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2013年09月24日 (火) | Edit |
ここ最近のエントリでは、消費税率引き上げを巡る議論を取り上げる機会が多かったのですが、その一つの理由は、経済政策を巡る議論から人格やその個人の属する組織への攻撃という卑劣な行為に発展するかどうかを注視する必要があると考えるからです。そしてやはり、危惧していた事態に発展したようです。

正直なところ、そのブログへリンクするのも腹立たしいので、恐縮ですがjura03さんのエントリを引用させていただきます。

消費税上げをすすめる財務事務次官の写真を加工して、「指名手配書」をまわしているわけです、要するに。

いま、田中先生の Twitter を見るとこんなことを書いている。

https://twitter.com/hidetomitanaka/status/381448341621456897

繰り返すが、いまの日本で最も有効なのは木下康司財務省事務次官を批判すること。それが最も効果的。個人攻撃どんどんいこう! http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20130920#p1 … 「論」とかの批判もRTしまくるぞw

https://twitter.com/hidetomitanaka/status/381449130976899074

さて木下康司個人攻撃もバリバリやって、消費税増税がどんだけいまの不況下の日本に悪いかもいつもどおりにバリバリにやるぞw


なんで財務事務次官をネット経由で「個人攻撃」したら消費税上げが避けられるのか、ちゃんと説明してほしいんですが、多分そんな理屈はないでしょう。

扇動のための不当表示としての「リフレ派」 part128 「狂気の集団」と化したリフレ派とこれに支持を与えてきた人たち(2013-09-22)」(今日の雑談

田中氏の言動によってネット上の言論活動が封じられたという事例が発生したのは、たったの3年前です。その当時、dojinさんの「本件について田中氏の言動に問題があると感じているブログやツイッターをやっている方々は、田中氏やbewaad氏の政策的立場への賛否に係らず、はっきりとその旨を表明することが、第二のbewaad氏を生まない最善の道だろう」という呼びかけに意を決して、遺憾の意を表しましたが、今回もそれに匹敵する暴挙だと考えます。改めて、田中氏の言動には遺憾の意を表します。

まあ、私も5年前に元厚生事務次官が刺殺された際に多少過剰に反応してしまいましたので、今回の件も大事に発展しなければそれに越したことはありません。しかしだからといって、そのような行為を助長するような言動を不特定多数に向かって呼びかけるなどは、現代の社会的な規範からは大きく逸脱したものであり、批判しなければならないものだと考えます。

上記でリンクしたエントリのコメント欄で、

この事件の全容が早急に解明されることが望まれるのは当然ですが、一方でそういった個別の事件とは無関係に、利害関係が複雑に絡む制度を巡って、データや理論に基づくことなく、その利害関係者間の感情的なルサンチマンだけをさんざん募らせる言論があるならば、それがどんな立場からで、あるいは、どんな立場に対するものであったとしても、批判されてしかるべきものだと思います。

2008/11/23(日) 15:36:41 | URL | マシナリ #-[ 編集]

と書いておりましたが、田中氏はデータや理論に基づくと見せかけながら、そのデータや理論を恣意的に都合よく解釈している方であって、さらに、増税忌避という思考停止に陥っている方にとっては田中氏の議論はもっともらしく聞こえるのでしょうが、この方は事実をトンデモ論でコーティングされる方でもあります。まっつぁん曰く、「自分が個人的に気にくわない相手がいたり、そいつらがやっていることが気にくわなかったとき、冷静にスジを通して批判するのでなく、そいつは国や世界にとっての敵だぞ、そいつが国を滅ぼすぞ、と感情的にわめき立てることで、お手軽に批判対象を公共の敵に仕立て上げようとする、せこいトリック」を駆使していることでおなじみの奇書を再度取り上げるのも気が引けますが、この図がネットで拡散されているようなので取り上げておきます。

倉山塾では、拡散用にこんな図表も作っています。「どう考えても増税したら景気が悪くなって、税収が減るだろう」の図。

これと同じような図が本書の138ページに掲載されていまして(本書では1996年以降のみ)、消費税引き上げ後に所得税と法人税の税収が減少していることが鬼の首を取ったように書かれています。しかし、税制の現実をご存じの方にすれば噴飯物の議論ですが、過去の消費税アップの際は同時に法人税と所得税減税が行われていまして、差し引きしたネットでは減税になっているわけで、減税した税目の税収が減るのは当たり前なんですけど。詳しくは、「「増税」なんてなかった」で引用した論文やその参考文献をご覧ください。

