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2016年08月15日 (月) | Edit |
既に旧聞に属する通り、何回か取り上げていた都知事選が誰得な結果に終わりましたが、その感想戦がいろいろ出されている中で、拙ブログで取り上げていたやまもといちろう氏の記事がアップされていたので、こちらでも簡単に振り返っておきます。

坂本「そこは、私もおおいに反省するところなのですが、借金倍増知事批判にせよ、東京一極集中問題にせよ、増田さんの弱点はだいたいが政策論や哲学のところなんです」

山本「そうですよ。だから、私も増田さんは優秀な学者かもしれないけど、都知事には考え方として全く向いていないだろう、と思っていたわけです」

坂本「はい、そこは正論です。なので、ホームページやツイッター、フェースブックで、しっかりと彼の政策について説明できるようにし、いろんな批判に対しても整合性のとれる形で反論できる仕組みを用意したかったのです。寄せられる質問にはほぼ全部答えました」

山本「しかし、時間がなかった」

坂本「そうですね。山本さんが一連の記事を書いてくださって、逆に言えば政策論のところでの批判が中心だったので、まあ、ほとばしる無能はきつかったですが、ならば、その政策で増田さんの反論をしっかりできれば、政策で困っている都民にとっては増田支持にできるチャンスだったんじゃないかと思いました」

(略)

山本「政策という点でいうと、そもそもその安倍政権自体が与党に返り咲くときのスローガンが『TPP 断固反対』だったじゃないですか。あんまり自民党の選挙で政策を前面に立てると、あとで問題になったりしませんかね」

坂本「はい。政策で勝負するのは本当はリスキーです。増田さんにしたって、東京一極集中を批判してきた人ですから、その人が肝心の都知事になって前言どうするの、っていう整合性は、必ず取らなければなりません

山本「単に政策主張してきただけじゃなくて、増田さんの場合は総務大臣として地方交付税特別枠の創設に深く関与し、現在の東京の法人二税では累計一兆円近い都民の税金が地方経済の財源不足の名目で流れ出たわけですよね。その結果として、顕在化しているだけで8,000人以上の待機児童に4万人あまりの特養待ち老人の列じゃないですか。あの金があれば、ひょっとしたら待機児童の問題はなかったかもしれない。都民としては、都民として納めた税金は都のために使ってほしいと願っていると思いますよ

坂本「そういうお話も踏まえて、政策パッケージを作る時間や要員があれば、もう少し増田寛也さんと自民党公明党でできる都政もイメージしやすいような論点整理ができたんじゃないかと思います」

山本「つまり、増田陣営はかなり本気で政策論で選挙を勝ちに行ったんですね」

坂本「増田さんは知名度もそこまで高くない、演説も岩手県知事経験者の割には必ずしもパッとしない、ならば実績と知識、政策論で勝負する、都民が本当に困っている問題に迫れれば、浸透もできると」

「山本一郎「増田寛也敗戦」で自民党都連は何を反省し、どう立ち直るか(2016年8月12日 22時53分配信)」(Yahoo! JAPANニュース)
※ 以下、強調は引用者による。


いやまあ、やまもといちろう氏が「借金倍増でほとばしる無能」というあまりフェアではない政策論で盛大に叩いたことが、自民党都連にとっても相当な痛手になったとのことですが、かといってそのフェアでない政策論そのものにはあまり言及も反省もないあたりがやまもといちろう氏の持ち味なのだろうとは思います。とはいえ、「増田さんは優秀な学者かもしれないけど、都知事には考え方として全く向いていない」というやまもと氏の指摘に対して、自民都連の板橋区議が「はい、そこは正論です」と答えるというのもなかなか味わい深い光景です。

それにしても、拙ブログでは

地方分権の論議が盛り上がっていた当時は財源が東京に集中する東京問題こそが地方財源論の焦点だったわけでして、東京からの財源配分を声高に主張していた元カイカク派知事の皆さんがこぞって東京都知事を目指すというのは、東京問題を是正するためにその本丸に乗り込むぞ!ということならその意気やよしとしないでもありませんが、上記の浅野氏のような発言を見ていると、その真意がどこにあるのかはよくわかりません。まあ東京都民の方にとってはそんなことどうでもいいでしょうから選挙の論点になるとも思えませんが、地方在住者にとしては元カイカク派知事同士の選挙戦というのも、怖いもの見たさで興味のあるところです。

元カイカク派知事同士(2016年07月02日 (土))

なんてことを書いていましたが、やまもといちろう氏にとってはまさにそれが争点だったわけでして、地元の財源は地元で使うべきという小学生のような論理の根強さにはこれからも十分に注視しなければならないと改めて認識いたしました。
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2016年07月12日 (火) | Edit |
増田寛也氏が正式に出馬表明したとのことで、いやまあ誰もが知っていることではありますがこうやって宣言されると清々しいものですね。

【全文】増田寛也氏 出馬表明会見「東京都政のトップに立って、子育て・少子化問題を解決する」(ログミー 7月11日(月)13時26分配信)

