部労働市場がシームレスとなり、内部の人材と外部の人材は特に区別されることなく配置の可否が判断されることになります。それらはいずれも「雇用」(employment)となるわけでして、これを日本人が見ると、内部の人材であれば「昇進」(promotion)したように見えて、外部の人材であれば「採用」(employment)したように見えるということになります。なお、昇進を意味するpromotionは、使用者側ではなく労働者側の視点であることも示唆的ですね。昇進は社内の手続きとして行われるのではなく、あくまで自分自身を販促(promote)した結果であるという考え方が透けて見えるように思います(まあ昇進した人を三人称でいうときは He is promoted となるようですが)。

これに対して、メンバーシップ型の会社の東京支店の法人営業課長という「職」は会社の内部の人材が「昇進」して就くポストであって、外部からいきなり「管理職」に「採用」するというのは(特別のプロジェクトなどで外部から招聘される場合は除いて)ほとんどありません。こうした「管理職」への「昇進」は、日本のメンバーシップ型雇用においては、会社内部の手続きとなっているからですね。上記の例でいえば、東京支店の法人営業課長には大阪支店の法人営業係長が「昇進」したり、東京支店の会計課長が「横滑り」したりするものであって、これらはすべて「異動」といわれます。外部の労働者が応募しようとしても、そもそも「異動」は外部にはオープンにされていないので、応募すらできません。まあ、最近では特定のポストに「公募制」などの制度を設ける会社もありますが、それもあくまで社内の従業員を対象としたものですし。

これらの「異動」が会社内部の手続きとなるのは、定年退職とセットになった新卒一括採用のため、定年退職で空いたポストに順次「昇進」させながら、上から末端までの中間のポストに空きを作らなければならないという物理的な必然性があるからですが、話はそれにとどまりません。こうした「定期異動」は、従業員を下から順次大きな仕事を担うポストに割り当てることで、「昇進」させるに足る人材の育成(あるいは見極め)を行うものでもあって、それが内部労働市場で人材育成と調達を行う日本型雇用慣行の肝でもあるわけです。逆にいえば、よくわからないけど英語が上手くて評判が高い経営コンサル辺りを外部から「管理職」に登用すると、プロパー従業員からは「横入りのごぼう抜き野郎」((c)松本人志@『遺書』)として忌み嫌われてしまい、結局仕事にならないということになりかねません(まあ、地方公務員の世界では、国やら県やらから「格下の」自治体に「管理職」が出向するというのは日常茶飯事ですが)。

これを日本的感覚でいえば、「内部で人材育成された労働者でないのに、どうして「管理職」になれるのか」というところでしょう。実は、上記の日本型雇用慣行における人材育成の観点からいえば、この感覚には一理あります。つまり、日本社会にメンバーシップ型の雇用慣行が根強く浸透しているため、その会社における「管理職」とはメンバーシップ型雇用を管理するものでなければならず、その管理を担うためには、「管理職」自身がその会社におけるメンバーシップ型雇用を十分に経験して体得している必要があるというわけです。こうしてメンバーシップ型雇用は自ら「管理職」を養成することによって自己を強化し、それを支える職能資格給はますます堅牢になっていくことになります。

端的には、管理職ポストを経て退職した中年男性が再就職しようとしたときに、「管理職の経験があります」と自己PRしたという話は、メンバーシップ型の日本では笑い話になってしまうけれども、ジョブ型の社会では特に違和感を感じられないという点にその違いが表れているといえましょう。

さて、前置きが延々と長くなっていまいましたので、改正地方自治法についてはさらにエントリを改めることにします。

2016年04月16日 (土) | Edit |
この度の熊本地震で多数の死傷者が発生してしまい、亡くなった方に心より哀悼の意を表するとともに、怪我を負われた方にお見舞いを申し上げます。気象庁では、今日未明の直下型地震が本震と考えられるとの見解を示しているとのことで、これからもしばらくは余震に警戒が必要となります。住居などの建物の崩落や道路や橋が損壊するなど、救助活動そのものが困難な状況ですので、救助・支援する側の皆さんもくれぐれも注意の上、活動に当たっていただきたいと思います。東日本大震災発生後の拙ブログのエントリが参考になればと思います。

