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2008年06月27日 (金) | Edit |
遅ればせながら、労務屋@保守おやじさんのところで「公務員」さんの方のコメントを巡っていろいろと議論があったことにさっき気がついたので、前回エントリを補足しつつ、若干コメントさせていただきます。

前回エントリではミスリーディングな書き方になってしまったんですが、労使対等の団体交渉というのは民間企業の労働組合の話であって、公務員には基本的に「労使対等」の関係は認められません。というのも、公務員の勤務関係については「特別権力関係」というのがあって、事実無根なり著しい濫用がない限り、懲戒処分なんかは人事権者がかなりの裁量をもって行い得ます(以前は公務員の労働権の制約も特別権力関係で説明されてたけど、今は指揮命令の正統性とか人事権に限定されているはず。たぶん。)

実は、大阪府知事が「いやなら職を変えろ」といったという報道を見たとき、公務員的には「職」というのはその人が就いている身分を指すことが多い(公務員世界で「職」といえば部長とか課長とか主査とかいう「役職」を指します)のと、こういった特別権力関係があることから、この府知事さんはその職員を降格処分をするつもりなんだろうかと思ってしまいました。まあ、前後の発言を見るとこの弁護士知事さんが関係法令(特に行政法や労働法)をきちんと押さえているとは到底思えませんし、当然そんなはずもなく、単に「転職しろ」という意味だったのはみなさんがご指摘のとおりですね。

というわけで、前回エントリで「労使対等じゃないの?」と書いたのは、特別権力関係にある公務員の人事について全権的な権限を持つ知事が民間感覚で団体交渉するというなら、そこは当然「労使対等」で交渉するんでしょ? という意味でした。そもそも公務員には争議権も協定締結に至る交渉権もなく、労組法も労調法も適用がありませんしね。しかし、公務員の仕事ってのが法令に基づいて行われる以上、上司が法令に基づいて指示したことに対して異を唱えることは通常許されません。もう少し具体的にいえば、行政組織法(条例)なり代決専決規定なりで上司には法令が授権しているわけで、上司の指示そのものが法令と同等の効果を持ちうるわけです。

官僚制組織での指揮命令系統の正統性をめぐって、いちいち上司と部下が法令の解釈とか運用で論争していたら、莫大な労力がかかってしょうがありません。というより、官僚制組織の中でも典型的な役所においては、決裁者に上意下達の権限を与える一方でボトムアップ式の稟議制をとることによって、効率的でムダのない法執行を担保しているわけですね(という意味では、「役所のムダ」を叩いている方々は官僚制組織の効率性を褒めていただいてもいいはずなんですがねえ)。

極端な例でいえば、「会社が倒産しそうだから明日までに一人1000件ずつ契約を取ってこい!」という上司に対して「それはムリです」と意見をいうのと、「全然債務超過でもないけど、これ以上地方債を発行するのは大変だし、議会の議決も経たことだから、××条例第△条の規定に基づいてこの事業は廃止する」という上司(のトップである知事)に対して「そんな議決はおかしい」とか「あなたの権限でそんなことしていいのか」なんて楯突くのとでは、その無謀っぷりは全然違うわけです。

というわけで前置きが長くなりましたが、労務屋@保守おやじさんと「公務員」さんのやりとりで気になった点というのが、

労務屋@保守おやじ 2008/06/23 23:10
>「公務員」さん
 同じことを何度も書くのは気が進まないのですが、この議論は要するに「公務員」さんは「自治体の首長が議会と選挙民の支持を得て、職員の理解活動を進めつつ財政再建のために職員の給料を切り下げる」ことが「経営トップが牛肉の産地などを偽ることを指示する」ことと同程度に犯罪的なこととお考えになっておられるのに対し、私はそうは思っていない、という価値観の相違なのです。
また、「いやだったらやめろ」がよほどお気に召さないようですが、「やり方が合わないならやめてもらいたい」と言われたところで、不満タラタラ言いながらやめずに働き続けることはできるのですから、「トップが「いやだったらやめろ」といった瞬間、その組織は死に絶えたと同然」とか言いながら働き続ければいいのでは?