ちょっとググればすぐにわかることでも自分の都合の悪いことは見ないことにして、同じデータから自分に都合のいい結論を導き出すような議論があることは仕方がないでしょうし、まあ広いネットの世界にはそういうダメな議論もあるだろうぐらいであればまだいいかもしれません。しかしこの方は自ら「リフレ派」を名乗って自説に反対する方には容赦のない罵詈雑言を浴びせかけ、さらに個人攻撃を先導する方でもあるわけで、悪質と言わざるを得ません。百歩譲って、そんな方がいるのも玉石混淆のネット社会だろうと割り切ることもできるかも知れませんが、であればこそ、その悪質な言論にこれまで賛同してきた、あるいは田中氏の説そのものに賛同するわけではないとしても、「リフレ派」であることを理由に「リフレーション政策以外は何を言ってもよい」と傍観してきた方には、その作為と不作為に対する批判を正面から受け止めていただきたいものです。

ここでhamachan先生のエントリを引き合いに出すのも恐縮ですが、bewaadさんの事件当時からあの界隈の方が何も変わっていないことが確認できます。

また、本ブログのコメント欄でかつて見られたように、「同じリフレ派だから」という卑小な仲間意識による正義感の鈍磨が、結果的にどのような事態を招くかという大変よい社会学の教材になったのではないかと思います。ねえ、稲葉先生。

卑劣な第3法則の効果(2010年7月21日 (水))」(hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳))

<コメント欄>
もちろん、bewaadさんに卑劣な中傷攻撃を加えている御当人はどうしようもないとして、その友人であろうと想像される人々の、この政治的リンチへの平然たる傍観ぶりは、彼らの人間性を疑わしめるものがありますね。かかる事態を目の当たりにすれば、かつてbewaadさんの文章によってリフレ政策に開眼したであろう多くの真っ当な人々をして、「りふれは」なるおぞましい集団から能う限り距離をとろうという行動以外の何ものをも生み出さないと思われるのですが、そういう懸念のかけらすら見当たらないという点に、正直言葉を失います。

しかし考えれば、こういう現象は、イデオロギー集団には繰り返し見られたことなのかも知れません。ある種の左翼集団において、外部に対する宣伝機能という意味で有意味であったはずの人々が、原理主義者によって日和見主義者だとか修正主義者だとかといった汚名を着せられ、十字架に磔にされて消えていった歴史は山のようにあるわけで、いま「りふれは」方面で生じている現象も、そのような知識社会学的な分析の好事例ということになるのでしょう。
投稿: hamachan | 2011年4月 7日 (木) 22時42分

いやまあ、今回も稲葉先生は上記の田中氏の悪質なtweetは華麗にスルーのようでして、私も言葉を失うほかありません。
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2013年09月16日 (月) | Edit |
ちょっと前回エントリのコメントで後回しになっておりましたが、先週の水曜日に震災から30か月が経過しました。拙ブログではこれまで、震災で時が止まってしまった感が強かったので通算の月数でカウントしておりましたが、30か月と書いてみるとさすがに2年半と書いた方が分かりやすいかもしれません。2年半という節目でもあったのでテレビでもそれなりに特集があったようですが、相変わらず業務が錯綜していてほとんどチェックできておりません。まあ、そもそも沿岸部へ行く機会も激減してしまって知り合いからの情報ぐらいが情報源となってしまっております。

そんなところでたまにTwitter方面を見ていたら、以前集団的労使関係について議論させていただいた金子先生が「応援職員さんのつぶやきによる大槌町の雇用状況について」という大変興味深いまとめを作成されていました。いろいろな論点が指摘されておりますが、趣旨としては、

まあこの先は、仕事の中で頑張って行く範疇になるのだが。今日の話の主旨としては、人口流入を阻害する住宅不足問題について話したかった。特に、一部報道では「仮設住宅を被災者以外に供用しないのは、自治体職員の怠慢」みたいな報道が平気でされているので、その部分の主張をしたかった。以上。
jin0210 2013-09-05 01:14:35

ということのようです。

実はこの点については、岩手県のホームページでも対策の必要性が指摘されておりまして、

2 課題
沿岸4地区の水産加工19事業者と労働力確保に向けた意見交換会を実施
【意見交換会での主な意見・課題】

1 地域内での労働力の掘り起こし
・ 採用しても長続きしない。就業意欲の高い求職者の確保が必要(宮古)
・ 企業見学会を実施し採用につながった。今後も実施すべき。(久慈)
・ 災害廃棄物処理完了による離職者の方々に水産加工業に来てもらえないか。(大船渡、宮古、久慈)
・ 労働者の水産加工現場に対するイメージアップを図ることが必要(宮古)
・ 商品開発により自社ブランドのイメージを向上させ、従業員の就業意欲の向上や求職者に関心を持ってもらうことが必要(宮古、久慈)
・ 緊急雇用創出事業を縮小してほしい。(人手が取られている。)(釜石)
2 地域外からの労働力の確保
・ 他地域から人材を確保しようにも住居が確保できない。また、転居費用もかかるので支援いただきたい。(釜石)
・ 外に対し労働力を募集していることをPRしてほしい。(釜石)
・ 地域での雇用が確保できるまでの間、外国人技能実習生の受入れ人数枠を時限的にでも緩和してほしい。(釜石、大船渡)
3 生産工程の改善・省力化
・ 生産性の高い業務に転換し、将来的には賃金体系等を見直す必要がある。(釜石)
・ 機械化、自動化するなど、省力化を進める必要がある。(釜石、大船渡)