被災地支援について(追記あり)2011年03月18日 (金)
被災地支援についての補足(追記あり)2011年03月20日 (日)

現地の社協では、ボランティアの受け入れについての情報が掲載されています。

平成28年熊本地震について(第2報) 最終更新日 [2016年4月16日 8時24分]
■■■■4/16(土)現在は「人命救助」の作業が優先されます■■■■
ボランティアが入れる状況になったら、こちらでお知らせします。


平成28年熊本地震について(第2報)

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
被災地でのボランティア活動に参加したいと考えている"あなた"へ
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 被災地でのボランティア活動の前に、大切なことをまとめましたので、必ずよく読んで参加してください。
http://www.fukushi-kumamoto.or.jp/list_html/pub/detail.asp?c_id=56&id=7&mst=0&type=

 もっと、詳しく知りたい方は、次の『市町村災害ボランティアセンターマニュアル』をご覧ください。
http://www.fukushi-kumamoto.or.jp/list_html/pub/detail.asp?c_id=56&id=6&mst=0&type=

災害ボランティア情報(熊本県社会福祉協会)
※ 以下、強調は引用者による。

特に、リンク先の「 「平成28年熊本地震」に関する災害ボランティア情報について」は必読です。

ボランティア情報

Ⅰ 被災地でのボランティア活動に参加したいと考えている"あなた"へ 

 被災者への生活支援や被災地の復興支援のボランティア(以下「災害ボランティア」)活動に参加する際は、いろいろな準備が必要となります。
 無計画に被災地へ向かっても、欠航、運休、通行止め等で現地入りできなかったり、現地に到着してもボランティアの募集が行われていなかったりする場合もあります。
 被災地の市区町村に設置される「災害ボランティアセンター」で最新の情報を入手し、綿密な計画を立てて現地に向かいましょう。

(略)

8 問合せのマナーについて

 被災地の市役所や役場、災害ボランティアセンターに安易に電話や電子メールで問い合わせることは、できる限り控えてください。
 被災者からの「助けてください」などの問い合わせの電話がかかりにくくなる恐れがあるからです。
 メールも回答するのに時間や手間がかかることから、かえって迷惑になります。
 このため、被災地の情報を入手する際は、まず初めに、被災地の市役所や役場、社会福祉協議会、災害ボランティアセンターのホームページをしっかり閲覧しましょう
 東日本大震災以降の災害では、停電や冠水などによりパソコンが使えなかったことから、携帯電話やスマートフォンなどの携帯端末による情報発信が積極的に活用されています。
 特に「ツイッター(twitter)」には、災害ボランティアや物資の募集などの被災地支援の情報がタイムリーに発信されていますので、情報収集にお役立てください。そして、これらの方法でも情報が不十分な場合に限って電話による問合せをしてください。
 「できる限り電話やメールをしない」という「配慮」もボランティア活動のひとつです。
平成28年4月15日 熊本県ボランティアセンター

「平成28年熊本地震」に関する災害ボランティア情報について(熊本県社会福祉協会)

ボランティアで被災地支援をお考えの方は、ぜひリンク先を開いて全文をご一読ください。

そのほか、支援物資の送付やボランティア以外の支援方法としては、募金が最も簡便で効果的だろうと思いますので、ご参考までにリンクします。
【熊本地震速報】災害・寄付・ボランティア情報まとめ(ボランティアプラットフォーム)

被災された方が一日も早く元の生活を取り戻せるよう、私も支援したいと思います。

(追記)
マンマークさんにご紹介いただきましたので、こちらからもリンクさせていただきます。マンマークさんは「熊本地震関係」のカテゴリを作ってリンク先も随時更新されているようですので、最新の情報をご確認ください。
「何かしたい人へ。(追記あり)(2016-04-16)」(市役所職員の生活と意見)