公務員 2008/06/23 23:41
(略)
「改革派」で名を馳せたものの逮捕された元和歌山県知事、あの人も違法行為を指示したわけではなかったかもしれません(逮捕された職員は逆らえなかった、と)
また、同じく逮捕された元宮崎県知事。あの人にも職員は逆らえなかった・・・残念ながら(両知事とも身近で見たことあっただけにショックだった)。

行政のトップに逆らえない雰囲気が出来たときの恐ろしさ、これを知っているからしつこく書き込みさせていただきました(今後しません)
(略)

労務屋@保守おやじ 2008/06/24 22:49
>「公務員」さん
 またしても同じことを繰り返し書くことに強い徒労感を覚えますが、私は「自治体の首長が議会と選挙民の支持を得て、職員の理解活動を進めつつ財政再建のために職員の給料を切り下げる」ことに対して、理解活動の場で「士気が低下するから給料は従来どおりよこせ」(とか「庁舎内で喫煙させろ」とか)という「諫言」(?)をする職員に対して首長が「やり方が合わないならやめてもらいたい」と注意するのは人事管理上ありうる、と申し上げているだけです。それがただちに官製談合や政府調達における親族企業の優遇(でしたっけ?)にも逆らえない雰囲気につながるというわけではないでしょう。
(略)
民間じゃないんでその2(2008-06-17)コメント欄より」(吐息の日々~労働日誌~


という辺りですが、上記の特別権力関係を踏まえてこのやりとりを見てみると、やっぱり下っ端の地方公務員としては労務屋@保守おやじさんのおっしゃることに賛同できません。発言のシチュエーションにもよりますが、「上司の指示に従えないなら辞めてくれ」と人事権をもった公務員(この場合でいえば、知事という特別職の公務員)が配下の公務員に対していうのは、単なる人事管理上の注意にとどまらない可能性があるのです。役人の組織があれだけ小回りのきかない手続主義になっているのは、こういった特別権力関係の中で与えられた権限を恣意的に行使する公務員の行動を抑制する仕組みでもあるのではないかと思います。

もちろん、労務屋@保守おやじさんが「現実には「職をかえて」と言われたところで、不満タラタラ述べながら働き続けることはできるのでしょうから。」とおっしゃるとおり、単に「辞めてくれ」といわれただけでその職員が解雇されるわけではありません。しかし、「俺の指示に従わない奴には、職務命令違反として懲戒処分もあり得る」というメッセージとして受け取った職員は多いでしょうね。この知事は人事権に限らず特別権力関係にある公務員組織のトップとして、(それが違法だろうと適法だろうと、人事管理上職員のモチベーションを下げようと、経済学的に負の外部性をもたらそうと)自らの意向に反した職員の将来の不利益な状況にコミットメントしたわけですから、知事の意向に沿った形に職員の行動が変わるのは容易に想像できます。その点に「公務員」さんは反応したのだろうと思います。

個人的には、この件以外についての労務屋@保守おやじさんの見解には賛同することが多かっただけに、それでもやっぱり民間と公務員の労務管理には越えられない壁があるんだなあと、お互いの理解が難しい問題だということを改めて認識しました。
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2008年06月23日 (月) | Edit |
前回エントリで実害はないと書いてしまったマイレージの件ですが、質問主意書に答弁してしまった手前もあってかなかなかに複雑な問題を含んでいるようで、結構な実害が発生するかもしれないと思い直しました。脱藩官僚の方々はさすがにあなどれません。

でもまあ、原資が税金であるとはいえ、手当てとして支給されたものは支給された労働者に私的所有されるものと思うんだけど、税金というのはどこまでいっても税金だから私的に使用してはいけないと、だから脱藩官僚でなければダメなんだということですね。ということは、兼業が禁止されている地方公務員である俺が所有する財産は、すべてが税金が原資の給料で買ったものなわけで、これを私的に使用するなんてことは許されるはずもなく、すみやかに役所の財産として返却せよとか言い出すんでしょうか。それなんて共産主義?

