2015年12月18日 (金) | Edit |
今日は家族の都合でお休みをいただきまして、ちょっと時間が空いたので気になったことをメモ的に(貯まっているネタがあって時系列が狂ってしまいますが)。

拙ブログでも財源論はしょっちゅうとりあげるネタでして、私としては財源の話をしているんではなくて、その財源によって雇用や生活保障を得る人の話をしているつもりですが、そうして人に紐付けされたものであろうがなんであろうが「財源」というのはなかなかに評判が悪いものですね。個人的に非国民通信さんは財源論以外ではかなり賛同できる方なのでサンプルとするのはやや心苦しいのですが、こういう言説を並べて違和感を感じないというのは日本的左派の皆さんにありがちなのではないかと思われます。

 介護人材の不足は結構な以前から叫ばれていますけれど、その薄給は昔から変わっていません。そこで改革派の政治家や財界人は移民の受け入れを検討せよと語るものですが、まぁ金を出さずに済ませようとするのが日本的なソリューションなのでしょう。そして昨今は保育士の不足が問題視されています。

カネの問題だという現実を受け入れよう(非国民通信 2015-12-13)

ふむふむなるほど、「カネを出さずに済ませようとする日本的ソリューション」では問題は解決しませんよね。で、その3日後にはこう指摘されます。

 とかく「財源」を騒ぎ立てる論者も目立つところですが、それもおかしな話です。減税ではなく増税を論じているのになぜ財源の話になるのか。一部の食品を増税の例外にしたところで税収が今より減るわけではありません。要は「(消費税増税分を当て込んでいた法人税減税の)財源が足りなくなる」というのが正しい理解のはずです。ならば話は簡単、アホな法人税減税をやめればおつりが来ます。それよりも、消費税増税によって抑制される国内消費、それに伴う経済活動の停滞と必然的な税収減を補う財源を考えた方が建設的でしょうね。そして言うまでもなく最良の判断は消費税増税をやめることですけれど――現与党以上に逆進課税に積極的なのが野党第一党という有様ですから、まぁ救いようがないのかもしれません。

カネの問題は命の問題につながっている(非国民通信 2015-12-16)

うーむ、公的サービスの供給者にとっては、前者で引用したエントリの「カネ」の財源こそが後者のエントリの「カネ」でありまして、ここでもやはり「カネを出さずに済ませようとする日本的ソリューション」では問題は解決しないように思います。まあ公的サービスの需要者としては、前者の「カネ」はどこかの富裕層が負担するものであって、後者の「カネ」はびた一文払うつもりはないとの意思表明でしょうし、それはそれで一つの意思表示として尊重すべきだろうとは思いますが、それでは現実的な生活保障に関するヒトの雇用は何ら解決しないわけでして、頭を抱えざるを得ません。

というのも、「デフレを脱却したら」「景気が回復したら」…こんなエクスキューズでもって、再分配政策としての公共サービスが担う生活保障の機能が、これまで20年にわたって貧弱なままに据え置かれている実態があるからです。いつもの繰り返しの議論ですが、かつては日本型雇用慣行の下での生活保障給や日本型フレクシキュリティ(男性正社員の収入により家庭が介護や保育などの生活サービスの現物給付を担う)がそれを代替していました。そのような役割分担を踏まえれば、バブル崩壊で景気が後退し、日本型雇用慣行が変容して生活保障の機能の縮小を余儀なくされた時点で、政府を通じた再分配政策、特に家庭で負担できなくなった生活サービスの現物給付が拡充されるべきでした。

ところが、貧弱な再分配政策による生活困窮の実態や、そのような事態に陥る人が増加することによる経済への悪影響は当時ほとんど注目されていませんでした。そして、もともと低負担だった日本の国民負担率は、バブル崩壊後の景気回復のかけ声に押されて90年代を通じて低下していきます。一方で少子高齢化による生活サービスの現物給付需要の自然増が重なり、その穴埋めとして国と地方の債務残高が激増していった(一部は小渕内閣時の財政拡張も寄与していますが)わけです。さらにいえば、医療従事者はバブルがはじける前から深刻な人手不足を超人的、というより廃人的な長時間の勤務実態で医療サービスの現物給付需要をカバーしています。