(再追記)
21日までに徐々にボランティアセンターの受け入れが始まったようですので、リンクしておきます。
平成28年熊本地震について(第6報)最終更新日 [2016年4月21日 11時07分]

ボランティアとしての支援方法について混乱があるようなので整理しておきますと、自活のスキルや支援方法についての装備などを準備できない個人の方は「ボランティアセンター」を通じて最低限の装備や自活方法でできる支援活動を行うことが望ましいという理由で、「ボランティアセンター」での受け入れが始まるまでは情報収集に徹して、無用の混乱を防ぐべきだと思います。逆にいえば、自活のスキルがあり、被災地で自主的に支援できる装備とノウハウをお持ちの方が自主的に支援活動を行うことは可能でしょう。

ただし、もう一つ重要な要件がありまして、そのように自主的に活動できる方であればこそ、避難所の担当者や地元の自治体、さらに救助活動を行っている警察や消防と十分に連絡を取り合いながら、秩序だった活動を行う必要があります。そのような連携ができない、あるいはするつもりがない方は、ただでさえ混乱している現地に無用の混乱をもたらす可能性が高いので、活動を自粛していただくのが被災された方への配慮だと思います。という言葉が届く相手ではなさそうなところが難しいところですが。

2016年04月10日 (日) | Edit |
新年度が始まってマスコミなどでは電力自由化などが話題になっていますが、この4月から地方公務員の働き方も大きく変わったことは、当の地方公務員にもあまり意識されていないようですね。というのは、平成26年5月に成立した改正地方公務員法がこの平成28年4月1日に施行されておりまして、任用の方法が根本的に変更されていまして、その内容は以前連載させていただいていた「HRMics」の2014年8月発行のvol.19でちょっと詳しく取り上げております。

民間の経験を踏まえた職階制の廃止
 今回の改正によって、職務給原則による職階制を廃止したということで、名実ともに公務員も職能資格給制度が取り入れられることになりました。…といいたいところですが、地方公務員法24条1項の職務給原則についての規定は、今回の改正後もそのまま残っています。職階制を廃止したのに職務給原則は変わらないというのは、どういうことでしょう?
 総務省が作成した地方公務員法改正の資料をみると、「職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる人事評価制度を導入」と書いてあります。なるほど、職階制を廃止して人事評価制度を導入するわけですね。
 さらにその資料にはこうあります。「職務給原則を徹底するため、地方公共団体は給与条例で「等級別基準職務表」を定め、等級別に職名ごとの職員数を公表するものとする」…なんとも理解に苦しむ文章ですが、この文面どおりに解釈すると、まず給与を決めてそれに見合う職務を決める「等級別基準職務表」を定めることになります。つまり、職務給原則の徹底といいながら、その実態は、等級別に区切られた職務遂行能力に給与を連動させる職能資格給とし、そこに人事評価を加えるものということになりそうです。
 となると、今回の地方公務員法改正によって「職階制」は廃止されましたが、それは実態上の職能資格給制度を追認しつつ業績連動部分を大きくする趣旨と理解すべきでしょう。
 民間と公務員に共通する日本型雇用は、すでに以前のような厳密な意味での年功序列ではなくなっており、実態との整合性という意味では一歩前進したのかもしれません。しかし、「公務員は親方日の丸で年功序列だから成果主義の導入を!」と意気込んだ結果が日本型雇用だったわけでして、結局のところ、公務員も民間も等しく無限定に働くことが求められる現状には変わりがなさそうです。

「公僕からの反論 公務員は「親方日の丸」でも「年功序列」でもない」HRMics vol.19(2014年8月)p.40
※ 以下、強調は引用者による。


ここで引用している総務省の資料というのはこちらのページに掲載されている概要ファイルです。
概要PDF【196 KB】
実は、この地方公務員法改正は平成19年の国家公務員法改正と連動しておりまして、ほぼ同じ内容となっています。その平成19年の国家公務員法改正は、同年4月の閣議決定の内容を具体化したものとなっています。