さまざまな自治体のみなさま方のお話を聞き、私も、この都政の混乱を考えて、まさに都政の混乱を解決する上で、先頭に立ってがんばらなければ、と気持ちにスイッチが入りました。

これまで、岩手県知事として行政の経験を行ってまいりましたが、日本全体を考え、そして東京都政を担うものとして、きちんとしたスイッチの切り替えを行って、そして都民の最大幸福の実現に努力をしていきたい。このようの思います。東京は私の生まれ育ったふるさとであります。

※ 以下、強調は引用者による。

増田氏は岩手県選出の国会議員の子息として東京で生まれ、大学まで東京で育ち、キャリア官僚になってから初めて地方勤務したという東京の人なんですよね。生粋の江戸っ子じゃないとはいえ、東京生まれで東京育ちの増田氏が、霞ヶ関のキャリア官僚としてキャリアをスタートして、父が同じ地元で仇敵同士であった小沢一郎氏に担がれて岩手県という地方自治体の首長になったという経緯を考えれば、岩手県知事退任後は東京に移住(帰郷)して東京のコンサルの役員やら国務大臣やらを歴任し、都知事に立候補するという華麗なる転身を遂げられているのも頷けます。

とはいえ、総務大臣就任当時の新聞記事のとおり、

 岩手県庁ではこの日、職員から「地方分権の特命相かと思ったが、まさか総務相とは」と驚きの声が上がった。幹部職員は「地方財政を理解している人の入閣はありがたい。これで交付税が増えれば言うことなし」と手放しの喜びよう。

読売新聞『舛添厚労相「批判はする」、増田総務相「地方問題に総力」』(リンク切れ)

東京問題への対処として岩手県の幹部職員が望んでいたように東京の税源を地方交付税増額に振り向けたのは、地方在住者にとっては増田氏の功績としてよいかもしれません。まあ、増田氏が総務大臣に就任した2007年というのは、前任の竹中平蔵氏によって地方税への税源移譲などが議論された後であって、増田氏が就任する2007年8月27日の2か月ほど前の6月19日に閣議決定された「骨太の方針2007」ですでに、

(5)真の地方分権の確立
・財源における地方の自立性を高めるため、国・地方の財政状況を踏まえつつ、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲を含めた税源配分の見直しの一体的な改革に向け地方債を含め検討する。
法人二税を中心に税源が偏在するなど地方公共団体間で財政力に格差があることを踏まえ、地方税の在り方や国と地方の間の税目・税源配分(地方交付税財源を含む)の見直しなど、地方間の税源の偏在を是正する方策について検討し、その格差の縮小を目指す

経済財政改革の基本方針2007(平成19年6月19日閣議決定)(pdf)」p.27

ということが決まっていたんですよね。増田氏が何かを進めたというより、既定路線に乗っかったというのが実態でしょう。1年以上前に中川雅治参議院議員が当時の竹中総務大臣に質問しています。

次に、私は最近出ている東京富裕論や東京の財源を地方に回すべきであるといった議論について反論し、竹中総務大臣、谷垣財務大臣の見解を聞きました
東京の人口は約1,250万人ですが、約370万人もの昼間流入人口があります。総務省などから提出された資料などを見ると、人口一人当たり税収というグラフがあり、東京が突出しているような印象を与えますが、コメントなしにこうしたグラフを出していくのは問題であると私は思っています。
また、東京には大都市特有の財政需要や首都としての機能を維持するための支出も多く、さらに用地取得費を取ってみても1m2当りで東京都は他の道府県の14倍も高いのです。
(略)
私は以上のような趣旨の発言をして、竹中総務大臣、谷垣財務大臣の見解を聞きました。
竹中大臣からは、「東京の事情に大変お詳しい中川委員から御意見、しっかりと承った次第でございます。」との発言があり、そのうえで、「地方の自立を考える場合に東京の位置付けが大変大きな問題であるので、今後制度設計の段階に至りました場合は、そういうことはしっかりとフェアに議論していかなければならないと思っている。」との趣旨の発言がありました。

参議院行革特別委員会で安倍官房長官らに質問(平成18年4月8日)

ということで、東京の財源が奪われたというのであれば主犯は竹中平蔵氏ということになると思うのですが、やまもといちろう氏の増田氏へのネガティブキャンペーンが止まりません。

改めて、増田岩手県政で公債費比率がどう増えたのか、見てみましょう。利権に食い物にされ、利益誘導した時期と、交際費が増え、岩手県の希望が失われていく期間と一致していませんか、どうですか。

増田寛也と「西松建設」(2016年7月11日 16時58分配信)

うーむ、いやだから増田氏の黒い噂とかコンサルに無駄金をつぎ込んだとかというのはそれとして、県債残高が増えたのは全国的な現象だったんですけどね。前々回エントリの都道府県データに国の国債残高も並べてみてみましょう。
発行主体1995年度2007年度増加率順位
476,974,200,000938,808,000,000196.8%-
岩手県759,880,5551,470,396,528193.5%10
東京都5,814,239,3316,292,585,832108.2%47
都道府県総計46,499,753,99779,590,816,558171.2%-
出所:政府総債務残高の推移(世界経済のネタ帳)地方財政統計年報