で、バブル崩壊後もアジア金融危機、ITバブルの崩壊、リーマンショック、ユーロ危機等々、日本の増税(まあこれまで「増税」といえるような税制改革はなかったんですが)とは関係なく世界的な景気後退が繰り返されている中で、「デフレを脱却したら」「景気が回復したら」といって財源が確保できないまま、日本型雇用慣行下で機能していた生活サービス、特に現役世代向けサービスを政府が現物供給することなく20年が経過しています。その一方で、税収による一般財源にしか財源を頼れない生活サービスは、景気後退のたびによくて現状維持、悪ければカットされる状況が続いています。もちろん、医療や年金などは国民皆保険制度があるので財源としては安定していますが、全体では貧弱な社会保障費の中で現金給付である年金の総額が相対的に大きいために、一部の論者からは世代間の不公平感を煽る格好のネタとされてしまっています。

財政政策の実現性(2014年12月10日 (水))

ついでながら、1年前のこのエントリで取り上げた「医療従事者はバブルがはじける前から深刻な人手不足を超人的、というより廃人的な長時間の勤務実態で医療サービスの現物給付需要をカバーしてい」るというのは、医療機関には官民問わず強力な労働組合が存在していまして(その労働組合は「医者とコメディカルのヒエラルキー」という労働者側の労労対立の産物でもあるわけですが)、その強力な組織力によってそれなりに高い賃金水準を確保しているという実態があります。その点で長時間・重労働の勤務実態があってもそれなりにサービスの供給体制は維持されているのですが、労働組合が見向きもされなくなった時期に就業者が拡大した介護労働では、低い賃金水準で長時間・重労働の勤務に従事しなければならないのですから、供給体制が維持できなくなるのもまた宜なるかな。まあそれも、労働組合が機能しない日本の集団的労使関係の、または「カネを出さずに済ませようとする日本的ソリューション」の帰結なのだろうと思います。
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2015年12月07日 (月) | Edit |
前回エントリに引き続き、会計検査院の報告から緊急雇用創出事業関係の案件ですが、

 そして、上記77事業のうち、道及び5県(注4)管内の17市町村(注5)が委託するなどして実施した22事業(事業費計39億3578万余円、このうち基金事業の対象経費となるリース料計7億7949万余円)については、機器等の使用可能年数として一般的に認められている「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和40年大蔵省令第15号)に定められた期間(以下「法定耐用年数」という。)よりも短期間となっている1年以内の事業期間又は当該事業期間内における当該機器等の使用期間(以下「事業期間等」という。)をリース期間と設定してリース料を算定しており、この額を基金事業の対象経費としていた。また、上記の22事業については、受託者等が基金事業の終了後も、リースにより調達された機器等をリース料の10分の1程度の低額で再リースしたり、低額で買い取ったりするなどして継続して使用していた
 しかし、基金事業において調達した機器等について、事業期間等をリース期間と設定しリース料を算定して、この額を基金事業の対象経費とすることは、基金事業の終了後に受託者等が自らの負担によるなどして行う事業で使用する当該機器等に係るリース料も基金事業の対象経費に含めることになる。このため、基金事業の終了後も受託者等が継続して使用する見込みのある機器等をリースにより調達する場合のリース料の算定に当たっては、事業期間等をリース期間として設定するのではなく、法定耐用年数等の合理的な基準に基づいてリース期間を設定し、事業期間等に発生した分のリース料のみを基金事業の対象経費とするのが適切であると認められる。
 そして、前記の22事業について、リースにより調達された機器等の法定耐用年数をリース期間と設定しリース料を算定して事業期間等に発生するリース料のみを基金事業の対象経費とすると、表のとおり、リース料は計1億3724万余円となり、当初基金事業の対象経費として計上したリース料計7億7949万余円との差額6億4225万余円は過大に算定されていたと認められた。

(注3)3道県 北海道、岩手、沖縄両県
(注4)5県 岩手、秋田、山形、愛媛、沖縄各県
(注5)17市町村 盛岡、花巻、北上、一関、釜石、二戸、奥州、にかほ、鶴岡、西予、名護各市、下閉伊郡山田、九戸郡洋野、雄勝郡羽後、国頭郡本部、島尻郡南風原各町、国頭郡今帰仁村