でまあ、大阪府ではどんどん先駆けていらっしゃるようで、「地方自治は民主主義の学校」というのは言い得て妙ですなあ(遠い目)。

府秘書室によると、朝礼は46歳以上の課長補佐級職員が対象で、約140人が任意で参加。非公開で行われた質疑応答で、男性職員の1人が給与カットを批判し「職場の士気は下がっている。職員はあきらめている。知事は人として尊敬できない。公務員は兼業を禁止されているが、知事はテレビに出演している」とまくし立てた。

 これに対し橋下知事は公務以外の番組出演は断っていると反論。職員の発言に「民間では考えられない物言い。ここは団体交渉の場ではない。上司として、その言い方に注意する。私のやり方が気に入らないなら、職を変えてくれ」と厳しい言葉を投げ付けたという。

 5日の財政再建策の発表後、初めての朝礼。終了後、記者団に「職員の生活に影響があると思うが僕は府民の代表。府民に軸足を置く」と述べ、給与削減方針に変わりがないことを強調した。

 このバトルについて、インターネットなどに掲載された報道で知った府民らから、府に電話で59件の意見が寄せられた。「職員の口の聞き方がなっとらん」「『職を変えろ』はその通りだ」などとする知事賛成派が44件、「パワハラみたいな知事の発言は止めた方がいい」などの職員派が8件、「どっちもどっち」が7件。知事の“支持率”は約75%と圧倒的だった。
橋下大阪府知事「不服なら職を変えて」SANSPO.COM2008.6.13 05:07


この弁護士さんはとにかく労働問題には疎いらしいので、ご自分が当事者になっているんだから、クライアントに対するのと同じように関係法令なり判例なり調べてみればいいのに。

 二つの組合との団交を通じ、橋下知事は「人件費削減は不可避」との主張を譲らず、組合側から怒号が飛ぶ場面もあった。

 府労連との交渉で、橋下知事が「組合の主張は自分たちの生活のことばかり」と指摘すると、新居晴幸委員長が「当然だ。人件費削減に反対する交渉の場だ」と声を荒らげた。背後にいた組合幹部から「ふざけるな」とヤジが飛ぶと、橋下知事が「そういう言い方はいいのか」とやり返した。
大阪府団交決裂 知事「削減は府民の声(2008年06月22日 読売新聞)」


団体交渉がテレビで流れるなんてプロ野球選手会以来じゃないかと思うんだけど、民間の団体交渉ってのはそういうもんですよ。三井三池争議みたいなのが当たり前だった当時とは確かに時代が変わってはいるけど、不当労働行為を定めた労働組合法7条とか労働関係調整法がそれ以降ほとんど改正されていないので、法的にはあれくらいの争議でも十分許容されることになります(そういう片務的な組合保護が組合のモラルハザードをもたらして、組織率の低下に拍車をかけたという面も否定できませんが)。ましてや団体交渉はあくまで「労使対等」の交渉の場であって、労働組合が扇情的な言葉遣いをするのは古今東西共通している話だと思うんですが、府民の代表としての「外部の感覚」とやらはそういった次元を超越する高邁なモノなんでしょうね。

民も官も超越してしまった弁護士の方にとっては、役所の人間が言うことなんか耳にも入らないんだろうし、kumakuma1967さんがおっしゃるような民間感覚ですらご理解いただけないのかもしれません。

人気投票で経営トップに座れるなんて、民間の組織で考えられないからやめちまえ。*3

*3:追記:上司が気に入らないからといって仕事をやめる権利は公務員にはない。国家公務員でも地方公務員でも同じ。大阪府職員なら知事かその代理人がやめていいと言った時だけ退職が許される。弁護士といえども自分の業務に関わる法律すら読まない事があるというのはわかったが、自分が何の職についたのか理解してないのはあまりになさけない。
■[society][government]自覚なし(2008-06-19 尊敬できない、というより「バカだこいつ」というかんじ)」(くまくまことkumakuma1967の出来損ない日記


前回エントリでもリンクしましたが、改めて確認しておくと、労働問題を知らない弁護士の顧問には脱藩された元運輸省官僚がいらっしゃるわけですから、さぞお心強くされているのでしょう。

--知事はいきなり1100億円の経費削減を掲げたが

 「府の財政規模で1100億円は驚くほどの額ではない。人件費の1割カットなどで出てくる数字。補助金もなくてもいいようなものがけっこうある。一気に目標を出して後は痛み分けというやり方以外にないと、私も思う。ただし補助金と人件費だけでなく建設費や貸付金も見直すべき。橋下知事が施設や人事制度の見直しなど色々な材料を出してくるタイミングはすごくいい。発言には『不発弾』もあるが、学習のプロセスと考えたらいい」
上山信一慶大教授に聞く 大阪府市改革の現状と展望 (1/2ページ)(MSN産経ニュース2008.3.28 00:34)