2.国家公務員法等の改正
(1)能力・実績主義
①人事管理の原則
 職員の任用、給与その他の人事管理について、職員の採用試験の種類や年次にとらわれてはならないこと、人事評価に基づいて適切に行うことといった基本的な原則を明らかにする。
②能力本位の任用制度の確立
イ 昇任、転任等
 職員の昇任及び転任は、職員の人事評価又はその他の能力実証によるものとする。また、職制上の段階の標準的な官職と、その官職に必要な標準職務遂行能力を明らかにしておき、標準職務遂行能力及び適性を、昇任又は転任の判断基準とする。
ロ 採用昇任等基本方針
 職員の採用、昇任、降任及び転任に関する制度の適切かつ効果的な運用を確保するための基本的な方針(採用昇任等基本方針、閣議決定)を策定する。
③ 新たな人事評価制度の構築
職員の人事評価を「任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価」と定義し、これを公正に行わなければならないこととする。
ロ 職員の執務について、その所轄庁の長は、定期的に人事評価を実施。
ハ 人事評価の基準及び方法に関する事項その他人事評価に関し必要な事項は、人事院の意見を聞いて政令で定める。

「公務員制度改革について」(平成19年4月24日 閣議決定)


さらに、この閣議決定に至る前には、平成13年度(18年度一部改正)の「公務員制度改革大綱」で基本的な考え方が示されています。

(1) 能力等級制度の導入
① 基本的考え方
 新人事制度の基礎となるものとして、職務(官職)を通じて現に発揮している職務遂行能力に応じて職員を等級に格付ける能力等級制度を設け、これを任用、給与及び評価の基準として活用することにより、トータルシステムとしての人事システムを構築する。
 能力等級制度は、上級幹部職員(現行の指定職俸給表の適用を受ける職員に相当する職員をいう。以下同じ。)を除く職員に適用する。

② 具体的措置
ア 能力等級表
 職員一人一人の職務遂行能力の評価及び等級への格付けを適正に行うためには、公務部門の多様な組織や職務の実態を踏まえて等級ごとに職務遂行能力基準(以下「能力基準」という。)を適切に定める必要がある。このため、府省共通の能力等級表を設け、同表において、組織段階ごとに、基本職位、代表職務及び能力基準を定める。
 組織段階は、本府省、地方支分部局等に応じて複数設け、組織段階ごとに典型的な職制段階(課長・企画官、課長補佐、係長、係員など)に応じた複数の基本職位を定めるとともに、基本職位ごとに代表職務(基本職位の前提となった職制の代表的な職名)及び対応する等級を定める

公務員制度改革大綱(平成13年12月25日閣議決定 平成18年6月16日一部改正)


・・・さて、ここまでの改正法とか閣議決定の文書を読んで、違和感を感じる日本人の勤め人はどれだけいらっしゃるでしょうか。もう一度確認しておきますと、国家公務員法も地方公務員法もいずれも「職務給の原則」を掲げています。これに対して、19年の閣議決定では「職制上の段階の標準的な官職と、その官職に必要な標準職務遂行能力を明らか」にするとし、13年の閣議決定では「職務(官職)を通じて現に発揮している職務遂行能力に応じて職員を等級に格付ける能力等級制度を設け」るとしていますね。それでは、職階制を廃止した国家公務員法と地方公務員法の改正は、「職務給の原則」を徹底しているといえるのでしょうか?