平成25年度第1回岩手県経済・雇用対策本部会議を開催しました。(平成25年6月24日(月))」(岩手県

これらの意見に対する対策は「取組内容」にまとめられております。

1 地域内での労働力の掘り起こし
(1) 意欲ある求職者と企業とのマッチング支援
◇ 企業見学会の実施による企業と求職者とのマッチング支援(商工)
◇ ハローワーク等と連携した水産加工対象の面接会の開催(商工)
(2) 水産加工現場のイメージアップ
◇ 水産加工現場のイメージアップDVDによる求職者に対する就職への動機付け(ハローワーク、ジョブカフェ等で放映)(商工)
◇ 商品開発・販路拡大に対する支援
・三陸復興商品力プロジェクトの推進(商工)
・岩手県産㈱や大手量販店と連携した商談会やフェアの開催(商工・農林水)
・いわて農商工連携ファンド、いわて希望ファンドによる支援(商工)
・(新)水産加工高度衛生品質管理モノづくり支援事業(農林水)
(3) 緊急雇用創出事業の縮小
◇ 平成25年度計画雇用者数3,726人(H24実績8,713人) (商工)
うち沿岸地域は、H25計画雇用者数1,650人(24実績3,578人)

2 地域外からの労働力の確保
(1) 労働者の住居の確保
◇ (新)雇用促進住宅の活用を国等に要請(商工)
特に住居不足が深刻な釜石地区について、釜石市と協力し国等へ要請
※ 釜石市内に雇用促進住宅の空き戸数が100戸程度あり。
※ 中期的には、復興公営住宅の整備等に伴い住宅事情は改善の方向
(2) 労働力募集のPR
◇ (新)U・Ⅰターンフェア等における沿岸水産加工業の復興を担う人材の募集(商工)
(3) 外国人技能実習生の受入れ人数枠の緩和
◇ (検討)受入れ人数枠の緩和に係る課題等について検討を行う。
(水産加工連絡調整会議で検討(復興局、商工、農林水))

3 生産工程の改善・省力化
◇ トヨタ生産方式の導入促進(対象地域・事業者の拡大)(沿岸局)
【沿岸局がH25年度に重点的に取組を実施中】
◇ 商品開発・販路拡大に対する支援(上記1(2)参照)
(参考)市町村においても、省力化設備導入に対する補助事業を実施する
などの取組を行っている。

岩手県同資料

この資料は6月時点のものですので、すでにある程度は取組が進められているはずですが、それでも冒頭でまとめられているような実態であることには変わりがないのだろうと思います。ただし、県が実施する程度のソフト事業の対象範囲はせいぜい数社から多くて数十社でしょうから、一部の事業所でうまくいっているという成果はあるのかもしれません。まあ、その「うまくいっている」事業所というのは、「「がんばっている中小企業への支援を拡大すべき」とか「地元の地場産業を活性化させて地域振興」という主張は大変美しいものではありますが、ではその「がんばっている中小企業」とか「地元の地場産業」として具体的にどの企業を支援するのかという段階になると、上記のような行政との継続的な関係とか地域でのその事業(業種)の伝統的な位置づけがものをい」う状況で支援が行われている一部の事業所と考えていいでしょうから、その他の圧倒的多数の事業主にとっては「役所は何やってんだ!」となるのも無理はありません。

さらにいえば、このような「行政との継続的な関係とか地域でのその事業(業種)の伝統的な位置づけ」によって支援対象が決まる状況というのは、震災前から連綿と続いているものです。つまり、応援職員さんがつぶやかれたことというのは、震災で被災した地域に限らず、過疎が進んで市場が縮小している地域の事業所やそれを支援する行政が長年向き合ってきた現実です。被災地では、物理的に土地が使えなくなってしまって、事業所の立地はもちろん、そこで働く従業員の住居にも事欠く事態となったために、それがより加速化されて可視化されたものともいえます。上記でリンクしたエントリのとおり、「人口減少とか雇用の確保とかが政策課題の常連となって久しい現在、企業誘致とか中小企業支援に力を入れていない弱小自治体なんてありませんよね。首都圏の自治体からすればカルチャーショックかもしれませんが、地方の弱小自治体の商工担当(特に経営支援とか企業誘致とか)というのは地元の中小企業とズブズブの関係であって、むしろそうでなければ務まらないのが実態」ですから。