こうして増加率を比べてみると、10位にランクインした岩手県の増加率は国債残高の増加率をやや下回る結果となっています。ここで、ちょっと制度の話をしておきますと、地方債発行は以前は許可制だったのが2005年から協議制になっておりますが、毎年国の一般会計の概算要求がとりまとめられる8月に先立って、7月に地方債計画というのが総務省と財務省の協議によって策定されます(付記:この書き方はちょっと不正確でした。通常の流れは、7月に財務省から概算要求基準が示され、8月末までに各省の概算要求がとりまとめられる時期に地方債計画(案)が策定されます。その後財務省と各省が予算折衝を行い、12月末の政府予算とりまとめの直前に地方財政対策と地方債計画が策定され、これらを基に2月に地方財政計画が策定されます)。これは、国から地方自治体に補助金を交付する際の補助裏とするために地方債を発行する必要があるため、国が補助金の予算要求をするに当たって、それに見合う地方債の発行高を事前に調整することを目的に策定されるものです。

まあ平たくいえば、あらかじめ借金できる目安を決めておいて、この借金の範囲で国の補助金の交付を地方自治体が受けられるようにして、地方に金を使わせるための根拠になるのが地方債計画というわけです。で、この地方債の許可計画額と実際に発行した許可実績額を比べると、1995年度から2004年度にかけて計画よりも実績が下回るようになっています。
 地方債発行許可計画額地方債発行許可実績額差額実績率
1995年度21,065,002,00022,735,579,7001,670,577,700107.9%
2004年度17,976,200,00015,670,739,600△2,305,460,40087.2%
出所:地方財政統計年報

つまり、確かに国も地方も景気対策のため債務残高は増やしてはいたのですが、特に地方の側は国が計画した通りには地方債を発行していなかったというのが実際のところでして、前々回エントリで都道府県ごとにばらつきがあるのは、地方債計画通りに債務残高を増やしたかどうかという国への協力度合いによって異なると理解するのがよろしいかと。

という意味では、地方の側が総じて国より慎重だった地方債発行について、岩手県は国と同程度の債務残高を増やしたという点でも、増田氏が何かを進めたというより、既定路線に乗っかったという評価が妥当なのではないかと思うところです。

2016年07月02日 (土) | Edit |
日本の首都である自治体の首長がよく分からない理由で辞任して選挙が行われるそうですが、その候補者選びが混迷の度合いを深めているようです。今日時点で名前が挙がっている候補者候補の中に元カイカク派知事が2人もいるというのは、当時の議論を思い起こすと隔世の感がありますな。

増田氏「お任せします」都知事選出馬に含み 日本テレビ系(NNN) 7月1日(金)22時55分配信

 東京都知事選挙をめぐる候補者選び。自民党の東京都連は、新たに増田寛也・前岩手県知事に立候補を要請する方針を決めた。

 東京都連の幹部によると、自民党は桜井俊・前総務省事務次官の擁立断念を受けて、新たに前岩手県知事の増田寛也氏に立候補を要請する方針を決めた。都議会自民党や首相官邸サイドも了承しているという。

 これに対して増田氏は1日夕方、「どこからも打診はない」とした上で、要請があった場合の出馬の可能性について、「そこはお任せします」と含みを持たせた。
(略)
 自民党内では小池氏の容認論も出ているが、東京都連としては、まずは増田氏との交渉を優先させる方針。

ここ数年「地方創生」という聞き慣れない言葉で人口危機論をぶち上げて議論を巻き起こしたセンスには敬服しますが、まあこの方は言葉だけはまさに立て板に水というほどに流れ出てくるものの中身がないんですよね。

番組には増田寛也元総務大臣(というより、前岩手県知事として呼ばれたんでしょうけれど)が出演していて、相変わらず実務をガン無視した理想論をぶって分かったようなことをいっていましたな。この元「カイカク派知事」は、番組の最後で「構想をはっきりと示す」とか「場合によっては柔軟に対応する」とか「スピード感を持って取り組むことが大事」とか「被災者のニーズが変わっているから、それを丁寧に拾い上げることが大事」とか「国民全員で役割を引き受ける」とか、だから具体的に何をどうしたらいいんですかねえということを一切言わずに番組を締めていまして、さすがのカイカク派クオリティでした。こういう空疎な理想論がどれだけ現場を疲弊させているのか、カイカク派な方々にはご理解いただけないようです。番組の後半では、公務員不足の犠牲者となった方も取り上げられていましたが、この元「カイカク派知事」がおっしゃることは何一つ意味がないということをまざまざと実感させられました。

「ポジティブな復興の影(2013年03月17日 (日))」

というか、その出自からして地元のしがらみだらけなのに、担いでもらった小沢一郎氏の支援を袖にして県民党をぶち上げたり、中身がないというよりむしろその滔々と流れ出る言葉の裏側が全く見えないというべきでしょうか。