明日は我が身か・・・


2008年06月18日 (水) | Edit |
どなたも言及されていないようなので、メモ代わりに貼っておきます。

(追記:と思ったら濱口先生が脱力されていたことに後から気がつきました。)

霞が関OBらが「官僚国家日本を変える元官僚の会(脱藩官僚の会)」を設立する。霞が関や族議員主導が目立つ政治の改革が目的で、発起人代表は江田憲司衆院議員(無所属、元通商産業省)。高橋洋一東洋大教授(元財務省)、寺脇研京都造形芸術大教授(元文部科学省)らが名を連ねる。政党色をできるだけ排除し、天下り全面禁止と税金の無駄一掃など霞が関改革を打ち出す方針だ。
 発起人ら8人が近く記者会見して、中央省庁出身の参加者らを募り、臨時国会が召集される見込みの8月下旬から9月上旬に設立総会を開く予定だ。霞が関の手法を熟知した官僚出身者だからこそ追及できる法律・規制の問題点の指摘や、政策を提言。当面は官僚の抵抗が目立つ公務員制度改革や道州制・地方分権改革、消費者庁の設立問題などを中心に取り組む。(16日 07:04)

日経新聞『官僚OBらが「脱藩官僚の会」、天下り全廃など提言』2008年6月16日


紙媒体ではさらにこれに続く記述があって、

設立趣意書では官僚らの参加の条件として「退職後に出身官庁と縁を切り自力で生きている」と明記。政党所属の議員や候補者は認めないとしている。江田氏ら以外の発起人は以下の通り。福井秀夫政策研究大学院大教授(元建設省)、岸博幸慶大教授(元経済産業省)、上山信一慶大教授(元運輸省)、木下敏之元佐賀市長(元農林水産省)、石川和男専修大客員教授(元経産省)。
日経新聞『官僚OBらが「脱藩官僚の会」、天下り全廃など提言』2008年6月16日


だそうです。

福井氏はいわずとしれた規制改革の急先鋒で、岸氏は官僚不信の塊だった竹中平蔵氏の秘蔵っ子で、上山氏は関市長と大平助役の下で大阪市の改革に大なたを振るった方(追記:あの橋下府政でも顧問をされるそうな)ですね。後の方は存じませんが、高橋洋一さんが寺脇氏だの江田氏といったメンツと一緒にこの中に入ってしまうのには、ちょっと幻滅してしまいます。

高橋洋一さんのもてはやされ方を見ても、役所を出て役所を批判する者には大いに存在価値が認められますから、むしろ歓迎されるんじゃないでしょうか?
長妻事務所への応募(2008-06-01)」(BI@K accelerated: hatena annex, bewaad.com


bewaad氏のこの予想が早くも形になったようですね。
こういう「超党派」的な動きが出てくると、

とにかく今は官僚・公務員やそれとつながる既得権みたいなもの、けしからん奴を叩けば叩くほど人気取りになるわけだ。この点に関しては与野党とも同じ方向を向いていて、今は野党が攻める側だがもし潮目が変わって入れ替わってもあい変わらず官僚批判・無駄遣い批判は変わらないはずだ。
[政治]官僚叩き=踏み絵的世相の異常さ(2008-06-09)」(すなふきんの雑感日記


という流れの中では、「官僚国家日本を変える元官僚の会(脱藩官僚の会)」によって与野党ともに格好の燃料が投下されることになるんでしょうか。とりあえずは、

政府は17日午前の閣議で、国家公務員が飛行機を使って公務出張した場合、特典であるマイレージ・ポイント取得の自粛を徹底するとした答弁書を決定した。江田憲司衆院議員の質問主意書に答えた。
 マイレージ・サービスは、飛行距離に比例してポイントを付与し、無料航空券などと交換できる制度。答弁書は「国民の信頼確保の観点」から公費で搭乗した場合のポイント取得や使用について自粛するとした一方、「公費節減の観点からどのような取り扱いができるか検討する」とし、透明なルールでの活用にも余地を残した。
時事通信ドットコム「2008/06/17-11:24 マイレージ取得を自粛=官僚の公務出張-政府答弁書」