個人的には、国土交通省の所管とされ、自費で住宅を購入することが前提となっている日本の住宅政策の一つの帰結と考えるべきではないかと考えております。実は、震災の直前にも同じような事態が発生しています。国が雇用促進住宅を設置して住居の面から雇用の流動化を支えようとしたことが、バブル崩壊後にカイカク病が蔓延する中で「行政のムダ」と叩かれ、国から地元自治体への払い下げがほぼ完了したのが小泉構造改革の時期でした。その直後にリーマンショックが発生して仕事を失った方の一部が住居を失い、国は慌てて雇用促進住宅を提供しようとしたものの、すでに国の手を離れて自治体が所有していたため、老朽化した建物は改修もされず、入居できる物件が限られてしまいました。結局、旧雇用促進住宅に入居できた人数はごくわずかだったというのは、それほど昔の話ではありません。

今回も、東日本大震災という災害が発生して多くの方が住居を失ったにもかかわらず、住宅政策が国の社会保障として位置付けられることはなさそうです。拙ブログでは再三所得再分配の拡充の必要性を指摘しているつもりですが、単に既存の分野の手当を厚くするだけではなく、社会全体で支えるべき制度は何かという問いが必要なのではないかと改めて思うところです。

2013年09月16日 (月) | Edit |
2週間前のエントリのコメント欄で名無しの投資家さんと大変有意義な議論をさせていただいておりまして、コメントを引用するのがめんどいので、その中でいろいろと引用した文献などをこちらのエントリにまとめておきます(引用時の誤字脱字は修正しています)。

その前に、マクロ経済学者の方のブログで消費税引き上げについての視点を提示されていますので、一部項目だけピックアップさせていただきます。

1.Old Keynesian View
マクロ経済学を1980年以前に学んだ場合、あるいはそれ以降のマクロ経済学の「発展」を無駄だと考える場合、考えられるチャンネルは:消費税引き上げ→可処分所得減少→消費減少→総需要減少→総需要の減少に対応して生産縮小→景気の悪化、というものである。おそらくは消費税を上げれば日本経済の景気が悪化するといっている人のほとんどすべての人はこのチャンネルを念頭に置いているだろう。このモデルは一期間モデルなので、長期的影響は考慮されない。
2.RBC View
(略)ちなみに、インセンティブという観点からすると、特定のものについて税率を下げるような政策はとるべきでないと思う。低所得者の方が買いがちなものの税率を下げて再配分効果を生み出すという観点は理解できるが、再配分効果の正攻法はこういう間接的な方法でない直接的な所得再配分だと思う。もちろん政治的に難しいということがあるのかもしれない。再配分がそんなに気になるなら、消費税引き上げを所得再配分の強化とセットにすればよい。いろいろな品目別の税率を導入すると税制の効率性も損なわれる。
3. Modern OLG View
4.Redistribution View
(略)この、「消費税は再配分という観点から見て好ましくない」という考え方は、消費税が累進性の高い所得税に取って代わるという前提のもとで有効な議論な気がする。この点については3つコメントしたい。一つは、消費が現在少ない理由が若くて賃金がまだ低いというのであれば、将来この人は所得が上がるのだから、再配分を考える必要はない。言い換えれば、再配分政策を論じるときには、ライフサイクル全体を見た上で議論しなければならないと思う。二つ目は、消費税のようなインセンティブを阻害する効果が低い税制に置き換わることで、経済の構成員全体が、長期的には程度の差こそあれ恩恵をこうむる。三つ目は、上でも書いたが、もし、現時点での所得再配分の悪化が大きな問題なのであれば、消費税の引き上げと再配分の強化とうまく組み合わせればよい。
5.Borrowing Constraint View
6.Default Risk View
消費税引き上げに反対する人の中には、現在の消費税引き上げが将来の(所得)税の引き下げ、あるいは引き上げの回避、年金受給額の引き下げの回避、等のベネフィットを生み出すと考えられないのかもしれない。こういう長期的効果の計算はたくさんの仮定に依存するので難しい。こういう人を説得するためにちょっとでもできることは、例えば、現在消費税を引きあげると、例えば、将来の年金受給額の(回避不能な)引き下げがどのくらい食い止めることができるかを示したりすることではないだろうか(すでに行われているかもしれない)。
7.Business-Cycle View
人によって消費税の利点、あるいは欠点と考えるものとして、消費税の方が税基盤が安定している(景気変動に伴う動きが小さい)という点があげられる。景気が悪くなったときに税収が下がらないというのは、「自動安定化装置」としての役割が弱いということなので、景気の悪いときには減税・財政支出の拡大が好ましいと考える人にとっては、消費税のこのような特徴は好ましくない。反対に、景気が悪くなったときに税収が比較的下がらないということは、最近のヨーロッパのように景気が悪化したときに政府が債務返済問題に陥る可能性が低くなるということである。景気が悪いときに財政支出を増やす方が政治的に用意であるということを考えると、個人的には消費税の安定性は望ましいのではないかと思う。
8.Temporary Rise and Fall View
9.New-Keynesian View