いやあまあ、地方重視って言うからにはある程度予想はできたんですが、よりによって総務大臣に増田氏とはねえ。「民間からの登用」なんてことになってますが、この人根っからの官僚ですよ。さらにいえば政治家の二世だし、「民間」っていうよりは「古き良き」時代の遺物といった方がいいかも。
(略)
記事の信憑性はともかく、出自からすれば過去のしがらみがあったからこそ、それを逆手にとって改革を進めた面は否定できないんではないかと思う次第。三重県の北川前知事も似たような境遇だし(道理で二人は仲がいいんだなあ)。

「あらら(2007年08月28日 (火))」

という経歴からしてもこの方は自民党と親和性が高いわけでして、自民党政権で総務大臣を歴任されている経緯からすれば、まあ自民党が担ぎ出したくなるのも理解できますね。

という増田氏の都知事選候補の報に接しての感想としては、このふたつのtweetに付け加えることはありません。


さて、知事選に出馬した当時に増田氏を担いだ小沢一郎氏はいまや野党連合の中でも泡沫政党の共同代表となっているわけでして、ちょっと古い記事ですが、その野党連合の最大派閥である民進党では「山陰のカイカク派知事の雄」片山善博氏を推す動きがあるそうです。

都知事選候補 民進都議、片山氏で一致 都連が調整へ(毎日新聞2016年6月22日 07時00分(最終更新 6月22日 08時47分))

 舛添要一知事の辞職に伴う東京都知事選(7月14日告示、同31日投開票)で、都議会民進党(旧民主系)が前鳥取県知事の片山善博・慶応大教授(64)に立候補を打診する方向で一致したことが分かった。民進党都連幹部が21日、明らかにした。

 民進都連は同日、都内で選挙対策委員会を開き、都知事選に擁立する候補者の人選について話し合った。

 都連関係者によると、都議側から「知事経験もあり地方自治が分かっている」として、元自治官僚で鳥取県知事を2期務めた片山氏を推す声が上がった。他にも数人の名前が出たが、都議側は片山氏で一致したという。今後は都連で調整が進められるとみられる。

 委員会終了後、都連会長の松原仁衆院議員は「実務的ではない知事が2代続き、都政を任期半ばで投げ出してしまった」と述べ、実務的な人物が候補者にふさわしいとの見解を示した。委員会で挙がった具体的な名前は明かさなかった。

 片山氏は岡山県生まれ。1974年に旧自治省(現・総務省)入省。99〜2007年に鳥取県知事を務め、10年9月から民主党(当時)の菅直人内閣で総務相を1年間務めた。

片山氏についても拙ブログで何度か取り上げていますが、民主党政権での総務大臣時のものとしては、

たとえば、片山氏がよく使う論法ですが、学校の修繕が必要なときに、修繕だけでは国の補助金がもらえないけど、建て替えれば補助金がもらえるから建て替えてしまうという例を挙げて、だから地方に財源があれば修繕だけで済むので予算を節減できるんだとこの日の日曜討論でも主張されていました。でもそれって、国全体の財政で見れば地方がその補助金をもらってまでして建て替えなければいいだけの話であって、そういった国全体の財政状況を顧みることなく、建て替えが必要だと言い募っては補助金をもらおうという地方の側に、必要かつ最小限のコストを見極めるという意味でのコスト意識があるのかは大変疑わしいですね。もちろん、「必要かつ最小限のコストを見極める」ためには「民意」とかいう漠然としたものでは役に立ちませんし。

ついでに、片山新総務大臣は、鳥取県知事時代に人事委員会勧告を深掘りして給与カットを実施したことを誇らしげに語っていましたが、労働権を制約されている公務員の人権代替措置を軽々と無視してしまうような方に、どれだけ労働者の立場に立った政策を考えるおつもりがあるのかは大変興味深いところです。

「原理主義的地域主権(2010年09月20日 (月))」

という次第で、原理原則を唱えれば全て解決という原理主義的な方ですので、こちらもまた野党連合には親和性の高いお方ですね。

ちなみに、東京都知事選に出馬する元カイカク派知事には偉大な先達がいらっしゃいまして、

一応4候補の公約について入手できる範囲で確認してみましたが、マニフェストの要件(と思われるもの)を満たしているのは浅野氏のみという結果。マニフェストによる差別化こそが浅野氏の戦略ではありますが、少なくとも世間でいわれるほどに「マニフェスト選挙」といえる状況にはなさそうです。

「地方の選挙(2007年03月18日 (日))」

ということでしたが、選挙を終わってみると、

浅野史郎という方は厚生省で障害者福祉に携わっているうちに脳内が左派思想に染まってしまったらしく、弱者が救われればその他がどうなっても知ったこっちゃないということを正義のオブラートで包んで発言してしまう。この場合の弱者は地方で、弱者以外の強者は東京とかの大都市なんだけど、
「宮城県の住民が払った税金は宮城県のために使うというのが民主主義の基本であり、地方分権は民主主義の先進国家になるための絶対条件だ」
って本気ですか? 民主主義の基本とまでおっしゃるなら東京都の住民がそれを主張してもいいんですな。大都市の財源を地方に配分する仕組みである地方交付税の根幹を否定されるとはなかなか大胆なご提案です。