というしょーもない話をするだけならまあ実害はないのかもしれませんけど。

で、めずらしく毎日がマトモな航空会社の言い分を書いてますが、

「公務で私的な特典を得ている」との批判を避け、行政経費も節減する「一石二鳥」策だが、航空会社側は「マイレージは顧客個人をつなぎとめる特典。他人のマイレージで『ただ乗り』はたまらない」と反発する。同様の申し込みは民間企業からもあるが、断っているという。
(略)
航空会社側は「国家公務員にだけマイレージの共有を認めるのは納得が得られない」(ある日本の航空会社幹部)との姿勢を変えていない。結局は公務員自身のモラルに帰着しそうだ。
マイレージ:国家公務員による「共有化」案に航空会社反発(毎日新聞 2008年6月18日 19時57分(最終更新 6月18日 22時48分))


特典の意味が分かってて、「接待タクシー」を一方的に批判しておきながら航空会社の言い分を掲載してるのかなと思ったら、最後は「公務員のモラル」に帰着させるわけですな。
「公務員のモラル」って便利だなあ。

2008年06月15日 (日) | Edit |
今回の岩手・宮城内陸地震で被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。
お亡くなりになった方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた方々の一日も早い回復、生活環境の復旧をお祈りします。

いつかは起きるだろうと思っていても、いざ実際に起きてみるとやっぱりそれは想像を絶する悲惨さがあるのだろうと思います。自分自身が被害に遭わなかったことは単なる巡り合わせだったと思い、日々の生活を見直していく機会にしたいと思います。

地方公務員としてはこういう事態に心を痛めているばかりではなく、どうしたらより確実で迅速な救済活動が可能か、より効果的な復旧策はどうあるべきかということにも気が向いてしまうわけですが、正直に言うと、大規模な崖崩れで道路が寸断されて孤立してしまった地域については、事実上廃村(集落)になるところもあるのではないかと思います。それは決して市場原理主義でも地方切り捨てでもなく、自然災害によって孤立した村を人的な構造物でもって維持することが、果たして妥当なことなのかという点についてコンセンサスが得られないだろうと考えるからです。

阪神淡路大震災とほぼ同じマグニチュードで、現時点での死傷者数が257人(注:pdfファイルです)というのは、震源が中山間地域で人口密度が小さかったからに他ならないわけで、不幸中の幸いともいえるのかもしれない。しかしそのことが、被災地の復興という観点からいえば、上記のとおり足かせになってしまう。分散しすぎた人口を集約するチャンスととらえるか、古くからある集落を以前と同じように残すことが大事だと考えるかによって、立場が対立することもあるだろう。

しかしそれでも、自然災害で孤立したり壊滅的な被害を受けた村を、以前と同じように復旧しなければならないという議論そのものに俺は疑問を感じる。人口集約だとか古くからあるとかいう議論は、あくまで人が住むことができる土地を長年かかって開拓してきた歴史的な営みを前提とするものであって、それが自然災害という歴史的な事件によって地学的に壊滅したのであれば、短期間での復旧ではなく、これまでと同じ時間をかけて開拓するしかないのではないかと思う。

とにかく被害を受けた方々が無事救出され、早急に安心して暮らせるライフラインを整えることが最優先であるが、その先には避難場所での健康問題や仮設住宅とか、さらには雇用問題とかの深刻な問題が構えている。そこでは上記のような議論がよりストレートで感情的なかたちで現れてくる可能性もあるだろう。マスコミを含め、関係各機関の冷静な議論を心から望みます。

2008年06月08日 (日) | Edit |
あちこちで指摘されている霞ヶ関のタクシー接待(あちこちなのでトラバはパスします)ですが、俺も実態がよく分からないで書くのでなんだけど、東京でタクシーに乗ったときにあめ玉をもらってびっくりしたことがある。こちらの地元なんてそんなサービスする余裕すらないのに、ほんの千円前後の距離であめ玉がもらえるんだから、1万円以上の距離の客をつかまえたら缶ビールぐらい出すんじゃないかと思うし、涙ぐましい営業努力だよなあとむしろ感心するんだけど、長妻君をはじめとしてそうは思わない方もたくさんいるようで。