(表省略)

 上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
〈事例〉
 岩手県九戸郡洋野町は、平成24年度に、コールセンター業務等の実施によって、コールセンター等の情報通信技術を活用した新たな業種に対応できる人材を育成することを目的とする「コールセンター人材育成事業」を基金事業として契約金額1億8989万余円(変更契約金額2億2209万余円)で株式会社Aに委託し、同会社が当該事業を実施したことを確認して、1億8458万余円を同会社に支払っており、岩手県は同町に対して、基金を財源として同額の補助金を交付していた。そして、本件基金事業が開始される前の24年3月に同町と同会社との間で締結された「事業所立地に関する協定書」等において、同会社が基金事業の終了後も自らの負担によるなどしてコールセンター業務等を継続して実施することが予定されていた
 同会社は、コールセンター業務用機器等のリース料について、法定耐用年数(6年等)よりも短期間となっている基金事業の期間内の使用期間(以下「使用期間」という。)である8か月をリース期間と設定し5343万余円と算定して、同額を基金事業の対象経費としていた。
 しかし、基金事業において調達した機器等について、使用期間をリース期間と設定しリース料を算定して、この額を基金事業の対象経費とすることは、基金事業の終了後に同会社が自らの負担によるなどして行う事業で使用する当該機器等に係るリース料も基金事業の対象経費に含めることになる。

緊急雇用創出事業の実施に必要な機器等をリースにより調達し、当該機器等を事業終了後も継続して使用することが見込まれる場合において、合理的な基準に基づいてリース期間を設定することを実施要領に明示することなどにより、同事業の対象経費となる機器等のリース料が適切に算定されるよう改善させたもの(PDF形式:171KB)
ホーム > 検査結果 > 最新の検査報告 > 平成26年度決算検査報告 > 第3章第1節 省庁別の検査結果 > 厚生労働省
※ 以下、強調は引用者による。

ということで、大雪りばぁねっとはそのままの名称が出されていたのに対し、こちらでは「株式会社A」となっていますが、これはもちろん「株式会社DIOジャパン」ですね。こちらのエントリで引用した読売新聞で指摘されていたことについて改善措置がとられたとのことです。

DIO研修中5000万収入…県調査(読売新聞 2014年08月05日)※リンク切れ

 DIOジャパン(本社・東京)がにかほ市と羽後町に開設したコールセンターの従業員研修期間中、約5000万円の収入を得ていたことが4日、県の調査で分かった。研修期間中の従業員の給与は、国の緊急雇用創出等臨時対策基金で賄われており、収益が出た場合、地元自治体に返還する義務がある。県は近く厚生労働省に報告し、返還を求めることが可能な収益に当たるか否か判断を仰ぐ。

 このほか、にかほセンターが昨年12月~今年12月の契約で借りたノートパソコン80台について、研修期間外の今年4月以降の使用料も基金で支払ったことなどが判明。県は「基金返還の可能性が高い案件」として、併せて同省に報告する。
(略)
 一方、佐竹知事は4日の記者会見でこの問題について「良かれと思って(誘致を)頑張ったが、結果的に従業員と地域の方々に心配をかけた。深く反省し、おわびしたい」と陳謝した。

(略)
念のため記事の解説をしておくと、委託事業というのは本来自治体が実施するべき事業について、その実施を他の事業体に委任するものでして、民法でいう委任(特に事実行為の委任である準委任)に該当します。したがって、緊急雇用創出事業であっても、あくまで自治体が実施すべき事業を他の事業体が代わりに実施するものとなりますので、事業体が自ら行う事業とは経理上も実態上も明確に区別されます。ということで、委託事業で雇用した従業員を委託事業の仕様書に定められた以外の業務に従事させることは認められませんし、事業体が自ら行う事業で発生した経費に自治体からの委託費を充当することも認められません。

当事者意識の欠如(2014年08月08日 (金))