「地方分権劇場(2008年04月20日 (日))」

ということで、地元の財源は地元で使うべきという小学生のような論理で民主主義を語る方だったわけで、我々地方在住者にとっては東京都知事にならなくてよかったというべきか、東京都民はスバラシイ知事候補を逃してしまいましたね!!!!(棒)

まあそれはともかく、地方分権の論議が盛り上がっていた当時は財源が東京に集中する東京問題こそが地方財源論の焦点だったわけでして、東京からの財源配分を声高に主張していた元カイカク派知事の皆さんがこぞって東京都知事を目指すというのは、東京問題を是正するためにその本丸に乗り込むぞ!ということならその意気やよしとしないでもありませんが、上記の浅野氏のような発言を見ていると、その真意がどこにあるのかはよくわかりません。まあ東京都民の方にとってはそんなことどうでもいいでしょうから選挙の論点になるとも思えませんが、地方在住者にとしては元カイカク派知事同士の選挙戦というのも、怖いもの見たさで興味のあるところです。

(付記)
ついでに、出馬が取りざたされた桜井前総務省事務次官は、ご本人も

総務省・桜井 俊事務次官、都知事選出馬は「ない」と断言 - FNN(06/15 18:11)

「ポスト舛添都知事」の有力候補と注目が集まっている、アイドルグループ・嵐の櫻井 翔さん(34)の父親、総務省の桜井 俊事務次官(62)が15日午後、会見を行った。
総務省の桜井事務次官は、「(都知事選に出馬されるお気持ちは?)どこからも、そういう具体的なお話があるわけではありません。仮にあったとしても、大変光栄ではありますけれども、出るつもりは、ありません。(はっきり『ない』と断言?)はい」、「(櫻井 翔さんから連絡は?)全くありません」、「(出馬しない理由は?)自分のことは、自分が一番よくわかっておりまして。わたしは、情報通信行政をやってきただけの人間ですので、とても、そのような役を果たせるだけの器ではないというふうに思っております」と語った。

とおっしゃるように、総務省とはいえ省庁再編前の旧郵政省で情報通信行政を担当されていた方であって、地方自治を所管する旧自治省の出身ではありませんので、桜井氏を都知事候補にしようという思惑はご子息の知名度と退官したタイミングが合っていたという程度のことではないかと。むしろ、旧自治省出身でちょうど事務次官を退任したばかりの方といえば岡本全勝氏がいらっしゃいますので、同じく事務次官(復興庁ですが)経験者でしかも地方自治に精通している岡本氏に出馬要請の話が出てこない(水面下であるのかもしれませんが、報道されないということは話があっても知名度が足りないという評価ではないかと)という辺りに、政治的な思惑が優先される現状が見て取れますね。

2015年05月30日 (土) | Edit |
先々週の日曜日はNHKが総選挙並みの特番を組んだりして大いに盛り上がった都構想の住民投票ですが、この結果を見てまあ住民投票とか、大きくいえば民主主義というものの一つの側面が如実に示されているなと思いました。

 現段階で我々が明確に言い切れる統計的な事実は、「今回の住民投票は賛成・反対・棄権のそれぞれが33%ずつ獲得し、小数点1桁の僅差で反対票がわずかに上回った」という点しかない。そして、この選挙結果から見えてくるのは、「賛成と反対と棄権の3つに分断され傷ついた大阪」の姿だ。ここまで傷つき分断された街を再び一つにまとめるには、長い時間と膨大な努力が必要とされるだろう。

曖昧な根拠で住民投票の結果を「分析」する愚<文/菅野完(Twitter ID:@noiehoie)>(HARBOR BUSINESS Online 2015年05月19日)

念のため、私自身はのいほい氏の主張にはほとんど賛同できないのですが、リンク先のグラフが分かりやすいので引用しました。そのグラフと表に具体的な数字が記載してありまして、「賛成」が33.02%、「反対」が33.53%で、投票しなかった「棄権」が33.17%となっていて、まあものの見事に3分の1ずつに分かれてます。ということは、各派の宣伝や報道などで見聞きしてメリット・デメリットにそれぞれ賛同した側も、それでもなおかつ賛否を決められなかった側(その少なくない部分は理解できなかった方も含まれるでしょう)もそれぞれほぼ同数だったということは、この住民投票は結局「都構想」なる言葉のイメージ投票でしかなかったというのが実態ではないかと思います。

というと、その「都構想」なる言葉にプラスのイメージを持つ方からすれば

 もちろん都構想をやったからといって、劇的な効果が期待できたという保障はありません。でも、既得権やしがらみをとっぱらえば、おもしろいことが起きる可能性もあったはずです。
 橋下さんがイラついてたのもわかります。こっちがなにかアイデアを出しても、否定ばかりして対案を考えない人が多いんですよ。じゃあどうすんの、もっといい案あるのと聞くと黙ってしまう。
 どっちに転ぶかわからないときは、「やってみなはれ」というのが大阪の気風だと聞いてましたけど、あれはやはり松下やサントリーだけのおとぎ話、特殊な例にすぎなかったってことでしょうか。
 結局、大阪の人たちは既得権と心中する道を選んだのだなあ……などというと、外野がやかましい、と怒鳴られるかもしれません。わかりました、黙りましょう。今後は、自分たちでも改革はできると豪語した反対派のみなさんのお手並みを、外野からとくと拝見いたします。

