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2011年04月24日 (日) | Edit |
ブログを更新している暇があるのかといわれそうですが、その時点で見聞きしたことや考えたことをメモしておくということでご容赦いただければと思います。

1 「雇用創出」という打ち出の小槌


4月21日に開催された「被災者等就労支援・雇用創出推進会議」の第4回会議では、このような資料が提出されたとのこと。

「日本はひとつ」しごとプロジェクト・フェーズ1
主な進捗状況

1.復旧事業等による確実な雇用創出

(1)復旧事業の推進

・応急仮設住宅は、143地区1万2,662戸が着工済み、45地区3,581戸が着工予定(4月20日現在)。
・宮城県内の3地区(4月19日現在)で、排水機場の応急復旧と併せて農業用排水路のがれき除去工事に着手。
・航路や泊地等のがれきの除去、岸壁・臨港道路の補修等応急工事に着手。航路・泊地のがれき等の撤去は、29漁港で着工(4月12日現在)。
・被災地での損壊家屋等の処理については、市町村による仮置き場の確保が進められており、ほとんどの市町村では災害廃棄物の仮置き場への搬入が行われている。
・陸海空にわたる緊急輸送路の確保等に全力をあげてきたところ。引き続き、道路、港湾、空港、鉄道、河川等の施設の復旧事業を継続。

(2)重点分野雇用創造事業と緊急雇用創出事業の拡充

・岩手県において、県と市町村の事業で5,000人を雇用する計画(県で450人、市町村で3,500人、民間企業・団体で1,050人)。うち、県の臨時職員として雇用する120人分については、4月7日より順次ハローワークで募集開始。
・宮城県において、県と市町村が臨時職員等として4,000人を雇用する計画。5月から順次募集開始する予定。
・福島県において、沿岸部の13市町村で、計600人を臨時職員等として雇用する計画。4月14日より順次ハローワーク等で募集開始。
・その他の道府県においても、基金を活用し、約1,600人の雇用を計画。
4月20日現在、把握している範囲で合計11,200人の雇用が創出される見込み

資料2 進捗状況概要(フェーズ1)(PDF:309KB)」(被災者等就労支援・雇用創出推進会議 第4回会議(平成23年4月21日)

※ 以下、強調は引用者による。


CFWの取組について取り上げておきながらこういうのも何ですが、これを雇用創出と呼ぶことに大変な違和感があります。というより、そもそも「雇用創出」という言葉自体に違和感があるのですが、法的には使用者と労働者が労務提供と賃金の支払いについての契約を締結した上で指揮命令関係を構築することが雇用契約であって、その前提として必要とされる労務がなければなりません。それに応じて支払うべき賃金が用意されるのであって、まずはじめに賃金があって必要とされる労務は後から決まるというのは、単なる労務需要の創出というべきではないかと思います。

ケインズが指摘した有効需要は、確かにそうした財政的な裏づけのある需要によって雇用を生み出さなければならないというものではありましたが、「お金を出したから雇用創出」というほど単純なものではないこともケインズは認識していたのではないでしょうか。被災地の現場でも、「お金だけもらったところで、臨時職員を募集して採用面接をして日々の労務を労災が起きないように管理して賃金の支払いまでを管理するという実務を、災害復旧に追われる中でどうやってこなしたらいいのか」という声が上がっていると聞きます。要は、お金をもらってからの方が遙かに大変なわけです。

雇用創出といっても、あくまで復旧作業に携わるための短期的な雇用関係にしかならないわけですから、そこで経験を積んで次の仕事につなげるというキャリア形成効果はほとんど見込むことができません。ということは、一般の会社員や公務員のように、職員自らが自立的に職務を遂行するというよりは、あくまで上意下達の指揮命令下で短期的な労務に当たることがその任となります。その面でも、臨時職員の労務管理を担当する地元自治体職員の負担が大きくなることが予想されます。