この当時の厚労省の報告書も持って回った書きぶりでしたが、会計検査院もさらっと「本件基金事業が開始される前の24年3月に同町と同会社との間で締結された「事業所立地に関する協定書」」とか書いていて味わい深いものがありますね。まあ、かといって緊急雇用創出事業が終わった後も事業を続けるからといって緊急雇用創出基金を財源として購入した備品をタダで使用できるわけではないんですが、もしかすると佐竹秋田県知事のように「よかれと思って」便宜を図ったのかもしれませんが、何度も繰り返すとおり適切な手続きを経ない事業はその正当性を失ってしまうという厳然たる事実には謙虚に学ぶ必要があるでしょう。

ということで、震災後に数倍に膨れあがった事業の後始末はこれからも続くところでして、膨れあがった事業に加えて被災された地域の自治体職員には大きな負担となっています。

被災地町村、監査で悲鳴 県内、業務量増も職員不足(岩手日報(2015/11/21))

 自治体の財務や事務事業の在り方をチェックする監査委員制度をめぐり、県内町村の体制確保が課題となっている。20日には花巻市内で町村監査委員の研修会が開かれ、業務量に対し職員配置が不足している現状に悲鳴が上がった。補助金が不適切に使われた山田町の「大雪りばぁねっと。」問題などもあり、再発防止に向け監査の重要性が増す一方、行革で職員削減が進み、沿岸被災地は復興業務にも追われるなど対応に苦慮している。

 町村の監査委員は通常2人で、事務局の職員が業務を支えている。しかし県町村監査委員協議会によると、専任職員を置く市部と異なり、町村は議会や農業委員会、選管など複数の事務局を兼ねる場合が多い。

 田野畑村は監査委員の事務局が議会など計4事務局を兼ねており、大沢喜男事務局長は「行財政改革で職員数が減っている。手が回らないほど忙しい時期もある」と明かす。大槌町は2015年度当初予算が震災前年の約9倍、506億円に激増。以前は議会と兼ねていた監査委員の事務局を13年度に独立させ、職員体制も1人増の3人に拡充したが、激務は十分には解消されていない。平野公三町長は「体制充実の必要性は感じるが、まずは監査に至る前段で事務の在り方を整理したい」と配置以外の負担軽減策も探る。

 監査委員の権限は、07年に制定された財政健全化法に伴い健全化比率の審査が課されるなど拡大傾向にある。「大雪」問題では自治体の事務事業の管理体制があらためて問われ、監査委員が果たすべき役割も大きい。

ということで、予算額が増えるというのは単に使えるお金が増えるだけではなくて、その後始末を含めて膨大な作業量を伴うわけですね。私も下っ端役人としてそうした現場におりますので、「官僚とか役人とかは予算をぶんどってくることが仕事だ」とかいうステロタイプな批判を目にすると、「いやそんなことしたらまた仕事が増えるんだけど…」というのが正直な感想でして、被災された地域の自治体で起きていることはまさにそういうことなんですが、まあそういうステロタイプな批判をする方々にはそもそもそんな事態は想像もつかないのでしょうと遠い目をするばかりです。

2015年12月06日 (日) | Edit |
いろいろとネタにしたいことはありつつも業務繁忙で更新できませんでしたが、とりあえず拙ブログで何度も取り上げている緊急雇用創出事業についての会計検査院による「平成26年度決算検査報告」が公表されましたので、概観してみます。

まずは、緊急雇用創出事業の事業費を私的に流用したとして業務上横領の罪に問われた岩手県山田町での事件については、検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた「不当事項」として取り上げられています。