外野から見た大阪都構想(反社会学講座ブログ パオロ・マッツァリーノ公式ブログ 2015/05/18 20:25)

となるのも自然な流れでしょう。まっつぁんご自身はいつもデータをしっかり見ながら判断すべきというようなご主張をされているはずなのですが、そのまっつぁんですら維新の会がしかけたイメージ投票にコロッと引っかかってしまうわけです。そりゃまあ、普段はご自身の仕事や家庭のことで手一杯の住民の方々に、空いた時間でテレビのキャンペーンとかタウンミーティングとかでいくらすり込んだところで、その理解は限定的にならざるを得ないでしょう。もちろん、正しい政策(ナイトの不確実性の下でそんなものがあるかはまた別の問題として)であって、それを十分に理解できる住民が大多数という前提を置けば、住民投票なるものにも一定の意義はあるかもしれませんが、世界中どこを見渡してもそんな地域はおろか、国などないのではないかと思うところです。

逆にいえば、住民投票がフェアであればあるほど、賛否を問う住民投票はきれいに三等分されることになるわけでして、大阪では在阪メディアの偏向ぶりがネットを中心に盛り上がっているようですが、普段は「情弱だから雰囲気に流されてカイカクと叫ぶ橋下氏を支持している」と罵られていた高齢者のほうが、今回の住民投票では都構想なるイメージ投票に反対した割合が高かったそうですから、メディアの偏向ぶりはむしろ住民の方々の判断を惑わせて、結果的にフェアな住民投票に落ち着いたというなかなか入り組んだ状況があるのかもしれませんね。

とはいっても、高齢者の方々にこうした傾向があることもまた一面の事実でしょう。

福祉国家が産み出し、福祉国家のお蔭で移転所得を得られている人々が、それを市場による交換で得たものと思いなすことによって、その存立根拠を掘り崩していくという悲劇的でもあり喜劇的でもある逆説。

テレビ漬け高齢者のポピュリズム政治(2012年3月 4日 (日)  hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳))

とはいうものの、この点に関して高齢者をdisることができる方は多くないのではないでしょうか。「小さな政府」という物言いに象徴的ですが、「政府のお世話になんかなってない」という強固な思い込みがあればこそ、「政府を小さくしても自分の生活には影響がないし、むしろ政府支出にたかっている政治家とか官僚とか土建屋とか生活保護受給者とか粛正することができて気分がいいから政府にかけるお金は少なければ少ないほどいいし、その財源となる税金はいくらでも下げるべき」という論理がそれなりの説得力を持って受け入れられてしまうのではないかと思います。

たとえばアメリカではそういう風潮が強いため、クルーグマンなどはアメリカ国内の政策を批判する際はソーシャルな政策を主張する一方で、海外のソーシャルな政策を批判して自らの政治的姿勢への批判をかわそうとしたりするわけでして、「商人の町」と呼ばれる大阪でも同じようにソーシャルな政策を封印しなければ「既得権益」などと危険視される状況があるために、彼の地の選良の方々はヨーロッパ的な意味でのリベラル、日本的に言えばリベサヨの極北としてのネオリベな主張をせざるを得ないのかもしれません。というより、本心からそう思っているのでしょうけれども。

まあ、結局のところはカイカク派を標榜する方の習わしとして、他の分野のカイカクの手詰まり感を回避するため「「地方分権」のリスクヘッジ」としての行政機構改革に手を出したものの、そのカイカク案が公共サービスのカットを正当化するものでしかなかったのが、これまでのカイカクの経緯と相まって住民の方々にも直感的に伝わってしまったというのが、僅差での反対多数に繋がったというところでしょうか。もちろん、「使い勝手がよくなれば少ない財源でも効率的な公共サービスが供給される」という素朴な信念がこれまでのカイカク派を支えていたわけですから、またぞろ新しい行政機構改革を掲げたカイカク派が待望されていることには変わりなさそうですが。

2014年08月08日 (金) | Edit |
前回エントリの関連となりますが、旧聞に属するどころか事態が急展開しているようです。

被災地でコールセンター 本社の業務事実上休止 8月4日 18時06分 NHKニュース

東日本大震災の被災地などで国の助成を受けてコールセンターを運営し、従業員の給与の未払いや雇い止めが問題になっている「DIOジャパン」について、厚生労働省は、4日までに本社の社員全員が解雇され、事実上業務を休止したと説明を受けたということです。
東京に本社がある「DIOジャパン」は、国の緊急雇用創出事業の委託を受けて東日本大震災の被災地など全国でコールセンターを運営していますが、先週本社と連絡が取れなくなっていました。
厚生労働省によりますと、4日までにDIOジャパンの本門のり子社長と電話で連絡が取れ、本社の社員全員を解雇し、事実上業務を休止したと説明を受けたということです。
DIOジャパンは7000万円余りに上る従業員の給与の未払いや雇い止めが問題になっています。
また、昨年度までにおよそ36億円の助成金が支払われており、厚生労働省は助成金の使い方が適切だったか調査を進めています。
社長からは被災地などで運営しているコールセンターの取り扱いや今後の対応についての説明はなかったということで、厚生労働省は引き続き詳細を確認していく方針です。