私が復興財源の議論に徒労感を覚えるのは、こうした現場の実務についての議論がなおざりにされて、とにかく経済に影響を与えなければ財源さえ確保できれば良いという議論が先行してしまうように感じるからです。復興財源をどのように確保するかによって経済にどのような影響があるのかは専門家の議論にお譲りしますが、自らも被災しながら復旧業務に当たっている現場の職員にさらなる負担を強いておきながら、「復旧のために雇用を創出した」と胸を張るのは控えていただきたいものです。

ついでながら、特に経験のない被災者が従事できる復旧作業の範囲は、瓦礫の撤去や遺留品の捜索、家屋の掃除などに限られますが、これらの作業にはボランティアの方が従事されることも多く、同じ労務に有償・無償の違いが生じています。その一方で、仮設住宅の建設や重機による廃棄物の撤去・処理は専門業者でなければできないため、被災地域以外の地域の業者がその作業に当たることとなり、結局地元被災者を雇用するというCFW的な枠組みはかなり限定した形でしか実現できそうにありません。

また、地方自治体が任用する臨時職員という制度の中では、例えば午前中だけ仕事をして、午後は自分の遺留品を探しに行くような「部分労働」をしたり、自分の事業所の再建に向けた業務を行う「二重労働」をすることが原則として認められないため、被災者のニーズに合った業務内容とするための手続がきわめて煩雑になります。財源を確保して「雇用創出」だといわれたところで、昨今の行革によるムダ削減のかけ声の下に減らされた正規職員が増えるでもなく、こうしたマンパワーを要する問題は解決されないわけです。短期の緊急的な労務需要に対応する人員を確保することが難しいという日本型雇用慣行の問題はありますが、公務員を含む「景気以外の公共財」について議論が深まることが望まれます。

この点については、日本版CFWの提唱者である永松先生が、「高齢者や障害者の人たちの雇用、あるいは賃金の問題などもあると思いますが、どのようにお考えですか。」と問われて、

永松 そこは労働問題の整理が必要です。いわゆる就業弱者の課題も含めて、従来から労働市場が内在していた問題や課題まで解決する「魔法のプロジェクト」ではありません。CFWは、今の労働市場で働いている人たちの仕事を継続させていくための緊急的措置であり、ここで既存の労働問題の解決をすべて持ち込んでしまえば「実行」が遅れます。冷静に分けて考え、別の枠組みで改善に向かうべく工夫を凝らす必要があります。

2011年4月22日 関西大学社会安全学部准教授 永松 伸吾さん(下) 働いてお金を得ることが尊厳の回復」(アドバンスニュース


と答えているとおり、CFWの取組で解決できるのは、被災地の雇用問題の一部に過ぎないという点をきちんと踏まえた対策が必要ではないかと思います。

2 平時の支援者への批判

上記のようなギリギリの状況で、最低限の通常業務をこなしつつ復旧業務に当たっているのが自治体職員をはじめとする「平時のプロフェッショナル」なわけですが、そうした通常業務をこなしていることに対する批判が増えています。だいぶ前のツイートですが、

@daichi daichi
昨日のクロ現観てて日本やべぇ、って思ったのは、徹夜続きで疲弊しまくっている石巻市役所のお偉いさんたちに精神科の専門家が「休ませてリラックスさせないと職員がパンクする」と言うと、「職員が家に帰ると世間にあれこれ言われる」「この緊急時に休めと言えない」ってなって平行線になるシーン。
Apr1日 YoruFukurouから
kenichi_kusと他100+人がリツイート

http://twitter.com/#!/daichi/status/53696442707095554


実をいうと、震災直後からこうした批判は当方の自治体にも寄せられていたのですが、支援したいというご厚意に水を差さないよう拙ブログでは取り上げておりませんでした。実際には、寄せられる電話や来庁される方のごく一部ではありますが、震災直後で情報がない時点から「情報がなかったら車でも歩いてでも現地に行け!」とか「近くの自治体がこんな目に遭っているのに役所で仕事してる公務員なんか死んでしまえ!」とか「うちに帰って寝る暇があったら避難所で寝てみろ!」という趣旨の批判があったり、最近は「復旧・復興の取組が遅いから、○○をやれ!」とか「××という事業はムダだから、それを止めて財源を確保しろ!」とか「こんなちんたらした公務員なんかクビにしろ!」という趣旨のものに変わってきております。