 基金事業では、都道府県等が企画した事業を民間企業等へ委託し、当該民間企業等(以下「受託者」という。)が公募により失業者を雇い入れて行う事業(以下「委託事業」という。)等が実施されている。都道府県は、自らが委託事業を実施する場合は、委託費相当額をそれぞれの基金から取り崩して受託者に支払い、管内の市町村等が委託事業等を実施する場合は、当該市町村等に対して基金を財源とした補助金(補助率10分の10)を交付している。
 実施要領等によれば、委託費の対象経費は、受託者に新規に雇用された者に係る賃金等の人件費、受託者に既に雇用されている者(以下「既存雇用者」という。)が基金事業に従事した分に係る賃金等の人件費及び基金事業の実施に必要なその他の経費とされている。そして、事業実施の要件は、新規に雇用する予定の労働者の募集に当たり、より多くの求職者に対して当該事業への応募の機会を提供する観点から、公共職業安定所への求人申込みなどにより公募を図ることなどとされている。
 本院が、10都道県において、10都道県及びこれらの都道県から補助金の交付を受けた管内の132市区町村を対象に会計実地検査を行った結果、3道県(注1)及び23市区町村(注2)が実施した基金事業において、受託者等が、基金事業の対象とならない経費を計上したり、新規に雇用する失業者の募集に当たり公募を行っていなかったりなどしていたため、計222,016,588円(交付金相当額同額)が、10都道県(注3)に造成されたそれぞれの基金から過大に取り崩されて、補助の目的外に使用されていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、上記の10都道県及び23市区町村において市区町村又は受託者から提出された委託事業に係る実績報告書等の内容の調査確認が十分でなかったこと、10都道県において23市区町村に対する指導監督が十分でなかったこと、厚生労働省において10都道県に対する指導監督が十分でなかったことなどによると認められる
(注1)3道県 北海道、山梨、広島両県
(注2)23市区町村 函館、盛岡、花巻、一関、釜石、二戸、奥州、鶴岡、高岡、魚津、津、防府、高松、三豊各市、豊島区、上川郡東川、白老郡白老、下閉伊郡山田、九戸郡洋野、西八代郡市川三郷、南巨摩郡富士川、安芸郡府中各町、南都留郡鳴沢村
(注3)10都道県 東京都、北海道、岩手、山形、富山、山梨、三重、広島、山口、香川各県

〈事例〉
 岩手県下閉伊郡山田町は、緊急雇用創出基金を財源とした委託事業として、町内の物資センターの運営や防犯パトロールを行うことなどを内容とした「山田町災害復興支援事業」を平成23年度に430,593,050円で、「復興やまだ応援事業」を24年度に791,417,000円でそれぞれ特定非営利活動法人大雪りばぁねっと(以下「法人」という。)に委託していた。そして、23年度事業については、同町は、法人から実績報告書の提出を受けて、委託費を430,486,582円とし、岩手県は同町に対して、緊急雇用創出基金を財源として同額の補助金を交付していた。
 また、24年度事業については、事業実施期間の途中で継続が困難となったことから、同町は法人との契約の一部を解除し、法人から実績報告書の提出を受け、委託費を363,208,574円と確定し、同県は、このうち経費の内容が明らかでなく、事業との関連を確認できなかった支出等を控除し、289,423,261円が補助の対象となるとして、同町に対して、緊急雇用創出基金を財源として同額の補助金を交付していた。
 そして、24年度事業において経費の内容が明らかでなく、事業との関連を確認できなかった支出等が見受けられたことから、同県は23年度事業についても、委託費の再調査を行い、23年度事業の補助金の額を262,996,133円と修正していた。
 そこで、本院においても、実績報告書等を基に検査したところ、法人は、主に北海道旭川市内の法人の事務所において、既存雇用者2名が、本件委託事業に係る事務を専従で担当していたとして、事業期間内に当該2名に対して支払われた人件費23年度計7,779,000円、24年度計6,879,000円の全額を本件委託事業に要した経費として実績報告書に計上していた。
 しかし、法人において、当該2名に係る業務日誌を作成していなかったことから、法人が同町へ提出した本件委託事業に係る出張の復命書等により当該2名が本件委託事業に係る事務に従事した日数を確認して、人件費を算定したところ、23年度2,034,369円、24年度2,411,000円となった。したがって、前記の実績報告書への計上額との差額23年度5,744,631円、24年度4,468,000円、計10,212,631円は、本件委託事業の対象経費とは認められない。
 また、法人は、本件委託事業の実施に必要な経費とは認められない打上げ花火の購入費等2,930,527円を本件委託事業の対象経費として計上していた。
 したがって、本件委託事業の対象経費とは認められない計13,143,158円(交付金相当額同額)が岩手県から同町に交付される補助金として緊急雇用創出基金から過大に取り崩され、補助の目的外に使用されていた。
 なお、本件については、平成25年度決算検査報告の「国民の関心の高い事項等に関する検査状況」において、検査を実施している旨を記述した(平成25年度決算検査報告1162ページ参照)。

(単位:千円)