Effects of Sales Tax Increase(Saturday, August 03, 2013)」(unrepresentative agent


2の軽減税率、4、6の所得再分配についての議論は拙ブログのスタンスとも共通するところがありますし、7の安定財源についての議論もしっくりくる説明がされていまして、個人的にはバランスの取れた議論ではないかと思います。これらの論点を踏まえて以下の引用をご覧いただくとわかりやすいかも知れません。

1 社会保障制度改革国民会議

消費税を段階的に10%に引き上げる税制改革関連法案及び子ども・子育て支援関連法案、年金関連法案の成立により、消費税収(国・地方、現行分の地方消費税を除く。)については、社会保障財源化されるとともに、消費税増収分の具体的な活用先として、子ども・子育て支援の拡充を図ること、年金分野においては、基礎年金の国庫負担割合を3 分の1 から2 分の1 に引き上げることのほか、低所得者に対する福祉的給付などの措置が講じられることとなった。

報告書 ~確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋~」pp.1-2(pdfではpp.5-6)
社会保障制度改革国民会議


2 社会保障・税一体改革とファンジビリティ

社会保障の充実・安定化と財政健全化の同時達成のため、消費税率を段階的に5%引き上げるなどの「税制抜本改革」を実施します。消費税率引上げによる増収分のうち、1%は社会保障の充実、4%は現在の社会保障制度の安定化の財源とします。

社会保障・税一体改革 明日の安心 社会保障と税の明日を考える」p.6
政府広報オンライン


財政健全化目標の達成 諸外国で最悪の財政状況から脱出「2015年に赤字半減、2020年に黒字化」日本発のマーケット危機を回避⇒消費税率を2015年10月に国・地方あわせて10%へと段階的に引上げ

説明会資料(平成24年4月26日 最新版)「社会保障・税一体改革について [PDFPDF (1.7MB)]」p.3
社会保障と税の一体改革


が……まず簡単な話としては、「学校作るから」と言ってお金を貸しても、相手はそのお金でミサイルを買ったりするかもしれない。まあこの程度なら簡単に見張れるし、対策もある。が、もうちょっと複雑な話がある。学校用の援助をしたら、途上国はちゃんと学校を作るかもしれない。でも援助してあげた分、自国の教育予算を減らして、その分を軍事費にまわすかもしれない。帳簿上は何も問題がない。援助のお金は、ちゃんと目的通りに使われている。でも全体としてみたら、援助のお金は結果的に軍事費の増加に寄与してしまうことになる。お金は使い回しが効くし流用もできる。これがファンジビリティだ。

 それをどう防ぐか? これはとっても頭の痛い問題だ。きっちりやろうとすると途上国の予算編成に口出しする内政干渉にもなってしまうし。それに途上国側だって、教育援助 10 億円あげたら文教予算がきっちり 10 億円減ってその分軍事費がきっちり 10 億円増えました、なんていうわかりやすいことにはならない。予算なんて他の事情でいくらも変わるんだし。「うちが教育援助するようになってから、どうもそちらの文教予算って頭打ち気味のような気がするんだけど~」と言ったところで、向こうは「いやわが国がこーぞー改革なるものをやって無駄をなくした結果でして」といくらでも言い抜けはできるし、ファンジビリティが本当にあるのかないのか、という話すら、きっちりと証明するのはなかなか難しい。

山形浩生「ファンジビリティと給油反対論のあほらしさ(『Voice』2007 年 12 月 pp.112-3)」(YAMAGATA Hiroo Official Japanese Page