もちろん、タクシー券で料金を払っておきながら個人的に金品をキックバックされていたというのなら、税金から支払われるタクシー券で官僚個人がおいしい思いをしていることになるので、許容範囲はどこまでかという問題はあるにしても、慎むべきところとは思う。しかし、それを営業努力としてやっているタクシー側からしたら、じゃあどうやって顧客をつなぎ止めればいいのかという問題は解決されないままである。まさか役所の経理担当にとりいって優先的に指名を回してもらうなんてことができるわけもなく、ただ偶然に回ってきた客が遠いか近いかだけで料金が決まるんなら、タクシーが営業努力(この場合缶ビールに限らず、安全運転なり感じのいい対応なりという本来あるべき努力全体)をするインセンティブはなくなってしまうんじゃないですかね。

念のため、「安全運転します」とか「愛想良くします」なんてアピールしてもシグナリング効果はほとんどないし、そもそもいつ帰れるか分からない顧客を待つことの機会費用もバカにならないだろうということ。確実に顧客を囲い込む手段として妥当かという点に疑問がないわけではないけど、だからといってビールを提供してその代金を支払うシステムにするにも飲食業の営業許可が降りないだろうし(まさか規制緩和?)。

ただ、ことの本質はそっちじゃなくて、官僚系ブログで何度も指摘され続けている(拙ブログでもちらっと触れたことがあったな)ように、国会待機のせいで終電に間に合わない事態はホントに勘弁してもらいたい。何も知らないマスコミならちゃんと調べてから批判すべき相手を批判しろといえなくはないけど(池○先生は今はマスコミの最前線から外れているから現状は知らないとでも言い張るんでしょうな)、何も知らないふりをする野党第一党、というか民主党はホントにあきれてモノがいえません。あんた方が非常識な時間に質問を出してくるから、案件によっては地方自治体にまで影響が出ることもあるんですよ。

夕方に質問が出てきて、勤務時間内に照会のFAXがくるくらいならまだいい方で、そういう場合は時間内に対応方針を決めて残業しながら処理することもできなくもないんだが、夜中の10時とか担当が帰った後に質問がでてきて、朝職場に行ったら深夜のタイムスタンプで朝イチで回答よこせというFAXが中央省庁から入っていることも、ごくまれにではあるけどあったりする。その場合はいろんなルートから該当する地方自治体の担当者に連絡が入って何とかしているようだけど(出向官僚ってやっぱり大事ですな)、そういう質問を出すのは決まって野党の方々。特に、民主党の代表を務めたこともある方は日曜日に質問を出すという非常識さで霞ヶ関でも有名ですね。野党の支持母体には労働組合が多いはずなんだけど、公務員の時間外勤務(しかもそのほとんどはサービス残業)を強いる国会議員を支持する理由って何なんだろう。

とりあえず、勤務時間を過ぎて質問を出した国会議員の先生方には、その対応のために残業しなければならなくなった国家公務員と地方公務員の超過勤務手当とタクシー代を自腹で払っていただきたい。野党のみなさんが日ごろ強調されているように、公務員の超過勤務手当もタクシー代も他ならない税金から支払われているわけですから、そのくらいのコスト意識をもっていただいても罰は当たりませんよねえ。

2008年06月03日 (火) | Edit |
すなふきんさんのところでも取り上げられていたように自民党でも議論が進んでいるらしい道州制ですが、先々週の日経新聞の経済教室でも「再考・道州制」としてお三方が寄稿されていたので、2週遅れの感想など。かなりタイミングを外してしまった感がありますが、これ以上遅らすのもなんのでとりあえずのメモです。

すなふきんさんが

東京圏への集中を抑えるためにやるという考え方もあるだろうが、東京圏にリソースが集中してしまった理由は単純に市場メカニズムの働きによるものとすれば、それを人為的に何とかしようと考えるのは妥当なやり方なのかどうかも疑問が残る。
■[政治]今頃「地方分権」などナンセンスでは?」(すなふきんの雑感日記


とおっしゃる点については、以前コメントさせていただいたとおりに考えていたので、この話は結局「補完性原理」をどう捉えるかということにつきるんじゃないかと思ってました。ところが、濱口先生からご教示いただいたとおり、当のEUでも政治的な駆け引きのための大義名分として「補完性原理」というタームが使われているのであれば、「チホーブンケン」と対して内実では変わらないような気がしてきます。たとえば、5月20日の齋藤・中井論文から「補完性原理」について言及した部分を引用すると、