部局等補助事業者
(事業主体)
補助事業年度基金造成額
・左に対する
交付金交付額
不当と認める
基金使用額
・交付金相当額
厚生労働省本省北海道緊急雇用創出基金
ふるさと基金
20~25
20
53,490,000
8,210,000
6,354
4,424
岩手県緊急雇用創出基金20~2595,284,53756,929
山形県20~2526,977,00011,788
東京都20~2561,236,00027,684
富山県20~2520,007,6004,719
山梨県20~2516,691,80080,548
三重県20~2525,585,0004,386
広島県20~2524,916,30019,285
山口県20~2516,105,1001,579
香川県20~2511,755,0004,315
360,258,737222,016

緊急雇用創出事業臨時特例交付金及びふるさと雇用再生特別交付金により造成した基金を活用して実施した事業において基金を補助の目的外に使用していたもの(PDF形式:147KB)
ホーム > 検査結果 > 最新の検査報告 > 平成26年度決算検査報告 > 第3章第1節 省庁別の検査結果 > 厚生労働省
※ 以下、強調は引用者による。表が大きいので数値が重複する項等を省略してあります。

…なんで会計検査院のpdfはコピペしようとすると文字化けするのか、そのために手打ちで上記を引用するための労力は無駄で不当なものではないのかと小一時間問い詰めたいところですが、まあ概観するといいながらほぼ全部引用してしまいました(ということでタイポがありましたらご容赦ください)。
(付記)緊急雇用創出事業臨時特例交付金及びふるさと雇用再生特別交付金により造成した基金を活用して実施した事業において基金を補助の目的外に使用(PDF形式:89KB)こちらの概要版ではコピペできませんでしたが、本文ははコピペができましたのでそちらに差し替えています。「概要」を見たのが間違いだったとは…

引用部分の最後の文は、検査自体は平成26年度に実施していた(25年度の決算なので26年度に検査します)ということですが、まあものの見事に「そもそも論からすれば、不正受給とか虚偽申請ってのはそういうことをした側がその責を問われるはずです。しかし、会計検査院とかオンブズマンの方々はそれを見逃したとか適切に処理しなかったとして役所の責任を追及され」ていらっしゃいますね。まあ、会計検査院の目的は役所の不正を暴くことですから、会計検査院の役人はその職務を粛々と果たしているわけですが。

ということで、事業者に対しては司法が裁くことになるわけでして、この旭川市内に居住して勤務の実態がないのに人件費の支払いを受けていた2名と代表者に対する裁判は着々と進んでいます。

<山田NPO横領>元代表の母に実刑(河北新報 2015年02月25日水曜日)

 岩手県山田町から緊急雇用創出事業を受託したNPO法人「大雪りばぁねっと。」(北海道旭川市、破産手続き中)の横領事件で、働かずに給与を受け取ったとして業務上横領罪に問われた元代表理事の母、無職岡田かおり被告(54)=旭川市=に盛岡地裁は24日、懲役2年4月(求刑懲役3年6月)の判決を言い渡した。
 岡田健彦裁判長は、かおり被告の出勤簿が、他の従業員と別扱いで後から作成された経緯を指摘。「問題を隠蔽(いんぺい)しようとしたことが推認される」と述べた。
 給与の原資が事業費であったことの認識の有無に関しては「被災地域で活動する大雪の資金源について、何も知らないのは常識的に考えて不自然」と判断した。
 判決によると、かおり被告は2011年12月~12年11月、元代表理事の岡田栄悟被告(36)=旭川市、業務上横領罪で公判中=らと共謀、勤務実態がないのに事業費から計約466万円の給与を受け取り、横領した。

このうち母親は控訴しましたが、高裁で棄却されて確定しています。
NPO法人元代表の母、二審も実刑 岩手の震災事業費横領(産経ニュース 2015.7.9 12:39)
代表者とその妻への地裁判決は来年1月とのこと。

NPO元代表に懲役8年求刑 - NHK岩手県のニュース 11月02日 18時59分(リンク切れ)