言い訳がましいとは思いますが、震災直後にはガソリンが不足していたため、車で2時間ほどかかる被災地まで行ける状態ではありませんでしたし、公共交通機関がストップして自宅に足止めになった職員もいます。復旧・復興するためにも、現地のインフラが壊滅状態にあり、それを担う職員が忙殺されている状況もあって、復興に向けた具体的な取組が遅れていることも事実です。そうしたご指摘は真摯に受け止めなければならないと考えております。

その上でご理解いただきたいことは、お一人お一人のそうした提言に対応する時間と労力があれば、その時間で被災者支援に集中することができるということです。特に電凸などされたらひとたまりもありません。外部から見ていて歯がゆいこと、もどかしいこと、改善すべきことはあると思います。しかし、そうしたお一人お一人のご厚意が束になれば、自治体職員のリソースをそちらに集中しないと対応できなくなってしまいます。そうした実情をご理解いただき、現場の負担にならないよう、提言いただく際にはご配慮をお願いします。

3 行政不信が招く治安の悪化


上記2と関連して、被災地の治安の悪化は以前のエントリでも取り上げているところですが、行政に対する不信感が広がっていくと、それにつけ込んで一儲けしようという輩が増えてきます。震災直後にも、地元では見たことのない連中が現地に入って遺留品を漁っている姿の目撃情報がありました。真偽のほどは不明ですが、遺体から財布が抜き取られていたために身元確認が難航しているという話も聞いたことがあります。

国民生活センターでは、被災地だけではなくその他の地域でも悪徳商法が横行していることに注意喚起しています。

東日本大震災で被災された皆さまには心よりお見舞い申し上げます。

 大規模な震災の後には、災害に便乗した点検商法やかたり商法などの悪質商法が横行します。手口はさまざまであり、被災地だけでなく周辺の地域でも発生します。手口を知り、備えることが重要です。

 また、震災に伴うさまざまな行政情報や社告など、生活に役立つ情報が各機関から発信されています。これらの情報を知ることも震災後の対応に有用です。

震災に関する消費生活情報」(独立行政法人国民生活センター


国民生活センターでは消費者向けの情報しか掲載されていませんが、復旧・復興に向けた取組が始まりつつある現在では、再建に向けて資金調達をしようとする事業主に詐欺まがいの話をもちかける業者が入り込んでいるという情報もあります。再建のために手っ取り早く資金を調達したいという事情はあるといえ、正規の行政機関や金融機関を通さずにそのような話に乗ってしまうことは大変危険です。行政が復旧・復興の取組をできる限り早く進めることが大前提ではありますが、このようなときにこそ正規の機関を通じていただくようお願いします。

被災地での自衛隊、警察、消防、自治体職員の奮闘ぶりは拙ブログでも取り上げたとおりですが、前回取り上げた東電や経産省に対する不信感が拡散していくと、被災地でも行政に対する不信感が募っていきます。行政に対する不信感は、悪徳商法に対するガードを引き下げてしまう可能性があるのではないかと感じております。もともと行政不信が強いこの国で、いまさら行政を信用してくれといっても聞く耳を持ってもらえないようにも思いますが、そのことが少しでも被害を抑えることにつながるのなら、ここはひとまず行政を信用していただければと思います。

4 財源問題は使途と同時に議論するべき


前回エントリで、財源論がその支出先の議論に先行するべきではないと書きましたが、逆に言えば支出先が決まっているのであればどのように財源を調達すべきかを議論することができます。ごくおおざっぱに分けるのであれば、毀損された社会的インフラのようなストックについては公債により、社会保障のような再分配政策には増税により財源を調達するという原則をここでも遵守することが重要と考えます。この点は、前回エントリをご紹介いただいたhamachan先生のコメントや、そこで引用されている飯田先生の論説、さらには、後述の権丈先生の記事を拝見している限りでは、コンセンサスを得つつあるのではないかと思います。