「補完性の原理」とは、欧州の「地方自治憲章」で規定された社会を構成する原理である。個人の自助・家庭の互助を原則として、できないことは地域で助け合い、それでも解決できない問題に対して、政府が、市町村(基礎自治体)、都道府県(中間政府)、国の順で関与することとされる。
齋藤愼(大阪大学教授)・中井英雄(近畿大学教授)「経済教室 再考・道州制>>上 財政的公平と効率追求を」日経新聞(2008年5月20日)


だそうですが、その直後で、

日本の場合、シャウプ勧告で地方自治に関して市町村優先の原則が打ち出され、基礎自治体は高い行政能力を持っている。これを前提にすれば、都道府県の事務を市町村に大幅に移譲し、道州は圏域単位の社会資本整備、広域的な環境保全・管理、地域経済・雇用政策など限定的(コンパクト)な役割に徹することが考えられる。保険、福祉、義務教育など住民に身近な行政は市町村が総合的に担うことになる。
齋藤・中井「同」


としている点には大いに疑問の残るところ。というのも、1949年に出されたシャウプ勧告ってそんなに後生大事に尊重しないといけないものなんだろうかというのが、その後の経済学理論の発展を踏まえると、どうも腑に落ちないんである。ブキャナンのリバイアサン政府とかティブーの足による投票とかオーツの分権化定理というような有力な財政理論が提唱される遙か以前の、少なくともサミュエルソンがリンダール均衡についての悲観論を提出する前に策定されたシャウプ勧告を、あたかもそれに沿ったものとして扱うってのは、あまり筋のいい話ではないように思います。まあシャウプ使節団にボーエンがいたということは、のちにボーエン=サミュエルソン条件と呼ばれる公共財の最適供給理論くらいまでは踏まえていたんでしょうけど。

念のため、シャウプ勧告の該当箇所を引いてみると、

われわれは各種の段階の行政機関の間における事務の配分を詳細に研究して、事務の再配分を行うことを勧告する。この研究は、この目的のために特別に創設され且つ内閣に対して勧告する権限をもつ特別な国の委員会によって行われねばならない。この委員会は、国政に対し専門的資格を持つと認められている五人の委員を以て構成すべきである。
うち三人はそれぞれ知事会議議長、市長会会長および町村会会長が任命し、二名は総理大臣が任命してよいであろう。この委員会には専門家および顧問を雇うための資金を与えねばならない。
この委員会の仕事は、次に述べる一般的原則の上に立っていなければならない。
(略)
3 地方自治のためにそれぞれの事務は適当な最低段階の行政機関に与えられるであろう。市町村の適当に遂行できる事務は都道府県または国に与えられないという意味で、市町村には第一の優先権が与えられるであろう。第二には都道府県に優先権が与えられ、中央政府は地方の指揮下では有効に処理できない事務だけを引受けることになるであろう。
シャウプ使節団日本税制報告書 付録 A地方団体の財政 D 職務の分掌 (Division of Functions)」(Roadside Library


となっていて、英語の本文は次のとおり。

We recommend that the division of functions among the various levels of government should be studied in detail, and a reallocation of functions effected. This study should be carried on by a special national commission created specifically for the purpose, and empowered to make recommendations to the Diet. This Commission should be composed of five persons having recognized professional competence in public administration. One member each might be appointed by the President of the Association of Prefectural Governors, by the President of the Association of Mayors of Cities, and by the President of the Association of Mayors of towns and villages. Two members might be appointed by the Prime Minister. This Commission should have funds provided for the employment of technicians and consultants.

The work of the Commission should be based upon the following general principles:
(略)
3. In the interests of local autonomy each function would be given to the lowest appropriate level of government. Municipalities would have first priority in the sense that no function would be given to the prefecture or national government which could be performed adequately by municipalities. The prefecture would be given second priority, and the national government would assume only those functions which cannot be administered effectively under local direction.
REPORT ON JAPANESE TAXATION Appendix A FINANCE OF LOCAL GOVERNMENTS Section D - Division of Functions」(Roadside Library