まあ、こんな問いには日本の勤め人の皆さんはほとんど関心がないでしょうし、むしろ、この改正は民間では当たり前だと感じる方が多いでしょう。つまり、民間でも公務員でもおよそ日本人が違和感を感じるのは「職務給の原則」のほうであって、上記の閣議決定文書にいうような能力に応じて職制上の官職(ポスト)に処遇する「職能資格給」の説明のほうがしっくりくるのではないかと思います。結局、国家公務員法と地方公務員法の「職務給の原則」が、その言葉とは正反対に「職能資格給」として機能している現状を追認したのが、国家公務員法から地方公務員法に連なる改正の内容ということになります。だからこそ、「職務給の原則」を支える(はずだった)職階制は廃止されなければならず、その代わりに能力に応じて官職を割り当てるための人事評価を規定しなければならなかったわけです。

という次第で、こういうことを書いていても「それのどこが問題なのか」というのが大方の反応だとは思うのですが、実は、平成13年の閣議決定の前の段階の文書では、より「職務給」を指向していたと思われる記述があります。

4 能力・実績に応じた昇進・給与を支える人事評価

【基本的考え方】

 公務員については、組織的な職務遂行が求められること、収益等による明確な評価ができないこと等、民間企業と比べ、業務の性格上人事評価が困難な面があるが、能力・実績主義を徹底した人事を支えるため、各職員の能力・実績を的確に把握しうる客観性・公正性の高い人事評価システムを整備することが必要である。
 現行の人事評価の中心である勤務評定制度については、現に就いている官職における短期的な勤務実績の評価の観点から設計されているものであり、昇進管理・人材配置に用いるべき中長期的視点をも踏まえた能力評価のためには、必ずしも十分なものとは言えない。
 今後は、(1)執務の結果である短期的な勤務実績等の的確な評価、(2)職員がある役職段階や官職に昇任・異動するために必要な能力の基準を満たしているかどうかの中長期的観点を含めた的確な能力評価の双方を一層公正かつ客観的に行うことができるよう、人事評価制度を整備すべきである。
 また、職員の能力を十分に発揮させ、その能力・実績を的確に評価できるよう、個々の職員の職務範囲を明確にするとともに、職員が創意工夫をもって仕事に取り組めるような職務編成としていくことも重要である。  同時に、能力評価の結果を昇進管理のみならず能力開発にも十分活用すべきである。  また、職員の職務に対する意欲を高めるためには、職員個人の自主性に配慮していくことが重要であり、職員の自主性、志向を取り入れる評価制度の構築という観点も重要である。  なお、具体的な改革方策を検討していくに当たっては、専門的な検討の場を設けることが必要である。

「公務員制度改革の基本方向に関する答申」(平成11年3月16日 公務員制度調査会)


この平成11年の段階では「職務範囲を明確にする」として、「職」を基準にするような議論も一部にみられたものの、2年後の平成13年には「職務(官職)を通じて現に発揮している職務遂行能力に応じて職員を等級に格付ける能力等級制度」という「ヒト」を基準とする制度にすり替わってしまうところが、日本型雇用慣行における「職能資格給制度」の堅牢さを物語っていますね。

いやもちろん、雇用・労働の問題にきちんと向き合っている方々にはこうした制度変更の問題点は認識されているところでして、

地方公務員法改正にともなう条例改正では、地方公務員法が本来目標としていた職務(ジョブの種類)職階制を廃止し、職位だけで「職務」を定義して総合的に人事評価するやり方は、職務無限定で働かせる日本の労働慣行を見直して一億総活躍と言っている時代に逆行する改革である、と反対しました。

「3/24 3月定例市議会おわる(2016.03.28)」(きょうも歩く)

黒川さんがこの短文で的確に指摘されている通り、長時間労働やら正規と非正規の格差やらサービス残業やらワークライフバランスやらが叫ばれながらその対策が奏功せず、景気が回復しても企業ごとの賃金交渉には波及しづらく、同一労働同一賃金の実現を難しくしているのが、職務無限定の日本型雇用慣行であり、それを支えているのが職能資格給制度なわけです。結局は国家公務員法も地方公務員法も、現状のまま日本型雇用慣行を追認するようにしか改正されていないわけでして、4月に施行されても誰も気がつかないのは、まあそういうことですね。