長期的にその便益が償還される社会インフラであれば、公債を発行してストック財源を将来世代に負担してもらう理由もありますが、現状ですら貧弱なこの国の社会保障制度の中では、社会保障に必要なフロー財源については、まだまだ現役世代が負担し合う余地はあるはずです。その貧弱な社会保障制度を補完してきたのが日本的雇用慣行であるとしても、上記1のとおり、復旧・復興に伴い労働需要は一時的なものでしかありませんから、雇用によって補完される社会保障を通じた再分配には限界があります。また、公債を発行して市場から資金を調達するにしても、日銀が引き受けるにしても、政府や自治体はその公債保有先への利子配当を負担することになるわけで、国債を保有するのが資産を有するファンドであることを考えれば、公債を財源とする再分配政策は論理矛盾をはらむものと考えます。

2011年度は消費税1%分のつなぎ公債を発行して、その財源を基礎年金国庫負担2分の1の維持に充当し、2011年度予算で歳入計上された鉄運機構剰余金や財投・外為の剰余金等の一時金を「復興連帯基金」に組み入れることが考えられる。そして「復興連帯基金」のうち他税目による臨時的な財源の確保とあわせて2012年度から消費税率引上げを開始し、まずはその財源でつなぎ国債で埋めた基礎年金国庫負担2分の1維持のための財源を確保、同時にさらなる社会保障機能強化に取りかかる。

権丈善一慶應義塾大学商学部教授「震災復興と社会保障・税の一体改革両立を」『WEDGE』2011年5月号


増税反対論者には、権丈先生がこの記事で示してる財源調達の工程を理解した上で、上記の懸念材料に対するご回答を示していただきたいところです。
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2011年04月18日 (月) | Edit |
災害関係のエントリをアップしようと考えておりましたが、通常業務に忙殺されてしまっているうちに震災から1か月が過ぎ、5回目の金曜日が過ぎてしまいました。正直なところ、ここしばらく被災地の現場に足を運ぶ機会がなかったため、災害関係のエントリを書こうにも、現場の状況を踏まえた議論ができない状況です。そうはいっても当地は被災地と隣接しておりますので、伝え聞いた範囲で考えたことをメモしておきます。諸事情により個別具体的な話では書けませんが、状況を推し量っていただけると幸いです。

1 平常時のプロフェッショナル

ここ数回のエントリで強調してきたところですが、震災直後の非常時には、その非常事態に応じたプロフェッショナルこそが求められる状況がありました。瓦礫の下敷きになった生存者の救助や、怪我を負いながら避難してきた方への救急治療、瓦礫の撤去による交通網の復旧などが非常時において最優先される作業ですので、この任に当たるプロフェッショナルがまずは必要となります。

しかし、震災発生から1か月以上が経過した現在、次第に被害の全容が把握されるようになり、破壊され尽くされた上下水道の復旧や生活の場となる仮設住宅の建設、所得を得る場となる事業所や漁場の整備には、数か月単位ではなく数年単位での期間を要することが明らかになりつつあります。福島の原発周辺地域では、場合によっては立ち入りそのものが長期間にわたって制限される事態も想定されるところです。

となると、それだけの長期間にわたる支援活動や復旧活動は、非常事態に対応するプロフェッショナルだけでは対処しきれなくなります。震災直後はボランティアで駆けつけていただいた運送会社の方々も、数日、数週間ならいざしらず、1か月以上の期間にわたって無償で活動し続けることはできません。もちろん、自衛隊や消防、警察も、非常態勢を長期間維持することは不可能です。実際に、現場で獅子奮迅の活躍を続けている自衛隊員の中にも過労で倒れる方が少なくないと聞いております。訓練を積んでいる自衛隊ですら疲労が蓄積している中では、支援する側も共倒れになってしまわないよう、一方で、被災された方々の捜索、生活支援も滞らないよう、長期戦を見越した人的リソースの割り当てが必要な段階となっていると感じます。