3 プライマリーバランス改善を通じた財政再建

 PB(引用注:プライマリーバランス)を均衡させることは、この「債務残高GDP比」を一定に保つ,すなわち,経済規模(=GDP)に対する債務残高の割合を一定に保つことを目指すものといえる.たとえ,債務残高が利払費分だけ増大したとしても,名目GDP成長率(以下,「成長率」)が債務残高の利子率と等しければ,「債務残高GDP比」は一定に保たれる.したがって,PB均衡の達成は,財政の中長期的な持続可能性を考える際に,重要な意味を持ってくる.
 ただし,PBの均衡は,あくまで財政健全化に向けた一里塚に過ぎない.債務残高が膨大な水準にある現状では,金利上昇による財政悪化のリスクは大きく,中長期的にはこの「債務残高GDP比」を安定的に低下させていく必要がある.そのためには,一定の「PB黒字(対名目GDP比)」が必要となるが,その額は,下の式(引用注:式は引用省略)にもあるとおり,「債務残高GDP比」に「長期金利と名目GDP成長率の差」を乗じたもの以上でなければならない.例えば,「債務残高DGP比」が150%,長期金利が3%の場合,必要なPB黒字額は0%以上となるが,長期金利が4%,成長率が3%の場合,必要なPB黒字額は1.5%以上(=(4%ー3%)×150%)ととなる.このように,必要なPB黒字額は,債務残高GDP比の規模のみならず,長期金利や成長率の大きさにも影響されるのである.
p.58

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4 SNAにおける社会保障

 社会保障の負担と給付の問題は,一国全体では相殺されますが,個人の営みとしてみるとプラスとマイナスが表裏一体となっているのです。そうした仕組みをどう設計するかということは,人々の営みに直接影響を及ぼす大きな問題なのです。
p.271

 93SNAでは,消費概念の二元化が行われました。当該サービスの費用を誰が負担したかという点から考察した「最終消費支出」概念とともに,当該サービスによる便益を享受したのは誰かという側面に注目した「現実最終消費」概念が登場しました。
p.273

 しかしながら,昨今「少子高齢化社会」の到来を目前に控えて,(中略)「分配」をめぐって,さまざまな経済的・社会的問題が提起されており,このような問題に対して政府は「公平な負担」と「公平な享受」をめぐってきめ細かな制度設計を行う必要があるでしょう。ところが,そのための基礎資料がSNA統計(『国民経済計算年報』)から得られるかというと,答は「ノン」なのです。
p.274

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5 ミクロ経済学 対 マクロ経済学

 表6-2には,経済学でよく問われるいくつかの問題が示されている.左側にあるミクロ経済学の問題は,右側にあるマクロ経済学の問題と対になっている.これらを比較することで,ミクロ経済学とマクロ経済学の違いを感じることができる.
 ミクロ経済学は,個人や企業がどのように意思決定をするのかという問題に焦点を当てていることがわかるだろう.例えば,大学で新しい科目を設置すべきかどうかを決めるために,ミクロ経済学が利用される.教員の給料や教材費などを含めて費用がいくらかかるのか,それに対してどれほどの便益があるかを比較することで,新しい科目を設置するかどうかを決めることができる.それとは対照的に,マクロ経済学では,経済のあらゆる個人・企業の行動が互いに行動しあった結果,経済全体に関わる特定の経済効果がどのように生じるかという観点から,経済の相対的動向を考察する.例えば,ある特定の財・サービスの価格ではなく,経済全体の価格水準(物価水準)に関心を持ち,物価水準が前年に比べてどの程度上昇もしくは下降したかを気にかけるのがマクロ経済学だ.

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表6-2 ミクロ経済学の問題 対 マクロ経済学の問題
ミクロ経済学の問題マクロ経済学の問題
ビジネススクールに進学すべきか,それとも今すぐに就職すべきか.経済全体で,今年はどれだけの人が雇用されているか.
コロンビア大学の新卒MBAシュリー・カマヨがシティバンクから提示される給料を決める要因は何か.ある年に労働者に支払われる給与総額の水準を決める要因は何か.
大学が新たな科目を設置するための費用を決める要因は何か.経済全体の物価水準を決める要因は何か.
低所得家庭の子どもが大学に進学しやすくなるように,政府はどんな政策を実施すべきか.経済全体の雇用を成長を高めるために,政府はどんな政策を実施すべきか.
シティバンクが上海に支店を開設すべきか否かを決める要因は何か.アメリカと外国の間で行われる,財・サービスや金融資産の総取引水準を決める要因は何か.

pp.162-163
クルーグマンマクロ経済学クルーグマンマクロ経済学
(2009/03/20)
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6 マスグレイブの財政3機能論