東日本大震災後に山田町で活動していたNPO法人の元代表理事らが町から委託された被災者の雇用を支援する事業の補助金を私的に使ったとして、業務上横領などの罪に問われている裁判で、検察は「復興のための公的資金を私的に流用したことは極めて悪質だ」などとして元代表理事に懲役8年を求刑しました。
北海道旭川市のNPO法人、「大雪りばぁねっと。」の元代表理事、岡田栄悟被告(36)は山田町から委託を受けた被災者の雇用を支援する事業で、補助金あわせて5300万円あまりを私的に使ったとして業務上横領などの罪に問われています。
2日は盛岡地方裁判所で、岡田元代表と、同じく業務上横領の罪に問われている妻の光世被告(34)の裁判が開かれました。
この中で、検察は「被害額が高額であり、復興のための公的資金を私的に流用したことは極めて悪質で身勝手きわまりない行為だ。社会を騒然とさせた行為に対する刑事責任は重い」と指摘しました

その上で、岡田元代表に懲役8年、光世被告に懲役3年6か月を、それぞれ求刑しました。
一方、弁護側は「NPO法人の活動の中で適正さを疑われる形でなされた支出もあったかもしれない」としましたが、いずれの行為も町からの委託を受けた業務の範囲で行われており、法律上の業務上横領にはあたらないなどとして無罪を主張しました。
最後に岡田元代表が意見陳述し、「この復興事業は私利私欲のためにやったものではない。協力してくれた人たちの期待に応えられなくて大変申し訳なく思っています」と述べました
判決は、来年1月19日に言い渡されます。

ということで、裁判では母親の466万円と代表らへの5,300万円を合わせて5,800万円程度の横領が問われていまして、会計検査院が本件委託事業に関して目的外に使用されていたとした額は1,300万円程度、岩手県全体でも5,900万円弱となっていて裁判と微妙に異なっているように思いますが、まあ端数の関係かもしれません。でまあ、最後に引用した記事で代表者が「この復興事業は私利私欲のためにやったものではない」と言い張るところに、改めて「当事者意識の欠如」を感じます。手段が目的化することはもちろん本末転倒ですが、特別会計と特定財源の違いも分からないような目的さえ正しければ手続きなんてどうにでもなるという議論は、その事業の正当性を失わせてしまい、結局事後的に不当なものとしてその実施主体が責任を取らされることになるわけですね。会計検査院の結論は出ましたので、後は司法の判断を待つことにします。

ちなみに、これだけ世間を騒がせた割に(?)岩手県ではなく、山梨県が不当とされた額が最多となっておりまして、地元の地方版ではその理由が報じられているようです。

会計検査院:決算検査報告 緊急雇用、不適正8054万円 全国最多 県、指摘の15件返還へ /山梨 毎日新聞 2015年11月07日 地方版

 会計検査院が6日公表した2014年度の決算検査報告によると、県関係では失業対策の「緊急雇用創出基金事業」で要件に反した国の補助金交付や、農業関係で国の補助事業を受けて取得した財産の無断貸し付けなどが指摘された。同創出基金事業で不適正とされた額は約8054万円(8件)で全国で最も多額となった。県は検査院から自主返還するよう指導があった分を含め、約9891万円(15件)を返還する方針を明らかにした。【後藤豪、藤河匠】
(略)
 県労政雇用課によると、県が東京都八王子市の人材育成会社に委託した「ジョブカフェサテライト事業」(11、12年度)では、雇用期間を1年以内としている同事業の実施要綱に反し、同じ人を2年連続で雇っていた。検査院は「失業者を新規に雇用していない」などとして、計約1720万円の不正を指摘。同社関係者は毎日新聞の取材に「県の当時の担当者には確認を取った上で行った」と話した

 このほか、県農業振興公社が県から委託を受けた「耕作放棄地を活用した企業の農業参入推進事業」(11年度)では、雇用した38人中31人が失業者か否かを確認できる書類が不備だったという。検査院からは5071万円分が、国補助金の目的外使用と認定された。

うーむ、これは役所の担当者まで含めて制度の理解が足りなかったといえそうで、この記事による限りは「ずさん」と指摘されても仕方ないのではないかと思います。いやもちろん、この記事が何処まで実情を伝えているかわかりませんが、世間の耳目を集ようが集めまいが適切な手続きを経ない事業はその正当性を失ってしまうわけでして、これからの緊急時対応でも適切な対応が必要であることはいうまでもありません。

もう一つ拙ブログで取り上げているネタも検査対象となってしますが、長くなりましたのでエントリを分けます。