したがって、被災された方の生活再建を最優先としながらも、その支援に当たる関係機関の兵站を整えることが必要だろうと考えます。問題は、そうした支援体制の平常化すら許されないほどに被害が広範囲かつ甚大にわたる被災地の状況にあるのですが、長期戦となることが避けられないからこそ、平常時の体制で緊急に作業を進めるという難しい舵取りが求められるわけです。平常時の体制を維持しつつ、その平常時の働きにプラスして災害復旧に当たらなければならない状況にあっては、なおさら平常時の体制をいかに維持するかが重要となるのです。

例えば、スーパーやコンビニで代金を払って買うというプロセスが機能していないからといって、食料品や日常品を消費するという行動を変えるわけにはいきません。小売りが機能していようが機能していなかろうが、その前の段階の卸売りが通常どおり機能してさえいれば後は配分の問題をクリアすればいいので、物流部門が通常業務にプラスして無償で供給される支援物資を現地まで運び、現地では、行政やボランティアがそれらを供給するという仕組みを機能させるという役割分担が望ましいでしょう。行政分野も同様に、日々の予算執行はできるだけ通常どおり行うことによって被災された方々以外の日常生活を保障しながら、被災者の方の生活再建に取り組まなければなりません。

となると、当然、そのプラスアルファの部分の作業に当たるマンパワーが必要となるわけですから、被災地以外の同業者による同業者の事業への支援が決定的に重要となります。公務員の世界では、全国知事会や全国市長会が率先して職員を現地に派遣する取組を始めていますが、民間の事業者におかれても、ぜひ被災地の支援のために人員をご提供いただくようお願いいたします。

2 労務管理のプロフェッショナル

上記と関連しますが、当面の災害復旧のためには瓦礫の撤去、仮設住宅の建設、遺留品の捜索、残った家屋の清掃などの労働需要が見込まれます。前回エントリで取り上げたCFWの取組のように、被災された方にそれらの業務に従事していただき、賃金を得ながら自助による生活再建に取り組んでいただくためには、これらの労働需要と被災者の労働供給をマッチングさせ、かつ現場の労務を管理しなければなりません。被災地や被災された方を受け入れている自治体では、臨時職員として被災された方を任用してこれらの業務に従事していただくという取組が進んでいますが、場所によっては数百人単位の任用を予定しているところもあると聞いております。

しかし、事業所外の作業に自治体の臨時職員が従事するとなると、みなし労働時間制とか指揮命令の問題が生じますし、労災の際の対応が難しくなることも考えられます。何より、上記のようなプラスアルファの業務を抱えている被災地の自治体職員にとっては、多数の臨時職員の労務管理をしている余裕はありません。CFWの取組がどの程度機能するかは、こうした労務管理や賃金管理を円滑に進めることができるかに大きく依存すると考えますので、前回エントリのとおり、人材ビジネスの分野からもご協力をいただけるとありがたいです。

なお、これについては、政府内でも復興基金のような形で雇用を創出しようという動きがあるようですが、お金だけもらっても使える状況にはないというのが実情です。やるべき作業は瓦礫の撤去や仮設住宅の建設などほぼ決まっているわけですから、労務管理体制を現地で構築する仕組みと併せて予算措置することが効率的です。間違ってもこの期に及んで「地域が主体的に」などというべきではありません。

3 国と都道府県と市町村と公共事業体が提供する公共サービスは不可分

前回エントリで取り上げた財源問題にも関係しますが、最近の報道でよく取り上げられるのが東電の補償問題です(実をいうとほとんど家にいないか、いても寝てばかりなので、新聞をパラパラとめくるくらいしか報道を見ていないため、以下はあくまで印象論の範囲です)。原発事故は想定外の津波によるもので不可抗力の部分はあるでしょうし、その後の対応にも後手後手となっている印象はありますが、東電がそのような対応をしているのは、利用者である東電管轄内の住民の支払う電気料金の範囲内であるということも事実でしょう。「想定外をなくすまで徹底して防災に取り組むべきだった」という批判もあるようですが、想定外をなくすまでの料金を払っていいという方は一体どのくらいいるのだろうかと疑問に思ってしまいます。