誘致した企業どころか本社まで全員解雇とは。。。予想のはるか上を行くずさんな経営ですな。前回エントリで指摘したことについては、厚労省が中間報告を発表していますので、制度上の問題点については改めてこちらから引用します。

緊急雇用創出事業に係る(株)DIO ジャパン関連子会社への調査~中間報告~(平成26年7月15日)(注:pdfファイルです)
<対応の方向性等>
 これらの状況は、緊急雇用創出事業により創出される雇用が、次の就職に繋げるための人材育成を行う有期雇用であることにかんがみれば、事業期間終了後に雇用が必ずしも継続されないこと自体は、制度上、委託契約としての問題とはならない。
 しかしながら、厚生労働省としては、緊急雇用創出事業の趣旨にかんがみ、事業終了後においても、安定した雇用に繋がるよう、事業実施要領に基づき、都道府県を通じ、市町村及び受託事業者へ指導しているところである。このため、事業終了後とは言え、決して望ましい事態ではない。
 厚生労働省としては、今後、都道府県をはじめ関係自治体に対し、事業の受託者の選択において、安定した雇用に繋がるか否かの判断をより重視する等について、指導してまいりたい。
 なお、このような緊急雇用創出事業における取扱とは別に、関係子会社の立地している自治体の一部には、関連子会社の設立時に、企業立地協定を締結している場合等がある。その中には、「企業立地を支援する代わりに、最低 5 年は雇用を継続する」、「事業終了後も引き続き継続雇用する」などの具体的な約束をしている場合がある。
 こうした場合には、緊急雇用創出事業とは別に、当該関係子会社と自治体との間で、協定等の遵守に関する問題が生じることが考えられる。

なかなか持って回った言い方ですが、あくまで有期雇用を創出する委託事業としては問題がないものの、企業誘致の際の約束である「企業立地協定」において継続雇用を謳っておきながら、賃金未払やら雇止めやらでそれを反故にしてしまう程度のDIOジャパンを委託先とした自治体に対して、厚労省からきちんと見極めるよう指導しますよということです。要すれば、始めから緊急雇用創出事業がなければ地方に立地することもできないような企業を誘致して、「緊急雇用で企業誘致」という筋の悪い事業を実施してしまった被災地の自治体がしっかりしろという指摘です。

被災地の自治体の側には、震災で事業所が閉鎖したりして背に腹を代えられない状況があったという事情はあるにせよ、「緊急雇用で企業誘致」なんてことしたらこうなる可能性が高いことは十分に予想できたはずでして、厚労省の指摘はその通りだろうと思います。その背景には、前回エントリの繰り返しになりますが、緊急雇用創出事業という事業そのものが、「失対事業の夢魔」を回避するために有期の委託事業という大枠をはめ、その期間内で有期雇用を創出するという苦肉の策であって、当初はその目的に合致するような短期的な業務を委託することとされていたのに、自治体の側の要望によって、当初の目的ではない「地域の雇用確保のツール」と位置づけられるようになっていた経緯があるわけです。

ということで、DIOジャパンの撤退については緊急雇用創出事業として制度上の問題がないにも関わらず、岩手県山田町の緊急雇用創出事業の不正事件との合わせ技で会計検査院の餌食となるようですね。

会計検査院が検査開始 山田NPO問題、年内に「報告」(岩手日報(2014/07/30))

 会計検査院は29日、県や山田町などに対し、予算が適切に執行されたかを調べる実地検査を開始した。NPO法人「大雪(だいせつ)りばぁねっと。」の予算使い切りが問題となった同町委託の緊急雇用創出事業などが対象とみられる。検査報告は年内に公表される見通しだ。

 同検査院の関係者数人は同日、盛岡市の県庁や山田町役場などを訪れた。県内に数日程度滞在し、補助金交付に関する書類確認や担当者の聞き取りなどが行われるもようだ。

 会計検査院の実地検査は毎年行われるが、東日本大震災後の本県に対しては復興業務を妨げないよう見送られてきた経緯があり、本県での実施は2010年以来4年ぶり。今回の検査対象として、県内で子会社撤退が相次ぐDIOジャパン(東京)の緊急雇用創出事業なども検討されるとみられる。