 20世紀の偉大な財政学者の1人であるリチャード・マスグレーブ(Richard Musgrave)は,政府を三つの経済的機能を持つものと考えた.1番目は安定化機能であり,物価の安定と完全雇用の維持である.これをどのように達成するかは,マクロ経済学の主たる課題である.2番目の機能は配分機能であった.ここでは政府は,経済が資源を配分する介入するのである.この目的のために政府は,国防や教育のような財を購入することによって直接的に介入することもあるし,ある経済活動を刺激したりまた他の活動を抑制するために税金や補助金を用いて,間接的に行うこともある.3番目の機能である分配機能は,社会で生産された財を社会構成員間でどのように分配するかを問題にするものである.この機能は平等という問題,および平等と効率のトレードオフに関係する.公共経済学では,この三つのうち後の二つの機能に注目するのである.ただし,そうした問題は,規制の問題を取り扱うような他の経済学分野でも生じるものである.
 今日では,三つの機能の面で政府活動は互いに絡み合っており,マスグレーブが想定したように明確に分割することはできないということが明らかになっている.しかしながら,「三つの機能」という見方は,政府が作っている無数の経済活動を考察するうえでは便宜的な方法を提供してくれる.
p.28

スティグリッツ公共経済学 第2版 (上)スティグリッツ公共経済学 第2版 (上)
(2003/10/24)
ジョセフ・E・スティグリッツ

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7 財政学と経済学の関係

財政学の流れのなかで,ドイツ財政学の伝統と,サミュエルソンらの新古典派総合の流れを合体させ,財政学の体系を示したのがマスグレイブ(R. A. Musgrave)である。柏井教授の次に専任教授となった橋本徹教授は,木下和夫教授を中心とする大阪大学財政学研究会の中心的メンバーとして,マスグレイブの一連の翻訳を手がけ,その大系をもとに自身の財政学研究を進めた。さらに,その次の専任教授となった山本栄一教授は,サミュエルソン = マスグレイブ流の公共財の理論を掘り下げ,それを軸に財政学研究を展開した(そうした研究成果の主要なものが有斐閣から出版されていることもあわせて強調しておきたい)。

私は1980年代に大学院で最適課税論に接することとなった。当時,創刊してほどない時期のJournal of Public Economics誌は,あたかも最適課税論の専門雑誌のようであった。そこでは課税という財政現象が,シンプルな応用ミクロ経済分析のモデルに取り込まれ,課税のあり方についての論理を導くことに成功している。この最適課税論と従来の財政学研究の再結合をねらったのが拙著『日本の税制改革』有斐閣,1997年であるが,いまとなってはそれが成功したなどとは思っていない。最適課税論の隆盛は,わが国では研究室にとどまらず,エコノミストが現実の政策決定の場で影響を与えるようになったことで,現実との接点をもった。そこでは,政治的な複雑怪奇なネゴシエーションの論理ではなく,経済学の「中立的な」論理で,政策運営を正しく導こうという高揚感が漂っている。

 財政学研究が政策決定の場にストレートに影響を与えるようになったことで,応用ミクロ経済学において前提とされている市場メカニズムが,現実の市場にどこまで期待できるかを突き詰めて考える必要性が増した。その点を怠って安易にスキップすると,応用ミクロ経済学流の論理展開は,結果的に市場主義という一種のイデオロギーとなって一人歩きを始めるリスクがある。

 2010年代の状況から近年の流れを日本の政治状況に照らして振り返ると,経済学と財政学の関係はいまやむしろ近くなりすぎて,財政学の問題意識は経済学に飲み込まれ,埋没した感がある。現代におけるバランス感覚は,かつてとは逆に経済学と財政学の適切な距離感を見いだして,そこに社会学的な要素を持ち込むことではないか。その結果,エレガントな理論分析は難しくなるとしても,それはやむを得ない代償である。

小西砂千夫(こにし・さちお,関西学院大学大学院経済学研究科・人間福祉学部教授)「著者より:『市場と向き合う地方債』 「書斎の窓」に掲載
有斐閣書籍編集第2部



2013年09月01日 (日) | Edit |
これは今日中に書いておかなければならないので、簡単にメモ書き。

被災地が舞台となった「あまちゃん」は、始まって1か月くらいは「アキの職業選択やこれから描かれる震災も含めて、久しぶりに見逃せない朝ドラ」でしたが、ドラマも残り1か月となってアキは映画の主演デビューを果たすまでのアイドルとなってしまいました。そして明日からは、そのデビュー目前で発生した震災が描かれるとのことで、残り1か月のドラマの展開についてはいろいろな憶測が飛び交っているようです。

正直なところ、沿岸から離れた内陸部にいる私ですら震災について思い起こすのは精神的に辛いものがあります。思えばこれまでに「潮騒のメモリー」の歌詞とか大吉さんのディーゼル車に対する思い入れとか、いろいろな伏線が描かれていますので、これまで楽しませてくれたクドカンを信じて明日からの展開を直視していきたいと思います。