東電の対応に重大な過失があれば、その範囲内で損害賠償問題が発生するかもしれませんが、不可抗力の部分までを東電の責任とするのは一足飛びの議論ではないかと思います。あるいは、東電管内の住民の方がその管轄内で起きた事故については無過失であっても損害賠償の原資を負担するということであれば、東電の責任を全面的に認めて損害賠償するべきという議論もあり得るかもしれませんが、いかにも平衡を欠いたものと言わざるを得ません。今回の事故は地震という不可抗力に起因するものであって、その損害賠償を事業体のみに負わせるのではなく、その損害の規模からしても国民全体で負担し合うことが必要ではないかと思います。

このことは、「国が瓦礫の撤去費用や仮設住宅の建設費用を負担するべきだ」とか「漁場や事業所の再建費用は国が補償すべきだ」という議論にもいえることで、「国」というのがその国民が支払う税金によって運営されるものである以上、「国が負担する」ということは「国民全体がその費用を出し合う」ということにほかなりません。この点において、リフレ派と呼ばれる方々の一部には「復興税なんてけしからん。国債の日銀引き受けでデフレも克服して一石二鳥」という議論もありますが、誰が引き受けようとも国債は日本国民が総体で負担することに変わりないはずですから、復興税のみを否定する論拠にはならないように思います。議論すべきは復興税と長期国債発行の適正な規模とその支出先をどうするかであって、財源論がそれに先行すると議論のリソースが非効率に配分されてしまいます。国債の日銀引き受けの実現にのみ効用を見いだす方ではなく、災害復旧によって生活再建しようとする方の効用を最優先にしなければなりません。

なお、前々回エントリで拙ブログには珍しく地方分権を推進するようなことを書きましたが、もちろんナショナルミニマムを確保し、公共サービスのネットワーク外部性に配慮するのは国の役割です。日本においては市町村が公共サービスの主体的な担い手になっていますが、都道府県は市町村より広域での公共サービスを効率的に供給しなければなりません。つまりは、それぞれの公共サービスが一体となってその住民の生活を保障しているわけであって、住民の個別具体の状況に応じてその利用の仕方が異なるというのが実態です。90年代以降の政治状況はこれらの公共サービスを切り分けることに精力を費やしてきましたが、災害復興においても行政不信をテコにそれらを対立させるのではなく、行政の機能を再認識して国と都道府県と市町村を有機的に結合させていく契機になることを願ってやみません。

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2011年04月06日 (水) | Edit |
被災地での雇用問題についての提言がいくつか出されており、個人的に興味深く追っているのがキャッシュ・フォー・ワーク(CFW)です。詳しくは永松関西大学社会安全学部・大学院社会安全研究科准教授による「CFW-Japan提案書(試案)」をご覧いただきたいのですが、その概略は、被災地で当面必要となる作業(がれきの撤去、遺留品の回収、被災現場の掃除、行政サービス・NPO活動の補助、学術研究等)に被災された方を雇用し、CFWセンター(民間委託)が賃金を支払うというものです。

このCFWの取組を進めるに当たっての当面の課題は、CFWセンターの機能をどのような団体が担うか、賃金の原資をどのように調達してどのように配分するかという2点ではないかと個人的に考えております。実をいえば、被災地自治体ではすでに、リーマンショック後に創設された緊急雇用創出事業のフレームを使って、地元の被災者を臨時職員として雇用(自治体の場合は任用ですが)し、地元自治体の指揮命令の下にがれきの撤去や「自宅難民」化している世帯への物資の配給などに従事していただくという取組が始まっていると聞いております。現時点では民間事業者が行う作業の求人を仲介するまでの機能はないようですが、上でリンクした永松先生の体制図でいえば、左側の被災自治体の取組はすでに始まっているということになります。