 検査報告は内閣に秋以降送付され、内容が公表される。自治体などを対象に説明会も開かれる。

まあ、会計検査院(とオンブズマンの方々)の行動原理としては、「そもそも論からすれば、不正受給とか虚偽申請ってのはそういうことをした側がその責を問われるはずです。しかし、会計検査院とかオンブズマンの方々はそれを見逃したとか適切に処理しなかったとして役所の責任を追及され」るわけですから、会計検査院(とオンブズマン)が、「問題」があったとされる事業について調査するのは、それこそ制度上問題はないでしょう。ただ、その矛先が緊急雇用創出事業を所管している厚労省とか自治体の雇用対策担当に限られるのであれば、いかにも制度の問題点を理解していない表層的な調査にしかならないわけでして、経産省が所管する企業誘致の問題についても精査されることが望まれます。

ただし、これまでの報道ではあまり触れられていなかったのですが、一部の事業では緊急雇用創出事業としての問題もあったようです。

DIO研修中5000万収入…県調査(読売新聞 2014年08月05日)

 DIOジャパン(本社・東京)がにかほ市と羽後町に開設したコールセンターの従業員研修期間中、約5000万円の収入を得ていたことが4日、県の調査で分かった。研修期間中の従業員の給与は、国の緊急雇用創出等臨時対策基金で賄われており、収益が出た場合、地元自治体に返還する義務がある。県は近く厚生労働省に報告し、返還を求めることが可能な収益に当たるか否か判断を仰ぐ。

 県がDIO社などに確認したところ、にかほ市と羽後町のコールセンター3か所で、研修期間中の2013年4月~今年3月、宿泊予約の受け付けや精米の販売営業などを行い、計約4981万円を得ていた。

 県の調査に対し、DIO社側は「業務の実践練習として、(本社が)受注した業務をさせていた」などと回答、コールセンターが上げた収益ではなく、返還の必要はないとの見解を示したという。

 また、研修期間中に事業収入があった場合、事業者は地元自治体に報告書を提出する義務があるが、にかほ市と羽後町には、同社から報告はないという。

 このほか、にかほセンターが昨年12月~今年12月の契約で借りたノートパソコン80台について、研修期間外の今年4月以降の使用料も基金で支払ったことなどが判明。県は「基金返還の可能性が高い案件」として、併せて同省に報告する。

 県によると、7月31日に業務停止が明らかになったDIO社とは、4日も連絡が取れない状態。今月1日の予定だった給与も支払われず、4月分以降の遅滞総額は延べ290人分、約4213万円に上っている。

 一方、佐竹知事は4日の記者会見でこの問題について「良かれと思って(誘致を)頑張ったが、結果的に従業員と地域の方々に心配をかけた。深く反省し、おわびしたい」と陳謝した。

 DIO社については「無責任で憤りを感じる。会社整理などの手続きを取ってもらえれば次の手が打てるが、放置されると困る」と述べた。未払い給与や研修期間中の収入については、他県と連携して対処していく考えを示した。

佐竹知事の「良かれと思って(誘致を)頑張ったが、結果的に従業員と地域の方々に心配をかけた」と言う言葉がはしなくも安直な企業誘致の考え方を示していて興味深いところですが、それはともかく、DIOジャパンはそもそも自社の事業と委託事業の違いを認識していなかったように見受けます。というか、これまで拙ブログで何度も報道の誤りを指摘しておりますが、これだけ長い期間報道している報道各社ですら全く制度が理解されていないわけでして、あくまで企業誘致された側のDIOジャパンにしても、制度なんて役所が勝手に用意したものであって、自らが受託者としてそれを理解する必要性などみじんも感じてはいなかったのでしょう。これは岩手県山田町で問題を起こしたNPOも同じでしょうけど、「震災で被災した地域の助けになってやっているのに、細かい制度のことでとやかく言われる筋合いはない」という当事者意識の欠如があるように思います。

念のため記事の解説をしておくと、委託事業というのは本来自治体が実施するべき事業について、その実施を他の事業体に委任するものでして、民法でいう委任(特に事実行為の委任である準委任)に該当します。したがって、緊急雇用創出事業であっても、あくまで自治体が実施すべき事業を他の事業体が代わりに実施するものとなりますので、事業体が自ら行う事業とは経理上も実態上も明確に区別されます。ということで、委託事業で雇用した従業員を委託事業の仕様書に定められた以外の業務に従事させることは認められませんし、事業体が自ら行う事業で発生した経費に自治体からの委託費を充当することも認められません。

では、委託事業の仕様書に定められた事業で、その成果物を販売するなどして収益が発生した場合はどうなるかというと、その収益は事業体に帰属することになるので、自治体からの委託費をその分だけ減額する必要があります。そうしないと、自治体からの委託費で雇用した従業員や設備などを使用して、事業体が自らの収益を上げることができてしまうからですね。委託事業の性質上、成果物の販売などで収益が発生する事業を実施することは認められますが、その収益は自治体からの委託費と相殺するわけです。まあ、受託する事業体から「緊急雇用創出事業はやたら手続きとか書類が厳しいのに、自社の持ち出し経費が認められなくて全然おいしくない」と不評を買う所以でもあるのですが、逆にいえば、そこを認めてしまえばそれなりに「おいしい」事業となります。

佐竹知事の言葉にはその辺の反省も含まれているのかもしれませんが、今となっては会計検査院(とオンブズマン)のご指摘を座して待つしかなさそうですね。

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