というわけで、戦前に国の出先機関だったのが突如完全自治体になった都道府県を挟んで、市町村やら国やらとの権限配分が不明確になっていた状況でこの勧告があって、それに基づく研究の結果が今の状況だということなら、何も今さら道州制にする必要はないんじゃないかとも思ってしまいます。そこにわざわざ「補完性の原理」なんて概念を導入して、同じことを繰り返す必要性がよく分からないというのが素朴な疑問。もし、その研究がもう古くなってしまっているというなら、その発端となったシャウプ勧告自体も古いんですよね。

で、翌日の林論文では、経済界が道州制に積極的な理由がさらりと指摘されています。

こうした権限のうちに、特に、大型公共事業や産業振興、許認可・規制に関するこれまでない大きな権限は、道州の首長や議員をめざす人々には魅力的だろう。道州制に対して積極的な意見を展開している経済団体にとっても、こうした権限は大きなビジネスチャンスになるのであろう。
林正義(一橋大学准教授)「経済教室 再考・道州制>>中 国との関係『融合型』に」日経新聞(2008年5月21日)


グッジョブ!さらに、日本が道州制になるとヨーロッパ各国と同じくらいの経済規模があるとかいう意見に対しても、

だが、今の日本の都道府県平均人口ですら、カナダ、オーストラリアなど連邦国家の州や、フランスやイタリアの「地域」の平均人口とほぼ同じ大きさ(三百万人弱)であり(表)、大規模な都道府県に限れば、その人口は北欧諸国の人口に匹敵している。そして、そうした規模の欧州諸国でさえ地方分権が政策課題になっている点は留意すべきだろう。
林「同」


として、国を現行より大括りに分けることが地方分権だというのは、日本の特殊な議論ではないかと疑問を呈されています。

ところが、翌日の中村論文では、その特殊な議論全開で道州制のメリットを強調します。

日本の統治機構は抜本的に改革され、国は国益を重視した政策に専念する一方、自立した道州が地域内の政策を担うことになる。道路網などのインフラ整備も地域の実情に応じたかたちで行われることで、各地に自立した広域経済圏が形成されるとともに、行政サービスの質的向上が図られる。
中村邦夫(日本経団連副会長)「経済教室 再考・道州制>>下 まず国の出先機関改革を」日経新聞(2008年5月22日)


「抜本的」とか「改革」とかの言葉を使われるだけでお腹いっぱいなんですが、この論文のメインとなる経団連の主張は、国の出先機関の業務が地方自治体と二重行政になっているから、それを整理・統合すれば六万八千人弱の国家公務員が地方自治体へ移管できて、さらにその半分の三万四千人の定員削減が可能、ということなんだそうな。お役所仕事とか無能とかさんざん批判されてきた三万四千人の失業者を、民間が雇ってくれるんでしょうかねえ。と思っていたら、

こうした一連の改革により、国から地方へ、さらに公的部門から民間部門へ、労働市場を通じて人材がシフトすることになる。雇用の流動化が促され、優秀な人材の再配置が行われることで、住民視点から見た行政サービスの向上、地域全体の活性化が進むことが期待できる。
中村「同」


って、ホントにそんなことができると思ってるなら、経営者としての見識を疑いますよ。中村氏の論理に従えば二重行政をするような余分な役人が削減されるわけで、その役人を優秀な人材として民間が雇ってくれて、それで地域全体が活性化するなんていわれてもワケが分かりません。

というわけで、日経新聞は2対1で道州制推進派を優遇する立場なんですが、ほかの大手新聞も似たり寄ったりで、しかも現政権党に対抗(?)して野党第一党は二層制を推進する始末。

小沢氏は地方分権に関し「今は国と都道府県と市町村、地方ではそこに国の地方分局が加わって、4層構造だ。これは2でいい。1つは中央政府、あとは基礎的自治体に全部やってもらう」と述べ、「中央政府」と、同党が主張する全国で300の「基礎的自治体」の2層構造に再編する考えを示した。

また「都道府県を同じ性格のまま道州まで大きくするのは実際的ではない。何となく流行(はやり)で道州制、道州制といっている。大切なのは私たちの生活に近い基礎的自治体の方だ」と述べ、道州制に否定的な姿勢を示した。
小沢民主党代表、道州制に否定的 国と基礎的自治体の2層構造に」(MSN産経ニュース


100点満点で30点の答案に対抗して10点の答案を書いたって、どっちも赤点なんだけどねえ。

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