CFWセンターを立ち上げるまでの作業やそれに要する時間を考えると、当面は上記のように自治体が中心となって緊急雇用事業によって雇用の場を提供することとなります。ただ、現時点で民間事業者やNPOをどこまでその仕組みの中に取り込めるかは、慎重な舵取りが必要ではないかと思うところですので、それを検討して形にするまでに、CFWで想定する「半年から一年の短期雇用」という要件に間に合わない事態も十分に想定されます。緊急時の対応ではありますが、平時であっても時間を要するこれらの調整を、制度改正や特例措置も含めていかに迅速に進めるかがポイントではないかと思います。

なお、民間事業者やNPOとの求人をつなぐという点では、人材派遣事業者の機能も十分に活用すべきではないかと考えております。

4月1日付けの職業安定局長通知で民間の労働者派遣事業者や職業紹介事業者が避難所での出張相談の窓口を設置できるようになった。

というか、これまでも、登録完了は、拠点窓口で行うものの、状況に応じ、派遣先に近い場所で出張相談会などを開催していた派遣元はかなり多いのではないだろうか。

少なくとも私は、この通知で初めてこうした相談窓口の設置が法的に認められていないということを知りました。
(略)
若干杓子定規な感じも受けますが、ともあれ、こうした対応がとられたことで、人材業界は、がんばりどころとなります。
【職安局通知】避難所において職業紹介事業者又は労働者派遣事業者が出張相談に応じる場合の取扱い(2011年04月05日(火))


出井さんのような使命感を持った事業者の方がその本分を被災地で発揮されることは、住民や行政の側からもありがたいことだと思います。

財源問題については、永松先生の以下のエントリに付け加えることはありません。

昨日のエントリ『「つなぐ」CFWと「みたす」CFW』でも述べましたが、改めてここに明記しておきます。

CFWの提案は、復興財源をどうするかという問題とは一切関係がありません。どのような財源調達の方法であっても必要な方策であると考えています。ましてや、CFWが復興財源を抑制するための方策であるというのは全くの誤解です。

このような誤解は私がブログで最初にCFWに言及した際(「被災地にCash for Workを」)では、国債暴落について言及したことに起因しているようです。これは地震直後に被害規模も全く判らない中で一つの可能性として提示したつもりでしたが、改めて読み返すと確かに復興財源に制約があるからCFWを導入しようという趣旨に読めます。これはCFWは単なる被災者への所得移転ではなく、雇用と労働を通じて付加価値を創出するという意味で、効率的であるという趣旨です。

しかし、だからといって、私は復興への支出を抑制するべきだと考えているわけではありません。拡張的な復興事業を行った場合でも、被災地に雇用と生き甲斐を創出するというCFWの理念は重要です。また日本経済が大きく傷いて供給制約があるとすれば、大規模な財政出動が行われれば、被災地の資源を活用するCFWはより重要になってくると思います。(日経ビジネスオンラインの記事ではむしろその点を強調してます。)

 すなわち、財政規模やその財源はCFWの是非とは切り離して考えるべきです。実際、CFW-Japanとしての活動(例えば「CFW-Japanとは」「CFW-Japan試案」)では財源問題やマクロ経済政策については一切触れておりませんし、今後も論じるつもりはありません。以上どうかご理解下さい。

CFWと財源問題について(Posted: 4月 5th, 2011 ˑ Filled under: CFW-japan)


REAL-JAPANのサイトでは、一時「リフレ派」と称される方の公的セクターへのヘイトスピーチが並んでいたようですが、現時点では表示されていません。この辺の混乱ぶりを拝見していると、所詮他人事としか思っていない方のリトマス試験紙として雇用問題を考える必要がありそうです。

最後に、花見自粛についての被災地の地元酒蔵からのメッセージです。
サプライサイドが厳しい状況であることは承知しておりますが、被災地以外の方々がご自身のできる範囲で普段どおりに消費活動を行い、その際に被災地の方に思いをはせていただくということが我々にとっても励みになると感じています。

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