(追記)
先週一週間は残業続きもあって週末にまとめて見てみましたが、震災で被災された当事者ではなくその傍観者(言葉が適切ではないかもしれませんが)の視点で震災が表現されていて、震災後の状況はほとんど描かれていませんでした。そのことでホッとした一面もありますが、私も被災地に隣接する内陸部で何も状況が分からないまま、復旧や復興という言葉の意味もよくわからないまま過ごしていた震災後の気持ちを思いだして複雑な気分になりました。ネットではこちらのエントリが適切に指摘されていると思います。

そして、こういった一連の非日常を日常に戻そうとクールになっている登場人物の描写は、一瞬コケティッシュに見えて、その実、視聴者に生々しい記憶を再現させる。つまり、あのとき、あなたの精神状態はどうだったのか?という「問いかけ」だ。ひたすら自らを日常に引き戻そうとしてはいなかっただろうか?そして、そういった精神の混乱をまざまざと再現する演出がこの133話だ。つまり僕らはこの映像の中からメディア的に使い古されたホットな震災を見るのではなく、描かれた「日常の中の非日常」を見ることによって、かえって自分があの時どうしていたのか、どういう精神状態になったのかについて想いをめぐらさせられることになる。そう、今度は視聴者の方がクールになって情報を補填し始める。小野寺家族のネットでの安否確認、電話は繋がらずメールが繋がったという状況は、そういったあの時の精神状態に視聴者を引き戻す小ネタだ。ようするに、この演出は、「作品」とこれを見ている「視聴者」が共同作業であの日、あの時のことを再現するような(しかも視聴者それぞれがそれぞれの経験に基づいて)仕組みになっているのだ。

あまちゃん133話、クドカンの震災表現は秀逸(2013/9/3(火) 午後 1:27)」(勝手にメディア社会論

拙ブログの震災直後のエントリを見ても「生活水準」を取り戻すというようなことを何度も繰り返していました。もう少しで2年半が経過する被災地では、すでに「非日常が日常」となっていて、「日常を取り戻す」というのは、半年を過ぎたころには元に戻ることはできないことが分かっていての「あがき」だったのかもしれません。これから「元に戻らない」あまちゃんの姿を楽しみに見ていきたいと思います。

2013年09月01日 (日) | Edit |
案の定集中点検の人選について「官僚の振り付けだ」とかおっしゃる方々がネット界隈で散見されますが、ではどんな人選なら「官僚の振り付け」ではない「正しい」人選なのかといえば、いろいろな立場の方から(自らの立場に沿うような)一定の志向性を持った方々のリストが挙げられそうで、結局その間を取れば今回の人選(に近い形に)に落ち着くんじゃないかと勝手に妄想しております。

で、今回の人選でいえば、社会保障制度改革国民会議会長として報告書を提出された清家篤先生を除けば、宮本太郎先生(今年中央大に移られたんですね)の資料が個人的な考えに一番近かったと思います。経済学者の先生方の提出資料は経済成長か財政再建かという二者択一になっていて、経済学の範疇での議論の限界が現れていたのではないかと思うところです。

その他の人選で興味深かったのは、黒川さんのエントリから引用させていただいている介護事業者の方の意見でして、一般社団法人全国介護事業者協議会の馬袋秀男理事長の提出資料から引用させていただきます。

Ⅱ.基盤整備のための財源の確保
【資料④および⑤参照】
○2025(平成37)年度に向けて、介護関連の給付費は現状の8.4兆円から19.8兆円へ2倍以上の増加が見込まれる。
○これまでの国民会議の議論においては、上述のような介護分野を含む社会保障制度の安定・充実に向けた財政的な措置として、消費税増税等による増収分を活用するとされている。
仮に来年4月予定の消費税率引き上げの延期等が行われた場合、直近では来年度中に議論される平成27年度介護酬改定への影響が懸念され、介護報酬改定は3年に1度しか行われないことから、サービス提供体制や人材確保といった基盤整備などに遅れが生じる恐れがある。
○税率の問題に関しては、安定財源の確保の先送りが医療・介護分野での改革の遅れにつながることをご理解の上、景気動向に与える動向なども踏まえつつ、慎重なご判断をいただきたい。

「(7)馬袋 秀男 「民間事業者の質を高める」全国介護事業者協議会理事長 提出資料(PDF形式:1827KB)
今後の経済財政動向等についての集中点検会合 第6回 平成25年8月30日)

こうした声が「景気回復で税収が増えれば財政再建は必要ない」とか「成長戦略で景気回復すれば(以下同文)」とかおっしゃる方の耳に届くことはないのでしょうけれども、税収で労働環境を左右される現実に直面しているような公的サービスの現場にいる者としては、税収が増えただけで歳出の構造が変わらないのであれば、自分の労働環境が改善が期待できるはずがありません。重ね重ねアベノミクスと消費増税が両立して歳出構造が変わるよう「このまま景気回復が本格化することを祈るばかり」ですね。

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